第53話 蹂躙
ん?偵察が再度来たか。最前より人数も多い。
少し様子を見るか。
感知をしながらアーシャを抱き締める。
アーシャの甘い香りが脳髄を蕩けさせる。
明け方四時に目を開ける。感知に変わりは無い。
目の前には魅力的な裸体のアーシャが腕の中にいる。
どうするかな?起きるか、このままか。
もう少しだけアーシャの柔肌と体温を楽しむ事にした。
三十分後に起きてスーツに着替える。
アーシャの頭を撫でて、口付けをしてから防壁に移動した。
「おはよう諸君。ヤツ等も小賢しいな」
「おはよう御座います!連中、国境線の柵の外に集結を始めました!それと偵察隊が梯子か何かを持ってますが!」
「一応、完全な軍事行動に出る迄は様子見だ」
「はっ、了解しました!」
「だが………警告は必要か」
そのまま防壁に飛び上がり、スパンダルの偵察兵に声を掛ける。
「おい!間抜け共!そこは本来領土内だ!シラを切りたいなら二キロ後ろの国境線まで下がれ!でなければ問答無用で処分する!」
「下がる気は無いな!では死ね!」
防壁の外に飛び降り、ソウルイーターで百八十度に横一閃!!
敵兵全員の身体が二つに別れ、臓器と血液を吹き出しながら崩れた。
「ふん。愚か者が」
錬金で地面を操作して、死体を地中に埋没させて、防壁内に戻った。
「警告は必要だが、遠慮も慈悲もいらん。来るなら蹂躙するのみ。お前達も分ったな?」
「「「「「「「「「「「「「「「了解です!!!」」」」」」」」」」」」」」」
「まぁ、確実に攻めて来る。待つとしよう」
感知でもスパンダル軍が集結しているのが分る。その数およそ一万。
まだ敵国内から集結する反応が分る。いくら集めても無駄だがな。
待機室に入り待つとしますかね~
待つ事一時間半、午前七時。
漸く出撃を感知した。おいでなすったか。
「報告します!動き有りました!」
「ああ、行くか。お前達、西方軍五百は待機だ」
そう指示して一人で国境に向かう。一応の”警告”だな。
一撃で終わるとも知らずにいい気なものだ。
俺は二キロなので直ぐに着き、ヤツ等が近づくの待つ。
するとスフィアが震えた。
手に取り魔力を流す。
『旦那様!寂しいです。何方なのですか?』
「おはよアーシャ。愚か者がトチ狂ったらしいからおしおきだ」
『え?それって…………まさか攻めて!大丈夫なのですか?』
「一撃で終わらせるから、直ぐに戻るよ。朝食を一緒に食べよう」
『戦争に!?危険は!危なく無いのですね!?本当ですね?直ぐ戻って下さいまし。不安です!』
「ああ、何も問題無いよ。皆で待っててくれ。美味しいお茶も飲みたい」
『…………はい、ぐすっ。美味しい食事と、ぐすっ。お茶と私達でお迎え致します』
「うん。楽しみにしてる。後でね」
アーシャに心配を掛けてしまったでは無いか!この愚か者が!
この怒りといら立ちとアーシャへの謝罪を全てぶつけてやるからな!
愚か者が百メートル迄近づいたので、警告を発する
「我はストラスバルト王国、侵攻作戦首魁、ニルヴァーナ伯爵である!貴国は現在、軍事行動中と判断する!したがってこのまま国境線を超え我が国に侵入した場合は先の予告通り、問答無用で蹂躙する!愚行を改める決断を期待する!以上」
返事は待たずに霊波移動で防壁上の戻り、国境内に入るのを待つ。
「敵性集団、完全に国内に入りました!」
「よし。ではサヨナラだ」
右手の人差し指の先に小さな銀の弾を作りだし、敵軍勢に飛ばす!!
ヒュ―――――ン ピカッ! ズドゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!!!!
「爆風と衝撃波!【真神障壁】!!!」
防壁の外、一辺五キロの四角い銀色の障壁が現れ全てを防ぐ。
向こうの惨劇が嘘のように障壁の内側は静まり返っている。
障壁に手を入れ、風魔法で向こう側の砂塵を吹き飛ばす。
すると直径一キロ程のクレーターが有り、感知を使っても生体は居ない。
「約、一万二千の敵を消滅確認。生存、残骸、無しだ。皆ご苦労!当面攻めては来ないだろうが監視は必要だ!引き続き警戒を頼む!更に五百名の増員を依頼しておく!待機室にワインを出しておくから交代休憩時にでも飲んでくれ。では戻る」
「「「「「「「「「「「「「「うおおおおおおおお」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「やったああああああ」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「流石は英雄様だああ」」」」」」」」」」」」」」
待機室にストックのワインを出して陣地に戻り、中央棟で事のあらましを説明した。
宮廷魔術師達はぶ~ぶ~言ってたが、どの道一撃で終わるのだからさ。
増員を頼んで、感知はしておくが、今後の監視と作戦行動は任せた。
さ、妻達の下に戻ろう。
要塞馬車に戻ってユニコ達を撫で回してから中に入る。
談話室に行くと、テントの前に立ってアーシャが泣いていた。
優しく抱きしめて声を掛ける。
「………アーシャ?大丈夫だよ?」
「ぐすっ。だって、心配だったから、ひっく。怖ぐて、さびじいんだもん。ぐす」
「何も心配無い。でも、ありがとうな?もう寂しくないよ」
背中と頭を撫でながら【真神治癒】を掛けて瞬時に穏やかな心に変える。
「さ、美味しい食事とお茶を貰おうかな?」
「はい!旦那様!大好きですっ!!」
食堂へ行き、朝から凝った料理に関心しながらも、美味しいので満足だ!
