第72話 ニルヴァーナ領での日々6
分裂中の俺は、雷帝宮の地下に向かい、牢獄の手前。拷問室に入る。
椅子に縛られ、散々痛めつけられた5人が居た。
「口が固そうだな?盗賊か?ギルドに聞いたら早いかもな。
ふむ。指を先から飛ばして、炙って止血。繰り返せ。指が無くなれば手首、腕
少しづつ切り落とせ。で、炙れ。腕が無くなれば焼いた櫛を目玉に刺せ。
最後腹を、いや、その前にやる事が有る。」
「ヴ~!ヴヴ~!!」
途端に1人が喧しい。尋問官が同意を得るので頷く。
「ぷはっ!言う!全部言う!落とすな!!」
「ほう?俺としては生かしたまま内臓を引き摺り出す予定だったが残念だ。で?
早く言え!時間が無駄だ!お前の脳から直接聞いても良かったんだぞ!」
「盗賊ギルドへの依頼だ!あんたの女の聖女かアウラってのを浚えってな!
依頼主は聞いてねぇ!伏せられてた!依頼を受けるかどうかだけだ!!」
「俺と敵対すると分って受けたか?ならば死ね。他は?知ってる事を吐いたら
楽に殺してやる。だんまりなら地獄を見せる。まあ、盗賊ギルドも皆殺しだが」
「おい!喋ったろう!」
「五月蠅いヤツだ」
ヒュン! ゴトン。 ブシュシュ~
「汚いヤツだ。おい?他は?脳から直接出すか?」
「…………」
「ま、ならいい。こいつ等は徹底的に痛めつけろ!だが殺すな。餌だ」
その内の1人に霊波を延ばし、魂の記憶を読む。
ふむ…………アゼンツァ侯爵か
「カスタロッサ、アゼンツァ侯爵は知っているな?」
「はい。それは、え?まさか!」
「そのまさかだ。どんなヤツだ?」
「まぁ、強欲を絵に描いたような人物です」
「詳しいのか?」
「一般的な情報なら。現当主はロッサ―ノ・フォン・アゼンツァ侯爵で
正妻と若い側室が6~7人居たかと。長男は正妻の子でサブリーノ。父親と同じ
人種で下衆です。次男は気弱で軟弱。下の長女は成人程度の年齢です。
側室の子は覚えてませんが幼いのが2~3人だった筈です」
「どうするかな。問答無用で首を飛ばすのは簡単だが…………呼びつけて、妻を餌に
ボロを出させるか、盗賊ギルドを潰して、証拠を突きつけるか」
「城主様、ここはギルドから攻めますか?敵対承知で受けた訳ですから
我等としても奥様を狙う不届き者を放置できませぬ」
「そうだな。手順通り、盗賊ギルドから行くか。こいつ等を連れて行く。
皆、準備を頼む。今から乗り込むぞ」
「「「「「「「「「「「「「「「押忍!!」」」」」」」」」」」」」」
バハムート通りを馬車で南下中。下手人は馬車で引き摺っている。
俺とカスタロッサが乗り、他の騎士団員が100人程騎乗している。
商業区の外れを左に曲がり、暫く行くとまた左、で右の建物だ。
団員達が囲み、廻りの店や歩行者も何事かと立ち止まり、人だかりが出来る。
「盗賊ギルドのギルマスは出て来い!総領主のニルヴァーナだ!」
何だ何だと、出入りする盗賊職や職員が居るが、出て来ない。
では、乗り込むとしよう。
カスタロッサが先頭に次々と家の騎士団が入って行き、俺もゆっくり入る。
「おい!貴様等!城主様のお言葉だ!ギルマスを連れて来い!さもなくば
実力行使に出る!早くしろ!」
「今、この建物は俺の時空術で閉じた。一人も逃がさん。俺の妻を拉致する
依頼をアゼンツァ侯爵から受けた時点で敵対確定だ。関与した奴は皆殺しだ」
「あ、あの!私達、そんな依頼聞いてませんし、見てもいません!」
「そ、そうです!そんなのする訳がありません!」
「奴等を引き摺って来い」
2分後、団員が下手人4人と死体を一つ引き摺って、床に投げた。
「「「「ヴヴゴゴ!!」」」」
「こいつらが襲撃犯でな。ゲロしたぞ。どうする?家探しして書類とギルマス
を連れて来るか?何、俺は皆殺しにしてギルドを潰すだけだ。簡単な事。
さあ、お前らはどうする?」
「城主様への返事は!無ければ全員死んで貰う!」
「おいおい、領主が偉いか知らんが、ちと乱暴じゃ」
ヒュン ゴトン!ブシュ~~
「きゃ~!!そんな!」
「はわわ、いや、いやよ!」
「まじかよ!何もころす………」
「遣り過ぎだろ!」
「ほう?では、貴様等は家族が狙われ、犯人も分っていて、握手でもするのか?
