第71話 ニルヴァーナ領での日々5
貴族街を抜けて商業区に入り、バハムート広場を目指す。
通り抜けて、バハムート通りから見える街並みを堪能しながら大回りする。
ぐるっと回って広場に戻り、先日とは反対側の商店街を見て回る事にした。
当然、護衛に騎士団が30人、その周りを警備隊が30人。
群衆の中に軍が混ざって監視を行っている。ざっと、200人。
分裂の俺も2人、仮面を付けて紛れ込んで監視をしている。
感知の結果、明確に害意を持った者が数名周囲に居る。妻達の誰かを狙っているが
誰か迄は分らない。恐らくはアーシャかエリダだろう。
包囲網を作って、泳がせておくか。軍と騎士団には連絡だな。
アーシャ達が固まってキャイキャイやってるのは小物のお店か。
商品的にかデザイン的にか、目を引くものが有ったのだろう。可愛いとか?
隣は手芸の店か。何やら色々と物色している。
アーシャとターニャ、カトリーヌ、リーリアが凄い喰い付いているな?
新商品のヒントでも有ったのかも知れん。
手芸小物だが、飾りの石にアウラも興味深々だな。珍しいのか?
「皆、興味有るなら購入したら?後で吟味出来るから」
「はい、旦那様。じゃあ、あれとあの柄の生地を」
「このブローチを」
「あ、こっちの布も!あ!これも!糸とこの針束を!」
「店主、これで足りるか?」
「いえ!総領様!貰い過ぎです!」
「では取っておけ」
「ああ!こっちのお人形可愛いです!」
「あら、本当ね!うさぎさんよ」
「ええ!?このワンピちょっとえっち!」
「駄目よ!足を見せるなんて!」
「いえ、旦那様に!」
「「「「いいかも!」」」」
「こっちの下着も!際どいわ!でもいいかも!」
「これ!旦那様を悩殺出来るかも!」
「「「「私も!!!」」」」
「ね、お隣で売ってる飲み物珍しいわ!」
「あら!クリームが乗ってます!」
「氷を砕いてるのね?何だか不思議ぃ~」
凄く楽しそうで良かった。ここで正解だったな。
昼の目星は付けて有るが、彼女達の希望が有ればそこに入ろう。
群衆も結構付いて来るが、この中にも2名居るな。目的は何だ?
周囲に潜む者とは連携した、同じ手の者か、別なのか。
極秘に捉えて尋問するのが良いかもな。昼の間に動くとするかね。
妻達が選んだのは、如何にもロマーノ風なレストランだった。
先に軍が入って、貸し切りエリアを確保し、店内を見て回り異常を確認する。
俺も感知で調べるが問題無いのでここで昼食になる。
俺は昼食に残る自分を司令塔にして10人分裂して散る。通信は1分置きだ。
群衆に2名と100メートル以内に3名。監視しているな。
では、2人づつが霊波移動で飛んで拘束するぞ?…………今だ!!
「むぐ」
「ん……」
「!!」
「しまっ」
「ぐ」
よし、全員捕縛した。猿轡も噛ませ軍に引き渡し、雷帝宮の拷問室行きだ。
更に確認で感知に集中する…………暗き波動が沢山いるいる。くく、だが、明確に
俺や妻達には向けられてはいない。ん?居た。1人だが……貴族街?
この屋敷は侯爵家か。俺では無く、妻の誰かを狙ったモノだな?
さて、どうするかな。ま、呼びつけるのが早いか。
他の黒き波動も細目に監視して、捉える隙を伺うか。今は飯だな。
一たびは”合一”で戻って、一緒に食事を楽しむ。
ガイアとカトリーヌは俺を見ていたから、気付いているのだろう。流石だ。
軍に紛れている俺達は、そのまま監視を続ける。
俺は海老蟹大王と言う謎料理とエール。妻達はパスタやピラフ等の可愛い
料理を注文している。
一番に注文の品が来たのは俺の海老蟹大王だった。
身を出してして、チリソース煮と言う単純だが、山盛りでピリ辛で最高だ!