皆が朝食を待っててくれたみたいで、済まない。
食後はジェシカ渾身のお茶だ!これは芸術では無いか?凄いぞ!
「で、でぇ、ななな何で、一人で、やや、やちゃった。訳ぇ?あちし、大将なんだからねっ!!」
「どうせ夜中か明け方は分っていたし、俺が出れば一撃で終わるのは同じだ。手間が減るだろ」
「っそそ、そりゃぁ、そうかも………知んないけどぉ…………いいいい、ぃっしょに!行けば!いいじゃん!!」
「何だか子供の様だな?どうした?」
「ここ、子供じゃ!無いんだからねっ!!……………………だ、抱っこ、された。けどさぁ」
「ん?あれか?イエネッタも肉体は普通の女性だ。危ないだろう?根に持つなよ。ごめんな?ナデナデ」
「ひゃあひ!!ななな、ナデナデ!はは、破廉恥でしょ!!あああアンタ!ナニカンガエテオジャルデス」
「アーシャ?どうにかならないかな?少し、困る」
「分かりました。十五分お時間頂けますか?その代わり、ご褒美。下さい」
「ああ、頼むね?食堂でお茶飲んでるね」
まったく。何だアレは。アイツが使えないと、負担が俺に来るんだよ。
明日には一度帰って報告とエリダの解禁をしなきゃならんのに。
ジェシカのお茶は美味い!癒しだな。
って、ノンビリしてたらカトリーヌが呼びに来た。
「もう平気?まったく。時間無いってのに」
「さ、最初から、平気。だわよ。時間無いって、どうして?」
「いやぁ、エリダや宰相と十日って約束したんだよ。だから。あ、感知に依るとロマーノ側に人の反応は無い。兵士も含めてな。”混沌の者”と魔物だけで、北部もそんな感じだから、放置で問題無い」
「ま、まあ?いいですわよ?帰っても。私をどうするの、かしら?」
「ビミョーに話方が。ま、いっか。どうするって?イエネッタは残って主力と交代で戻るんだろ?」
「わ!私を連れて行かない気ぃ?なんでよ!どしてよ!捨てるんだわ。飽きたらポイ捨て。あ~あ、可哀相なイエッタちゃん。年増は廃棄処分かぁ」
「ねえ、アーシャ?どうにかならないかな?話が見えないんだけど…………」
「ふぅ…………五分下さいまし」
「なぁんだ~最初から言ってよ?焦ったじゃない。まあ、明日戻るのよね?そこは仕方無いわね。じゃ、今晩かしら?ドキドキしちゃう。でも、こっちも来てよ?私だけとか不安だし、いいわね?あ、難民受け入れごめんなさい?あなたの手配で助かったわ!暫くはあの流れで行けるわね。うんうん。それとスフィア!私にも!だって………毎日会いt、じゃなくて、打ち合わせ!そう!それ!ね?した方が良いでしょう?だから」
何か良く分らんのだが、スフィアを渡すとスキップしながら出て行った。
なんだアレは…………?まったく謎だ。
「アーシャ?アレ、なんだい?知らない生物だ」
「実は――――――――――――――と、言う拗らせのお花畑系のお嬢様だった訳で、話せば話す程、拗れてしまうのです。ですから!今晩お願い致します。なので今からお願い致します」
「う、うん。良く分らないけど…………」
で、何故か皆で風呂に入り、全員と夫婦の営みをした訳だ。いや、嬉しいんだけど、脈絡が見えないとさ。
アーシャ曰く「ご褒美ですから」だったから、張り切ったんだよ。
そしたら奥さん達が失神しました。慌てて治癒掛けてます………
ごめんね?「「「「大丈夫です!」」」」って返ってきたから一安心。
此れからは注意が必要だ。
最後は湯船でリラックスしてベッドで少し横になる。
色々と疲れたからな。
だが、全員が一緒に横になってる。ま、いっか。
妻達の甘い香りに包まれて、何だか眠気が………
起きたら一時間後だった。スッキリしてる。
昼か。メリヌ達と昼食でも作ろうかな?
