第80話 アルテミス
今は雷帝宮に戻り、ソニアをベッドに寝かせて傍に着いている。
居間には全員集合して分裂の俺も。
執務室と貴族面談に2人が分裂し、別宅にも一人居る。
ソニアの寝顔を見る。思った以上に精神が追い詰められていたのだな。
申し訳無く思う。俺が一番理解してやれる立場だったのに、全く気付きもせず。
愚の骨頂だな。悩んでも仕方無い。これから変えればいい。
ソニアに笑顔で居て欲しいからな。子供も出来た事だし。
眠るソニアの手を握り、誓う。大切にするとな。
居間では、アノ地での遣り取りを反芻していた。
「W・M・S?」
「まあ、今はここまで。メルちゃんが”真の真神”に目覚めたら、連れて行くわ。
バハムートにでも道案内させようかしら?
只ね、同行は全員は出来ないの。システムがこの世界の人間を認証しないから。
アーシャ、ガイア、ソニア、カトリーヌ、アウラ。かしらね。
それからね、”終焉の観測者”は最後の魔人がなるのだけれど、、」
「カトリーヌは半魔人だぞ?どうして」
「そうなんだけど、この娘の”光鎧”と”希望の光”と”愛の光”が有るわね?
あれはカトリーヌちゃんを完全な魔人に押し上げてしまう力が備わってて
世界を守る力と壊す力が有るの。これもW・M・Sね。
詳しい話は、又の機会ね。今日はこの辺で、じゃっあね~」
自由過ぎるだろ。ぬ~~!分らん!分らんだらけだ!
「母さんの自由っぷりには参った。まぁ、ソニアが無事なのは安心だが」
「はい。それだけでも感謝ですわ旦那様」
「でも驚きました。ソニアさんの元の血には。あれ?じゃ、世界に一人?」
「そうね。私も今は、多少制限が解除されてるけど、ソニアさんの血筋は知らない
し、そもそも試作体番号がおかしいの。謎だわ」
「ええ。試作体にして、完全体の魔人で全知全能神なんて」
「ガイア、どこまで話せる?」
「魔人が創られた存在なのは本当です。私の記憶が改ざんされて無ければ
目覚めた時は硝子の容器に入ってましたから。そこは研究所の安置室。
無数の容器が並んでいたけど、入っていたのは後二体です。今は神ですけど。
私はそこで必要な知識を学習して魔人になりました。
硝子容器に入る前の記憶も有るけど、制限が掛かってます。」
「何処に有るかは………無理か。それはどれ位昔の事だ?」
「場所も時間も制限が掛かってます。恐らく6万年は前かと思うわ」
「「「「「「「「「「「「「6万年!」」」」」」」」」」」」」
「はい。多分、ラーンとバハムートが邪神と戦ったのは10万年以上だと思うの。
だからそれよりも昔にW・M・Sが作られたのは間違い無いと思うわ。
シリア様がメルを妊娠したのも多分それよりも前。」
「何故、そう思う」
「私が大地母神だった頃、既にシリア様は身ごもっていたの。でも、私達は誰も
天照様の存在は感じても、見た事は無いの。ラーンですら。
なら、それよりも更に昔に妊娠してないとおかしいわ。
あと。試作体番号がおかしいのは何故かしら………アルテミスに聞いてみようかな」
「偶にはお喋りしようかしら?」
「「アルテミス!!」」
「ゆっくりするのは久しぶりね、メル。いい男になって。抱いてもいいのよ?
ううん、むしろしなさい?ガイアは投げてて構わないから。
あ、皆さん御免なさいね?
シリア様の僕で、【森林聖神アルテミス】よ。植物を司どっているわ。
で、ガイアはお話が有るのでしょう?」
「「「「「「「「「「「「「「宜しくお願いします」」」」」」」」」」」」」」
「むぐ。貴女、嫌な女ね、まったく。メルは渡しません!」
「あら、そ~お?誰を抱くかはメルの自由じゃない。ね?メル?
