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W・M・S (Warlock Magus System)  作者: 渡野さら
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第58話 ニルヴァーナ領

 


「失礼致しますわ」


「ラティーナ姫様!」

「姫?どうした?文句でもいいに来たか?まぁ、座って聞こう」



「では失礼しますわ。ニルヴァーナ様、

 私は第三王女のラティーナ・フォン・ロマーノです。

 文句では有りません、感謝ですわ。あまりの腐敗ふはい嫌気いやが差しておりました。

 ですが、先行きの不安が有るのも確かです。残りたいとの想いは有りますが、

 どういったあついに………やはり女の身ですから。心配では有ります」


「ふむ。別に”これ”と言った処置は決めてない。そもそもが、どれだけ居るのかも

 生き残るかも未知だったからな。ただ今迄いままでは知らんが、優雅でお気楽な王族。

 と、言う訳にはいかん。が、ある程度の保証はする。

 婚姻も本国貴族ほんごくきぞくで探してもいい。おびえる事はないと約束しよう」




「そうですか。安堵あんど致しました。贅沢ぜいたく性分しょうぶんでは有りませんし文官の真似事程度は

 こなせます。望んで頂けるのでしたらニルヴァーナ様にとつぎます。

 民の生活を、この地の未来を約束して頂けるのでしたら…………」



「少し性急だな。が、その心根は買える。残ると決めたなら、

 候補に入れておくが………いいのか?早まったかも知れんぞ?」


「いいえ。ニルヴァーナ様の英雄り、お人柄ひとがらは、話に良く聞いておりましたが、

 実際お会いして、実話だと感じておりますから、逆に早まった方が良いかと」


「姫様、私も賛成で御座います」

「そうよね?見蕩みとれれる程の英傑えいけつですもの。私も立て直しをお手伝い致します。

 側室そくしつにも入ります。なので、母の保護をお願い出来ないでしょうか?」




「先程も言ったが、残る者をしいたげはしない。最低限の貴族的生活は保障する。

 犯罪や規則を守らねば叩き出す。ラティーナの母も同じだ。理不尽はしない。

 まぁ、俺の側室となれば義母だから当然保護はする。

 仕事も手伝って貰えるなら歓迎だ。側室の件だが、他には居そうか?」


「正直、居ないのではと感じております。皆、腐敗権力思考が染み付いておりまして、残るかどうかすら怪しいと思います」


「私も姫様と同じ印象で御座います。女性は数人残るかも知れませんが、

 後は……」



「いや、残らないなら構わない。側室はサリーニャ達が感傷的かんしょうてきな側面から、

 統治に有効として進めたまでで、無理にめとる必要も無い。

 だが………ラティーナは側室に迎えても、上手くやっていけそうでは有る。

 先に言っておくが、俺達の子をの地の総領主には確約出来ぬ。俺は正妻が2人、聖女のアーシャと女王のエリダヌスが居る。

 他に側室が6人居るから、其々それぞれに分配するしな。

 此処ここの領主の1人として幾らかの地域は任せるだろう。今はそれ位しか言えん。

 申し訳無いがな。それでも良いのか?」


「それで構いません。それにしても聖女様に女王様ですか。やはり大器たいきのお方。

 私はニルヴァーナ家の妻として、夫に着いて行きたいと思います。

 不束者ふつつかものですが、宜しくお願い致します」




「女にそこ迄言わせて無碍むげにも出来んな。此方こちらこそ頼む………しかし即日とはな。

 後悔するかも知れんぞ?まぁ、幸せにするつもりだが」


「いえ、大丈夫ですわ。自分の”眼”を信じます。それに、あのままでしたら

 出奔しゅっぽんや亡命もむ無しと思っていましたの。逆にこうなって安堵しています。

 他にも同じ想いの者達は多く居ると思いますわ。旦那様のお蔭で御座います」


「そうですね。私も同じく安堵しております。此処迄ここまで、無血で来られ被害も

 最小限ですし、うみも出して頂きました。後は復興に邁進するだけですから。

 ラティーナ様の嫁ぎ先も無事決まりましたし。喜ばしい事ばかりです」




「しかし、楽では無いな。小物でも腐敗役人や癒着ゆちゃく構造は健在だし、1/4の土地が

 魔物と異形に滅ぼされた。領主・役人・軍と、再編も行う。

 半面、良い事も有る。本国との国境線は廃止し交流は盛んになるだろう。

 平定したオストラバ地区と併せての開拓案が出ているし、人材も補填させる。

 軍備も縮小出来るし頼りになる妻も出来たしな」


「そうですわね。一つ一つ解決して参りましょう。サリーニャも宜しくね?」

「ああ。君の事だが、元王族が残っても残らなくても、

 此処ここでのうち女家令スチュアーデスを頼みたいがどうだろうか?