すると妻達がソレに注目している?食べる?って聞きながら皿を出すと
盥回しで取られて行き、俺のが…………
「すまん、大王をもう一つ貰えるか」
「畏まりました」
「旦那様?コレ、非常に美味しいですわ」
「そうね!アーシャさん、私も好みだわ」
「少し辛いですが、美味です」
「うんうん、何とも言えない美味しさです」
「我が家でも試して貰いましょう」
「俺の………」
まあ、楽しい一時では有ったのだが。
皆も其々の料理に満足したようで、笑顔で盛り上がっている。
この後はお茶だろうか、いや、何軒か見てだな。
では、帰る前に宝石商だな。
ゆったりと食事を終わらせて、買い物探索が始まった。
商店街を冷やかしながら進む。こちらを抜けると屋台市場だ。
ここは大丈夫とは思うが、感知で注意しなければな。
「うわぁ~凄い人出ですね!」
「先日も凄かったです!」
「色んな物が沢山ひしめき合ってます~」
「不思議なものがあるのですね?」
「「「「「「「「「「総領様!奥様方!!いらっしゃい!!」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「「ひゃう!!」」」」」」」」」」」」」」」
「驚きました!」
「皆さん歓迎してくれているのですわね?」
「美味しそうな果物です!」
「どうです奥様!さあ、切ったから召し上がって!美味しいわよ」
「まあ!ではお一つ………ん~あま~い!」
「では私も……うん!美味しいわ!」
「これ貰えないかしら?」
「女将、明日でいいから樽で幾つか準備出来るか?取りに来させる」
「あ!総領様!ありがとうございます!」
そんな事を繰り返していると、護衛の警備隊に小さな娘が絡んでいる。
「どうした?ん?娘、どうしたのだ」
「総領様!すいま、こら!あ、まて!」
「お母さんたすけて!死んじゃう」
「ふむ、どこだ?」
「こっち!はやく~」
俺はもう1人分裂して
「皆はそのままで、行って来る」
「いえ、アーシャもお供します。エリダ様」
「分かったわ。気をつけてね」
俺が子供を抱え、軍の兵士達もこちらに着いて来る。
アーシャもヒールでは辛いと思うのだが………そのまま抱き抱える事にした。
「きゃ、だ、旦那様?」
「足が辛いだろう。娘、真っすぐか?」
「うん。あそこをあっち」
「ん?右か?ああ、分ったぞ」
先の路地を右に曲がり少し進むと男達の怒声と女のか細い声が聞こえた。
「ごらぁ!払えんなら身体うれや!ゴス!ゴス!」
「いつまで甘えてんだ!おらっ!こら!」
「いい身体してんじゃねぇかよ!ビリッ!」
「いや!やめっ、あうっ!だ、だれか!きゃぅ!」
「お母さん!」
「おい、ゴロツキ共!」
「あ~?なんじゃ、へぎょぢjlp」
「邪魔すんじゃね…………へ?ぎょpせ」
「わひ!な、なんだ!おまdfljt!」
「あなた大丈夫?じっとして……【治癒】どう?」
「これで肌を隠せ」
「あ、あう。す、済みませ、ん。助かり、ました……」
「少し酷いな。女にここまでするとは。何があった?」
「………しごと、仲介で、ほとんど。持っていかれ……無いと、娼館に」
「おい、そこの男。見て助けんとは情け無いぞ!俺が戻るまで縛っておけ!
逃がすな!女、家はどこだ?娘?案内しろ。アーシャもいいかい?」
「はい、旦那様」
「おじちゃん、こっち」
「旦那様………酷い行いが罷り通るのですね」
「うむ。日常だが、スラムはもっと酷い。根底から変えねばな」
「あそこ。お母さん大丈夫?」
「ええ、治してあげるわよ」
スラムでは無いが、近くに長屋が有り、その一室だった。
一応普通の木造平屋で、作りは悪くない。
「ふむ、邪魔するぞ。ベッドは何処だ?」
「こっち」
女を横にして、服が破かれているのでシーツを掛ける。
「アーシャ?治癒と着替えを頼む。娘、腹は減って無いか?」
「おなかすいた。おじちゃんありがとう。お母さん助けてくれて」
「うむ。今、出してやる。母はすぐ治る。心配するな」
「うん……」
「もう一度【治癒】……大丈夫かしら?」
「ぅ、はい、有難う御座います貴族様。楽になりました、助けて頂いて」
「それは良いの。アレは何なの?あ、着替え出来るかしら?手伝うわ」
「ん、どうだいアーシャ」
「日常は平気です。仕事は無理ですけど……」
「娘と一緒に食べろ、痩せ過ぎだぞ。亭主は?あのゴロツキはなんだ?」
「有難う御座います。私の村は魔物に滅ぼされて………主人は死にました。
あいつ等は仕事を仲介して半分抜いて行くのです。生活出来ません。更に
週に一度集金に来るんです。人でなしです。この長屋は皆です」
「北部か。戻りたいか?」
「それは。でも子連れの女では無理です」
「近い内に開拓民を募る。女手も必要だ。勿論、軍が護衛と治安維持に同行する」