しかも、組織として受けたのだ。ならば対象は組織だろ?違うか?」
「ど、どうすりゃいんだ、一体!」
「先程おっしゃった!書類とギルマスを差し出せ!それ以外無い!早くしろ!」
「おい、面倒だな。貴様等など3秒で皆殺しだ。今何分経過した?」
「俺はゴメンだぜ。受付ちゃんよ、ギルマス何処だい?」
「わ、私達だって、部屋に居なければ知りません!」
「そうです!受付は何も知らないんですから!」
「おい!職員も出て来いよ!とばっちりは嫌だぞ!お前等の責任だろが!」
「早くギルマス出せよ!何やってんだよ!おい!この人本気だぞ!」
「「「おい!出て来い!!」」」
「ギルマス引き摺り出せや!」
「メル~!楽しそうね?宮廷魔術師も全員来たわよ?混ぜなさいよ?」
「そうだぜ~面白イベント逃してばっかだからな!」
「そそ、仲間に入れろっての!」
「そ~言う事!おい!盗賊ギルド!早くしろ!国に敵対したとみなすぞ!!」
「そうだな。全員斬首かお尋ね者か灰になるか。選べ。メルは国の重鎮だ。
敵対した以上は放置出来ん。わかってるか~?」
「お前等、ノリ軽いな?何時もの事か。おい!自分達で始末が付けれんのなら
此方がやる。その代わり全員捕えて斬首だがな」
「「「「や、やります!!」」」」
「探します!」
「す、すぐに!待って下さい~」
「お母さ~ん!やだ~」
「ねぇメル?今晩も。ね?あ、主犯は?軍に包囲させましょう?」
「今晩はいいが………そうだな、それも有りか。カスタロッサ、
ストラディに連絡してアゼンツァ侯爵邸を包囲させてくれ。人数は任せる」
「はっ!了解しました!」
~~~30分後~~~
「総領様!これがギルマスです!」
「こ、こっちが、依頼書です~」
「も、もう、いいですよね??」
40代の如何にも子悪党と言った風貌の痩せた男だった。
額に刀傷が有り、眼光も濁ってる。俺に目を合わせようとしない。
「貴様か。往生際が悪いヤツだ。アゼンツァの前で証言するなら、お前だけに
留めてやる。拒否なら一族郎党皆斬首だ。分っていて受けたのだからな」
「な!卑怯だぞ!」
「おいおい、本国あんまり舐めんなよ~?」
「こいつ何か勘違いしてね?」
「ここらできっつい釘刺した方がいいな!」
「聖女様狙うってのはよ、創世神様に歯向かうって事、わっかるぅ?~」
「ねメル。本気で釘刺した方がいいかもよ?ちょっと舐め過ぎだわ」
「そうだな。見せしめも必要か。こやつを絞り上げて、今迄悪事を依頼した
連中も、軒並み捕縛するか?盗賊ギルド自体も徹底的に査察した方が良いかも
知れんな。この地の他支部も調べるか?そんな時間無いのだがな…………」
「お!なら、俺達がやっちゃう~?魔術師ギルドと軍使ってさ」
「ま~暇つぶしにはいっか?メルがいいならよ」
「だな~どうせ半年、一年はこっちだからよ」
「姉御、どーする?」
「そうね、ま、いいでしょ。好きにやりなさい?じゃ、今から親玉のトコ?」
「そうだな。ここも軍の管理下に置いて悪事を探すか」
「そうね?そうしましょ。さっさと行きましょ?」
副団長は後で合流として、軍の手配で動いて貰う。
俺達は貴族街へと戻り、アゼンツァ邸へと向かったのだが…………
この包囲網がな。千人規模なんだよ。遣り過ぎじゃないか?いや、俺もか。
「カスタロッサ、ストラディ、ご苦労。接触は?」
「まだです。配置は完了しました」
「では、行こうか」
「「はい!」」
「ええ」
門番に声を掛け、警備隊長を呼ばせる。
「総領様、皆様方、御用はどのような」
「状況は理解しているな?当主に用が有る。開けろ」
「本国重鎮に対しての反逆嫌疑よ?素直に開けなさい」
「中央軍が1500で包囲した。無用な混乱は避けたい」
「…………分りました。私に着いて来て下さい」
勝手口が開き、俺達は警備隊長の後ろを着いて敷地を歩く。
良く手入れされた庭園の歩道を歩き、正面玄関に着く。
玄関の扉が開き、玄関ホールで待たされる。
一応、総領主と宮廷魔術師筆頭代理が居るのだがな。応接じゃないか?普通。
暫く待っていると、廊下を急いで向かって来る女性が。
「お待たせして申し訳御座いません、総領主様。当主の妻で御座います。
応接室にご案内いたしますので、此方です」
広く上品な応接室に案内されて、全員腰を下す。
メイドがお茶を配り、下がった処で奥方が切り出した。
「あの、突然の御訪問。何か火急の件で御座いましょうか」
「うむ。突然には訳が有る。