 俺もここが家になるのでな」


「願っても無い事です!では、少しづつ城内の区分けも再編して参りましょう」

「そうしてくれ。待遇は当家に準じて子爵の年金は金貨600枚だが良いか?」

「破格で御座います!」


「いや、家はそれでやっている。文官のリストが上がったら、

 家に勤める者の書類を纏めて欲しい。待遇も決めなければならんしな。

 その辺りも頼む。人材の引き抜きや補填も教えてくれ。

 それから、出て行く連中の財貨を半分は押えたい。搾取した金だからな。

 無理なら明朝取り押さえる。カスタロッサと相談してくれ」




 ラティーナと俺が残され、お互いの理解を深める為に雑談をしていたが、

 彼女の部屋に案内される事になったので着いて行く。王族の居住区らしい。

 中に入り居間に行くと、庭の見える雰囲気の良い部屋だった。

 内装も派手では無い。



「旦那様、どうですか?御庭が好きなのですが」

「ああ、良い雰囲気だな…………こうなって、寂しく無いのか?」


「はい。母が居れば。上の兄姉は首を跳ねて頂きましたし、他国へ嫁いでます。

 腹違いで仲も良く有りませんでしたから。下の兄は私を犯そうとした下衆です。

 あ!貞操は守っておりますから、ご安心下さい」


「ふむ。何処どこにでも腐った奴は居るな。今からは俺が矢面だ。

 お前が気に病む事は無い」




 そのまま庭で2人、お茶を飲みながら話していたのだが、

 俺が起こした騒ぎで昼食を抜いているのでは?と思い至り、

 時空術からケーキを出してみた。



「口に合うかは分らんが、騒ぎで何も口にしていないのだろう?済まないな」

「まあ!美味しそうですし、綺麗だわ!これはどうされたのですか?」


「俺は時空術と呼ぶ空間魔法が使えてな、何時も様々な物資を入れてある。

 少し口にした方が良いと思ったのでな」

「凄い………でもお気遣いが嬉しいです。やはりお優しいお方です。嫁げて安心です」


「そうか?失望するかも知れんぞ?フフ。まあ、頑張るさ。美姫びきめとるのだ」

「嬉しいお言葉です………可愛がって下さいませ、旦那様。私も頑張ります」


「ああ、大切にする。ラティーナが居て良かった。これから、色々と有るだろう。

 だが、何でも言えよ?夫婦なのだし、此の地の掌握にも役立って欲しい」

「はい。私こそ宜しくお願い致します。民の為にも発展させたいと思いますわ」


「そうだな。式なのだが、少し先になる。エリダヌスもまだなのでな」

「はい。致し方無いと。ですが、どちらでおやりになるのですか?」


「向こうは国事の式典には出来ないのでな。家の敷地は広くてな、

 林も泉も協会もホールも有る。そこでゆかりの者や家を招待してだな。

 ここでもしなければならないが、どうするかな。少し考える」

「はい。式が有るだけでも幸せ者です。本来はその様な立場では有りませんから」



 その後は雑談しながら王宮を案内して貰った。

 ストラスブルク城は巨大過ぎだが、ここは丁度いい大きさだな。

 まあ、短時間で回れる程小さくも無い。十分にデカい。

 最後に後宮に行って、母親を紹介して貰う事になった。

 家族の居住区は後宮を改造して使うかな?