「それでしたら」
「うむ。これを持っておけ。周りにも声を掛けておけ。近日に触れを出して
募る。希望者には支度金も出す。整い次第に順次出発させる」
「私も戻りたいです総領様」
「うむ。では待っておけ、何か有れば言って来い。今からゴロツキは排除する」
「身体を休めて、栄養を取るのですよ?またね?」
「有難う御座います。有難う御座います。宜しくお願いします」
長屋を出てアーシャと2人、元の場所に戻る。
「旦那様。あの無法者は」
「うん。懲らしめる。アーシャは戻るかい?」
「いえ、一緒です」
先程の路地に戻ると、住人の男数人が遠巻きに見ていた。
「うむ。逃がさなかったな。おい、お前達のヤサは?案内しろ」
「ぐえ、誰がてめぇによ」
「後で殺してやるからな!女は犯す!」
「げへへへっ。びびって声も出ねぇか?」
胸クソ悪いので、腰から魔法剣を抜き、首に当て、少し押す。
「ぐぎゃああ!だげ、言う言う!止めれ!」
「最初からそう言え、手間を掛けるな。おい、お前は俺を殺して妻を犯すと
言ったな?覚悟は出来たか?俺は敵に容赦せん。アーシャはこっちへ。
見るんじゃ無いよ?」
シュン! ゴトン。 ブシュシュ~
汚い体液が流れ出る。見るに堪えんな。
アーシャを胸に抱いたまま、男の足を持って引き摺って行く。
「ひっ!こ、殺される~!助けて!」
「騒ぐな。お前も女にやっていただろ?ふざけるな。どこだ、早く言え」
「そそそ、真っ直ぐだ、すすスラムの入り口」
外道を引き摺り、アーシャを抱いてスラムに歩く。
「アーシャ、大丈夫?」
「はい。旦那様が一緒なら平気です」
「ここか?」
「そそ、そうだ!殺すな!ひひゃ」
失禁しやがった。汚いヤツだ。蹴り飛ばしてどかし、ドアをけ破る!
「おい、ゴロツキのヤサはここか?」
「お?なんだ~?いい女じゃねえか。よこせ。早く消えろや」
「おいおい!女廻すのが忙しいから、早く死ねやコラ」
「なんだぁ?おめぇ。馬鹿なのか?」
「にいちゃん!女置いて帰りな!死にたかね~だろ?」
「言いたい事はそれだけか?」
胸にアーシャを抱いたまま、ソウルイーターを抜き身で振り抜きその場の6人
の首を切り落とす。
ゴトン!ゴトゴトゴトン! ブシュシュシュシュ~
また汚いのが垂れ流しだ。
奥の部屋から次々とゴロツキ共が出て来る。
ゴキブリと一緒だな。
「待て!………あんた、新しい領主とやらだな。何の真似だ?ただじゃ済まされねぞ?」
「ほう?どう済ます?俺はコレだ」
ブゥンン!!ゴトン!ゴトン!ゴトン!ゴトン! ブッシュシュ~~
「で、どう済ますんだ?」
「こ、領主がこんな事していいのか!」
「ん?敵は容赦無く消す。一瞬も躊躇せん。で、どう済ます?時間の無駄だ」
「か、勘弁してくれ……」
「ん?俺は言った筈だ敵に容赦せんと。で?どう済ます。俺は皆殺しだ」
「降参だ。何でも言う事は聞く」
「よし、今週中にスラムも含めてゴロツキの組織全て集めろ。
北部の開拓民として従事しろ、拒否は認めん。歯向かう者は即座に斬首だ」
「お前の意見は聞かん。嫌なら死ね、皆殺しだ。来週の今日、バハムート広場に朝
集合させろ。死にもの狂いで集めろ。全てだ。また、様子を見に来る。さぼるなよ」
茫然自失のゴロツキを放置し、アーシャを抱いたまま出て行く。
汚い物を見たからアーシャで癒されるよ。
「あ~汚かった。可愛いアーシャを愛でよう。命の浄化だ」
「ええ。ずっと愛でてくださいましね?……良いのですか?」
「ああ。軍が張り付くからサボるのも逃げるのも無理だ。ゴロツキの掃除
にもなるし、開拓も多少は手になる。」
「まぁ!お悪い事?」
「自業自得だろ?悪事に手を染めた。何処かで清算は訪れるさ」
「アーシャを守って下さったのですね?嬉しいです、旦那様」
「そりゃあ最愛の妻だから当然だ。さ、皆に合流しよう」
ちょうど甘味の喫茶に入るところだったらしく、時間的に丁度良かった。
「どうなったんですか?旦那様」
「ああ、実は―――――――って事があってね。色々動かないと」
「やはり搾取をする悪党は居るのですね。何故かしら」
「上に同じヤツが居るから、下も真似をする。何処かで切らないとな」
皆がケーキとお茶を済ませてからは宝石商に行き、好きな物を買わせた。
女性の買い物。特に貴金属は鬼気迫るモノが有るからね。
身に着けて飾る物だから、幾ら有っても足りないだろうし、好きにさせた。
買い物が終わってから雷帝宮に帰り、護衛を労って自室に戻る。
女性の買い物とお喋りの原動力は何処から出るのだろう?不思議だ。
皆がキャッキャッと騒いでいるが、俺はお茶を飲んでノンビリだな。
そして、分裂中の俺は拷問室に向かう。
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