本日日中に我が妻の拉致を目論む賊を数名捕え、拷問に掛けた処
盗賊ギルドの依頼で依頼主が此処の当主だと言う。先にギルドを押え
身柄と書類は確保した。それで此方に伺った次第なのだがな。旦那は?」
「奥方?私は王国宮廷魔術師筆頭代理、イエネッタ・フォン・ルジェアンテよ。
ニルヴァーナ卿は国家重鎮の1人。その妻を狙うなど愚かにも程が有るどころか
アーシャ様は救国の聖女様。その人の拉致は国家に対する反逆罪にも等しいわ。
亡きロマーノ王もそれが原因だったわよね?庇い立ては為にならないわよ?」
「え??そんな馬鹿な事を?もう、好きにして下さいませ。呆れ果てました。
私は次男と長女が無事なら、文句など。まあ、側室達も罪は有りませんから
次男を次期として、家が無事なら、どうぞ」
「ふむ。では、奴は何処に?」
「居る筈なのですが見当たらないのです。それで慌てて私が」
「そうか。では、荒らさない程度に家探しさせて貰おう。女性陣と子供は
奥方と此処に居て貰えるかね?女性の部屋はイエネッタに見て貰う」
「分りましたわ。メイド含め、女子供は集めます」
「カスタロッサ、ストラディ。頼むぞ。」
「「了解しました!」」
「イエネッタ、来てくれ」
「ええ」
応接室を出て、カスタロッサ、ストラディを待つ。
その間に、屋敷を細かく感知で調べて回る。
ふむ。1階の奥、執務室っぽいが怪しいな。中年男性の反応。隠し部屋か?
何時迄も隠れられる訳でも有るまいがな。それと長男か。
2階の寝室の隣が………何だ?秘密の部屋か?窓もないし、ベッドか?若い男女。
恐らくこれだろうな。話は聞くか。
2人が兵士と団員を連れて戻って来て、執務室と寝室の二手に別れさせた。
まあ、これで終わりだろう。後は尋問・捕縛で、後日沙汰だな。
取り潰し程ではないが、御咎め無しは無理だ。降爵か減封。又は滅封。
俺達も執務室に向かって行くと、騒ぎ声が聞こえる。静かに出来んのか。
中に入るとふてぶてしい当主と喚いている息子、怯えている娘。
「どうした?五月蠅いガキだ!(ゴン!!)」
「当主は隠し部屋に潜んでおりました!息子は秘密部屋でメイドを犯していまして」
「屑だな。イエネッタ?頼むよ」
「ええ。さ、こっちいらっしゃい?」
「おい、貴様が妻達の拉致を盗賊ギルドに依頼したのだな?何故2人だ?」
「…………」
「黙っていても証拠はあがっているがな。まあいい、首を落とすだけだ」
「な!きさま~!許さんぞ!あの女は儂のモノだ!!」
「おい親父!聖女は俺のだぞ!」
「………2人なのはそうか。親父がアウラでガキがアーシャか。呆れるな。
ならば二つ落とす迄、慈悲は掛けん。では牢にぶち込むか。ご苦労だった」
馬鹿の相手は疲れる。一通り尋問はせねばならんしな。
盗賊ギルドは余罪の追及もだ。あれは宮廷魔術師達に任すか。楽しそうだし。
奥方達に、事情説明の為に応接室に行く。
ドアをノックし、返事を聞いて中に入る。
「どう、なったのでしょうか………」
「ああ。当主と長男の仕業だな。捕縛し、自供した。牢に入れて余罪も含めて
詳しく追及する。盗賊ギルドもだ。それからの沙汰になるが、今回この地の
貴族構成を再編せねばならなかったのでな、各家との面談や状況を加味して
決定する方向だから、アゼンツァ家もその時にだな。
それ迄は普通に過ごして構わない」
「まさか取り潰しとかは……」
「それは無い。再編と懲罰に合わせての降爵や減封は有ってもな。
俺としても、まともに家を残し、領地経営を上手くやるならその方が楽だ。
だが、捕縛した2名は斬首だ。見せしめの意味も有る。残った者には悪いがな」
「仕方が有りません。家さえ残れば頑張ります」
「ああ。罪の無い者を見捨てはせん。では、邪魔をした。後日、面談で。
何か有れば言って来なさい。対処はする」
「はい。有難う御座います」
屋敷を出て、包囲している軍は解散。残りは雷帝宮に帰り、捕縛者の尋問開始。
何とも慌ただしい夕方だったが、妻と領地の為だ。膿は排除する。
イエネッタと馬車に乗り、そのまま帰る。
もう1人の俺と妻達は夕食が済んでいるので、イエネッタとの2人分と
本日出動した連中の事も伝えて、用意させる。
イエネッタと2人でテーブルを挟んで食事を取る。
静かで、和やかな雰囲気が漂い落ち着く。
ゆっくりと食事を味わった後は、彼女の部屋でワインを飲みながらイチャついた。
まあ、後はアレだ。風呂でイチャコラしてベッドでイチャコラしてで………