「お母様、ラティーナです」


『お入り下さいませ』


 侍女が開けて中に入ると若く麗しき母親がソファーに座っていた。


「どうぞ、お座り下さい」

「うむ、では失礼」


「初めてお目に掛かります、クラウディア・レオーネ・フォン・ロマーノです。

 旧氏はオストラバです」


「こちらこそ。ストラスバルト王国、

 メルツェリン・アルテン・ナーフェル・フォン・ニルヴァーナ侯爵だ。

 かの地は俺が掃討・平定し、妻のアーシャが大地を浄化し魂を開放した。

 安心されるが良い」


「有難う御座います。故郷も報われる事でしょう。それで娘とはどのような………」


「うむ。お互い合意の下、側室に入って頂く事になった。

 家族の貴女も当然保護するから、穏やかに過ごして貰いたい。

 俺に恨みは無いので?」



「有りません。感謝はしていますわ」


「ほう…………」



「私は、、オストラバ王家の第四王女でした。

 故郷は海に面しておりませんので、全て海産物は他国に頼る事になるのです。

 その関係の維持に女を差し出す因習いんしゅうが有り、私がにえに嫁ぎました。

 当時14です。陛下は40で正に淫獣いんじゅうでした。嫁いだ晩から…………蹂躙じゅうりんされました。

 娘は大切ですが、あの男は憎んでいましたわ。

 故郷の難民達にも手を差し伸べず、玩具が如く女を犯し男を殺した仇敵きゅうてきです。

 でも、でももう終わり。 

 一人の英雄が故郷の魂も、私の憎悪も、難民の無念も、

 そして………この国も。救って下さいましたから…………心から、親愛と感謝を。

 有難う御座います。母娘共々、可愛がって下さいませ」


「…………そんな大層な男ではないが、遺恨いこんが無いならいい。

 家族は守るし妻は大切にする。この国は………大変だがるしか無いのでな。

 これからは過去にとらわれず、明るく過ごして欲しいものだ」



「えっと、お母様?”母娘共々可愛がって”て、意味が…………」

「え?そのままよ?可笑しいかしら?」

「そのままって、それは少し不味まずいのでは?」


「どうして?この国は体制崩壊し、ニルヴァーナ様の土地。

 もはや王族でも有りません。そのお方が保護して下さるのに御奉仕もしないなんて。私の積年の負の遺産を砕いて頂いたばかりか、娘も貰って頂く訳だし。

 それに私だってまだ31歳の女盛りなのに、この17年殿方に触れて頂いた事も無いのよ?女は弱い生き物です。こんなにも素晴らしいお方が近くに居て、すがりたくなるのも当然でしょう?勿論、貴女の幸せが一番よ?たまに、お情けを頂きたいの。ね?ダメなの?」




「…………そう、言われると。そう、かしら。旦那様?」


「そこは女の話だ。ちゃんと2人で話せ。だが喧嘩はするな?怒るぞ?俺は執務室に戻る。何か有れば何でも言ってくれ。義母殿もだ。ではな」




 逃げる様に部屋を出たが………ぶっ飛んだ女だな!だが、話をきけば心情は理解出来る。良い悪いは別で。それより仕事だ!執務室で見れる物は全て目を通さないとな。書類が上がって来る迄に数日は掛かるだろうし、各持ち場や役職からも話を聞いて纏めないと、何も判断出来ん。遣るしか無いが大変だぞこりゃ。

 スフィアで報告もだ。先ずアーシャ!絶対に!次は宰相、次は~ジェームズで、イエネッタだな。最低でだ。

 執務室に入り、書類を片っ端から見る。同時にスフィアだ。



「…………アーシャ、今は大丈夫かい?今日は無理だな。俺がここに居る事に意味が有るから。あ、ロマーノは手中に収めたよ。国王と貴族・役人の罪人は首を跳ねたが、それ以外は犠牲者0の無血開城降伏で済んだよ。無駄に死人が出なくて良かった」


『っ!!流石は旦那様です!素晴らしい快挙です!益々我が家も安泰です。私も誇らしい気持ちですわ!ただ、お帰り出来ないのが残念です。お身体は大丈夫ですか?』


「うん。大丈夫だよ今から激務の日々なのに、弱音は吐けない。色々大変なんだ。あ、アーシャ達を呼ぶのは少し待ってね?王宮の区分けも変えるし、団体、役職も再編しなきゃならない。国内生産と貴族家、諸々の把握、王宮から追い出す連中、増援の受け入れ。かなり忙しい」