私の身体も極上に気持ちいいわよ?」
「こら!誘惑するな!油断も隙も無いわね!ね~メルぅ~私がいいわよね~?」
「そう言う事で優劣は無いと思うのだがな」
「ほら、メルは分ってます。今晩お願いね?メル。」
「考えて、いや、話はどうなった?」
「あっ!そうそう、アルテミスって試作6号だったわよね?何でシリア様と同じ
なのか分らないのだけど?」
「…………ガイア、貴女ね。それ、知ってて言えると思うわけ?」
「思わない。でも、もやもやするでしょ?」
「呆れるわね。ま、答えは、”知りません”よ。」
「アルテミスはそれでいいわけ?謎よ!謎。ミステリーだわ!」
「はぁ~こんなのが大地母神なんて………」
「アルテミス、俺も疑問だ。何かがおかしい」
「そうですね。でも、私達は嘘を言えません。直ぐに分るから。私が試作体6号
なのは本当です。研究所から出た魔人は、データを見ているから皆が知ってます
シリア様が嘘を言ってないのも事実です。さあ、これは一体何でしょう?」
「アルテミスは見当が付いている。そう言う事か?」
「そうかも、知れないわ。ベッドで確認してみます?口を滑らすかも。」
「ふむ。それなら試す価値が有りそうだ」
「むき~!旦那様!アルテミスに籠絡されちゃやだ!」
「やだって、貴女子供?私だってメルは好きなんだから、いいじゃない」
「だって、こんなお色気女だし、ずるいわよ!」
「確かに。アルテミスさんは、何て言いますか、肉感的?フェロモンが凄いです」
「でしょ!アーシャちゃん!お色気垂れ流し過ぎなのよ!ぷんぷん!」
「ま、今晩寝所をお願いね?メル。た~っぷり御奉仕しますわ」
「分かった。だがな、疑問なのは何故、俺が知ってはならない?」
「私も、それは疑問でした。逆なら分るのですが」
「ん~?説明が難しいわ。そうね、実例で悪いけど………カトリーヌちゃん」
「ふ、ふぁい!」
「を、例にすると、彼女は一度死にました。これは事実ね。
彼女が死んだら、勿論の事、周囲の人達は悲しいわよね?死後、暫くは喪失感
に悲しむ。これは世の殆どの人がそうなるわ。
ここで問題なのは、彼女や世の人々の生活や生き死にが世界に係わるか?
と言う事。彼女が一度死んだ時は、普通の農村の娘さん。この”死”が世界の
変質には係わらない事なの。でも今は違うわよ?最後の魔人として覚醒したし
W・M・Sに依って”終焉の観測者”になってしまったから。
それを踏まえて、メルがこれら一連の秘密を先に知るとどうなるか?
答えは、世界が変質する。よ。これは、今ここに居る皆さんの内、世界を直接
変質させうる人はメルは勿論。中心ですからね。後はアーシャちゃんとガイア
カトリーヌちゃんの三人。間接的に変えるのがソニアちゃんとアウラちゃん
周囲に居て、係わってしまうのが、この場の全員。」
「そ、それって、非常に怖い事。ですわよね?だ、大丈夫なのですか?」
「わたし、そんな凄いのじゃないですよぉ?」
「あ、あの、私が、精霊に生るのと関係が」
「俺が中心だと?何のだ?」
「はいはい、そんなに種明かしは出来ませんよ?
今は、先に知ってはいけない理由と、シリア様と私の6号の考察だけ。
アーシャちゃんが言うように怖い事なの。だからシリア様が情報を小出しに
しながら、調整しているの。天照様が確定した世界から、脱線しない様に」
「アルテミスさん。私の様に国政に携わるのは不味いのかしら」
「いいえ、エリダちゃんが何かを大きく変えても、それは国に留まっているし
数年~数十年の間の事だから心配無いわ。それよりは、メル以上に危険
なのがカトリーヌちゃんなの。」
「ひゃい!あ、わたし、ですか!?」
「そう。貴女の知恵は世界の在り方を、瞬間に爆発的に変えてしまうの。だから
注意が必要。でも、シリア様がちゃんと気を付けてるから、怖がらなくていい」
「あの、アルテミスさん?私までが世界を変えてしまうと言うのは?」
「それは当然です。アーシャちゃんの中にはシリア様のカケラが有るのだから。
でも、貴女は愚かな女ではないし、うっかりも無い。心配はしていませんわ」
「それでアルテミス?6号の話はここでしないの?」
「う~ん、別にいいけど、メルと熱い夜を過ごすのは変更無しよ?」
「ちっ、気付いてたわ!なんてずる賢い女かしら!」
「まあ、俺は構わんのだが、話せるのか?」
「ええ。私の推測でしか無いから。ただね、少し理解に苦しむかも知れないし
色々と悩む人が出るかも知れないわよ?大した話では無いけれど。」
「皆はどうするのだ?」
「「「「「「「「「「「「「「聞きます!」」」」」」」」」」」」」」
「そう…………私とシリア様。どちらも本当。なら、答えは一つだけ。
最低でも、一度。世界は終わったと言う事。」
「「「「「「「「「「「「「「えええ~!!!」」」」」」」」」」」」」」
「ち、ちょっと、アルテミス!何でそうな…………そう。そうよね、再構築された
別の世界。そう言う事ね。」
「気が付いた?恐らくは、天照様とシリア様の世界は何らかの事情で終わった。
又は、天照様が終わらせた。その後に分岐点から再構築した世界がここ。
それなら番号が被ってる理由にもなるわよ?
