7話 王国産業管理団体、視察に来る。
ウェスタニア王国北部、北の森。
過酷な山々に囲まれているため、未だ手つかずな土地である。
我々ウェスタニア王国産業管理団体の幹部連中は今、そこへ向かっていた。
ことの発端は3日前の、北の森大環境破壊事件だった。
おそらく犯人は件の、『神により招かれし者』だろう。
手出し無用とは言え、視察くらいなら流石に許されるだろうということで、我々は北の森へ向かうことになった。
近づくにつれ、無機質な機械の稼働音が聴こえてくる。
音量からして、もうすぐ到着するだろう。
異常だ。
想像の10倍ほど早く着いてしまった。
機械の音量が小さすぎるのだ。
我々は、工場を見る。
またしても異常だ。
ベルトコンベアの一本も存在しない。
それに、何だあれは。
魔力の探知に秀でた者がとても怯えている。
「あれは、ヤバいです。とてつもない魔力の密度です」
あれの見た目は、言い伝えで聞いたことのある、無限の万能保管庫を一回り神々しくしたようなものだった。
なぜ、そんなものがここに?
いや、一度だけこれの話を聞いたことがある。
以前現れた『神により招かれし者』が持っていたスキルである、
『レシピライブラリー』に作成が、とてつもなく困難なアーティファクトとして載っていたはずだ。
となると今回の『神により招かれし者』は、前回の『神により招かれし者』が挫折したアーティファクトを作るまでに至っているというのか。
どうやら我々が思っていた以上に、凄まじいことになっているようだ。
せめて、この工場の主に話を聞いてみたいところだが……
「あなた達、誰?」
どうやら、神は我々に機会を与えてくださったようだ。
「我々は、ウェスタニア王国産業管理団体だ。先日の大環境破壊を受けて、様子を見に来たのだ」
「そう、勝手に触らなければ見てっていいよ」
「ありがとうございます! そういえば、なぜ豆など食べているのですか?」
「コスパと栄養バランスが良いから」
異常だ。
これほどの工場を敷設出来る人間が、食費を節約する必要がどこにある?
一旦それは置いておこう。
「この工場にはベルトコンベアが見当たりませんが、どうやって資源を運んでいるのですか?」
「Lua」
「は?」
「見る?」
そう言い見せられたのは、知らない国の文字で書かれた呪文であった。
「おいケイ、そいつら誰だ?」
「なんかウェスタニア王国産業管理団体だって。知らんけど」
「なんか名前は聞いたことあるな」
奥からもう一人、少年が出てきた。
軽く話を聞いたところ、助手のようだ。
「パウル殿、この呪文は何が書いてあるんですか?」
「ただの工場の在庫管理してるだけのLuaじゃないの?
ああ、そうか。俺もあっち側になりつつあるのか……」
何か一人でブツブツ言っているが、パウルも普通に読めるらしい。
この工場は、こんな呪文が基礎教養らしい。
異常だ。
とりあえず、少しでもこちらに益があるように持って行こう。
「ケイ殿、少々よろしいですか?」
「端的に述べて」
「この工場で生産した基礎的部品の余剰を、こちらで買い取らせて頂けませんか?」
「別に良いよ。今鉄のインゴットが131072本くらい余ってるし」
「感謝申し上げます! 納品は定期的にこちらから使者を出すので、そのときにお願いします」
「了解。とりあえずそろそろ帰って」
「わかりました。本日はありがとうございました」
こうして我々は、大きな取引先を手に入れたと同時に、大きな恐怖を感じたのだった。