『一国分ですものね。でも、出来る分野はお手伝い致しますから、何時でもお呼び下さいまし?アーシャの心は何時いつでも旦那様とりますから』


「有難うアーシャ。その内助けて貰うと思う。あ、王族の姫でまともな人が居てね、王宮や国内の市民感情的に統治の助けになりそうだから側室に入って貰う事になったから。いや、押し掛けて来た?まあ、そんな感じ。要らない王族は明朝叩き出すから、午前中の何処どこかで少し戻るね?午後は本国の増援も来るし忙しいから」


『午前中ですね!待ってます!お待ちしてます!ずっと待ってます!え~っと、側室ですか?統治の助力になるなら1人2人は王族を入れた方が良いと思いますわ。流石は旦那様です!』


「まだ、今から連絡しないとならない相手が多いからまたね?大好きだよアーシャ」

『はい。お休みなさいませ、旦那様』




 次は宰相だな。


『メルか、どうなったね?無事は心配しとらんが』


「ああ、国王と罪人は斬首で、後は無血開城降伏だ。何とか民の犠牲は防げた。今は王族の処理だね。出たい奴も態度保留も明朝纏めて叩き出すよ。残るのは数人かな?その中の1人は側室にした。案外まともな人も多くて助けてくれるんだが、元が悪いからさ。再編や立て直しに苦労しそうだよ。ま、頑張るがね。北部域とスパンダルの国境封鎖も作戦通りに済んでるから安心してくれ。一応、ストラスバルト王国、ニルヴァーナ領って事にしたが良かったか?」


『構わない。それにしても凄いな!どんな手品だ?まあ、犠牲は少ない方が良い。明日には増援と政務官が到着する。上手く使ってくれ。政務官は10人、お前に移籍させる人材だから気兼ねするな』


「助かるよ、実際野梅やばいからさ。今後の展開は?」


『お互いに開拓はしなければならんし、お前は領内の掌握も急務であろう。暫くはバタバタが続くのでな。その後だ。メルはアルテン方面の領地もだぞ?確りな』


「了解!ま、何とかやってみる。じゃ」




 その後はジェームズとイエネッタに現状報告して、お互い情報交換しておいた。

 イエネッタ達は昼過ぎの予定。南方軍と足並み揃えるから、それ次第らしい。

 ジェームズは順調に領地の把握が進んでいて、特に大きな問題も無い様だ。領軍も少しづつ増えてるし魔物の被害も目立っては無いらしい。では、そのまま頼む。時間見て行くから。って事にした。





 暫く書類に目を通したが、人の気配で顔を上げるとクラウディアが入って来た。



「ご苦労様です。軽めのお食事をお持ち致しましたわ」


「済まない。だが、クラウディアが態々?まぁ、嬉しく思うが」

「はい。逢いたいのと、少し雑談でも、と。あら!名前で御呼び頂けるなんて」

「想いを聞いてしまってはな。頂こう。。雑談ね、では普段の生活を聞きたい」


「普段?特段する事が無いのです。だから刺繍や演奏、読書、お茶会、チェス、

 気分やその日の都合で様々でしたわ。私は懐妊が分ってから、忘れられた存在

 だったのです。幸か不幸か御渡りは一度も無いし、公務も故郷向け以外は無し。

 ですから後宮でも腫物で、仲良いお仲間も居ませんでしたわ。

 会話も娘以外は侍女と女官長だけ。時が止まっていましたの。

 ですから、これからどんな毎日になって行くのか楽しみですわ!

 こうして城主様とお話したり、旅行やお買い物、お仕事もお手伝いしたいし

 少女の様にワクワクしますわ!」


「それはまた。まあ、王都の屋敷や街をラティーナも連れて案内してもいい。

 冒険者の学校と商会を運営してるしな。他にも広い領地が有るし。

 ま、暫くは此の地の掌握と立て直し復興だから、助力してくれ。落ち着けば

 定期的に旅行等にも出よう。妻達も連れてな」


「はい!お願い致します!お手伝いも御奉仕も頑張りますから!

 あ、湯殿に参りませんか?お流しってしたことは無いのですが、

 癒せる様に頑張りますから…………お嫌でしょうか」




「ふ~。ま、気分転換には良いか。流して貰おう」

「はい!」



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