まあ、だからどうしたって訳でも無いから、大した話じゃないわ。」
「え?大したお話だと思うのですが」
「でもねジェシカちゃん。事実だとしても、私達にはどうにも出来ないし存在する
上でも問題無いのよ。理由がそうだった。だけのお話よ。」
「でも、アルテミス。一つ破綻する理由が有る。」
「そうね。理解してるわ。」
「なら、どういう事?」
「天照様のお力が途方も無い。って事。理由が違った場合は、最早私達には
見当も付かないから、やっぱり途方も無いお力。じゃないかしら。」
「…………何よそれ。結局分りませんって事じゃない。」
「それはそうよ。でもね、強ちハズレてはいない。そう思ってるわ。」
「自信有るんだ。そうなら、世界は数回消えた可能性が有って、尚且つ、
秘匿されてるって事よね?」
「そうだと私は思ってるわ。」
「お前達な、話が見えんぞ?」
「あ、えっとね?旦那様。私達、僕はシリア様に神の全能を貰うのだけど
その一つに、時間を見る事が出来る、あ。正確には時間じゃ無いけど。それで
色んな場所を切り取って見れるの。でも、私達の知る限り、終わった世界?
時間?は無いの。だからアルテミスの推測は破綻するけど、もし、それを
お二人が何等かの方法で秘匿していたら、って事なのです。」
「方法は置いても、秘匿されてるなら、辻褄が合うのか。何故隠す?」
「それは…………分りませんけど……」
「たぶん、いえ。今は辞めておくわ。」
「アルテミス?」
「規制はされて無いの。でも、口にしない方がいいと思うの。今は。」
居間ではアルテミスも合流して、議論しているが。
ソニアが、気掛かりだった。目覚めた時に居てやりたかったのだ。
執務室の俺と面談の俺は仕事をこなしているから問題無い。
支援区の運営と入居者の実態調査は毎日報告が来るし
拘置所の取り調べとアゼンツァ親子と盗賊ギルド関連も一日置きに
報告書があがって来る。
来週の中からは、アルテン・王都・雷帝宮とイベントが有るから
ソニアが余計に心配だ。
フローネは安定してるし問題無い。
む?レスティナも休暇を取らせて代理が必要なのか。
あ、新街道も残ってるし、色々と手を加えたいんだよな。
こっちの北部開発も少しづつやっておきたいのに。
再編会議を開いて、大筋も付けなきゃならない。
遣る事は山盛りだが、妻達の一人一人とも時間を取らなくては。
ソニアの件で懲りたぞ。もっと上手く霊分で分裂を回さないとな?
ん?起きるのか?
「だん、なさま………ずっと?」
「ああ。傍に居たかったからな。具合はどうだ?」
「だるい、です。お情けが……ほしいです」
「いや、駄目だろ?具合も悪いし妊娠もしてる」
「ん。体内に、あると、体調がいい、です。おねがい。です」
「本当だな?ステータスを見ながらだぞ?」
「は、い。」
「大丈夫か?数値は確かに上がってる。治癒は必要だが」
「そうなんです。調子が良くなるので、欲しいです……馬鹿な嫁で済みません。
病が治れば、今迄以上に御奉仕します。捨てないで下さい。お願いします………」
「いや、子供も産んで貰うし、ずっと一緒だ。悪いのは俺だ。手放すものか」
「…………え、ほんとう?…………わたしで」
「ああ。逃がさんからな」
「…………いい、の?」
「決まってる。嫁1号だろ?また、旅に行きたいな。ソニア」
「はい。連れて行って、下さいませ」
「ああ。子供と、3人もいいな」
で、夜になったのだが、最近は毎日全員分に分裂しているから
自室は使ってない。なのに自分のベッドに居るのは、同衾相手が居るからだ。
まあ、アルテミスなんだがな。
あの後、うだうだ言いながら、結局夜まで居たのだ。夕食も風呂も一緒で。
コイツ、ここに居ていいのか?
「いいでしょ?駄目だった?気持ち良かった?ねぇ。聞いてる?捧げたのよ?」
「良かったぞ?極上だ。初めてとは思わなかったが」
「そんなお尻軽くない。迷惑だった?」
「いや、嬉しく思う。お前が良かったのか?」
「いいから抱かれたんじゃない。嫌なら来ないわ。ねぇ、ほんとヤじゃ無い?」
「どうしたんだ?」
「だって。こわいじゃない?嫌われたら。私だって女なんだし。」
「済まんな。では、もう一度するか?」
「………うん。優しくね?」