4人にキスをしてから厨房に行く。既に準備が始まっていた。
「あ、御当主様!助かります~」
「うん。今回は人員少ないから、負担が多いよな」
「戦地ですから仕方無いです。デッカーも頑張ってますし」
「そうだな、賞与も出さないと。皆には危険手当。明日戻るから」
「わ~嬉しいです!貯金したいので!」
「結婚式か?それは家で出すから自分のドレスや家具に金掛けなさい」
「有難う御座います。私達、御当主様が優しいお方で助かってます」
「ん?そんな感じ?」
「はい!他所は酷い家も有るって聞きます。給金ケチったり、因縁付けて天引きしたり、夜這いしたり」
「それは犯罪だろ。仕方無い奴も居るんだな」
「はい。私達は恵まれてます」
んで、イエネッタと侍女達、保護女性を食事させて、残ってる女性軍人は後から食べて貰った。
妻達のは冷めてしまうが、魔法で温めるか。
俺は起きるのを待つから、感知を確認した。
思った通りにロマーノ側は動かずだから、此方側は混乱?してるのだろう。
当面処か、攻める事すら不可能かもな。
陣地と周辺も感知確認したが異常は無い。野生動物程度だ。
物資は順次定期便で届くから、少しづつ生活や建物も改善されるし規模も増やして
行けば、皆の励みにもなるだろ。
軍は此処に根を下ろす訳だし、難民は殆どが女性だから、婚姻して家庭を作ったり
子供を作ったり、人口の増加にも期待が持てるだろう。
本国からも開拓移民も募れるだろうしな。ん?この土地って誰の領地だ?
そう言えば肝心な事決めて無いじゃないか!いや、国の直轄地しか無いか。
自前の軍と開拓者で此処を開ける者など、早々居ないな。
色々と考えていたら、アーシャが起きた様だ。
「旦那様?居ないから泣きそうでした………」
「こっちにおいで?お茶を飲もう。涙が溜まってるよ?」
「だって。朝から寂しいし、怖かったもん………旦那様ぁ」
涙を浮かべてガウンのまま抱き着いて来る。
そんなアーシャが可愛くて、頭を撫でて落ち着かせる。
「大丈夫、何も怖くないし心配無い。可愛い顔が台無しだよ?」
「ぅん………だって。働き過ぎだし、お姿見え無いし、心配で寂しかったもん」
「ん、ごめんな?もう平気だろ?一緒に居るのだから。膝に乗って。そう、もたれて、そうそう。魂の接続だよ?」
{あっ!凄く気持ちいい。安心します。穏やかです}
{そうだろ?落ち着いた?このままこうしてあげるから、重ねて}
{はい。旦那様だけ感じます。私と2人だけ………安心して……}
不安、心配、恐怖、これ等も身体に悪影響を及ぼす。カトリーヌが良い例だ。
ずっと行軍だったし、皆疲れが溜まってるのだろう。癒してあげないとな。
この部屋に癒しを!【真神治癒】!!
これで肉体と精神の疲れが改善された筈だ。
アーシャもお姫抱っこに抱き替えて、皆が起きるのを待とう。
「ぁ………だんなさま。うれしい……幸せです。もっと抱いてて欲しい」
「うん。そうしたいけど、そろそろ皆が起きる頃だよ?」
「人目を盗んで、アーシャを独り占めてください」
「そうだね。まあ、他の男には渡さないよ?奥さんなんだから」
「そうして下さいまし。他の殿方は要りません。貴方の女ですから」
「うにゅ~あ、御当主様、アーシャ様。眠ってしまいました~」
「ああ、皆も寝てるよ?スッキリしてるだろ?」
「はい………何だか、調子が良いでしゅ。心がスッキリです」
「うん、良かった。カトリーヌもこっちにおいで?」
「ふぁい~あ、お茶淹れますね~」
「ありがとう、カトリーヌ。身体は平気かしら?」
「はい。何だか、健康体!って感じです。どうしてかしら?」
「実は私もなの。旦那様のお力かしらね」
「うむ。そうだね。頑張ってる妻達にね?うん、美味いな。上達してる」
「えへへ~頑張ってます!でもジェシカさんのお茶は凄いです。芸術です!」
「そうよね、アレはその域だわ。私達も研究頑張らないとね?」
「そうですね!うふふふ」
「ん…………いい香り。ふぁ?寝ちゃってたわ」
「ぅう、んん。お茶?カトリーヌさんの?」
「二人共起きたか。こっちでお茶にしよう」
「「はい」」
結局妻達は昼食は食べずに甘味でお茶しただけで済ましたから、バハムートにあげた。
その代わりに夜は確りたべたのだが、風呂から出て、事件は起きた。
アーシャ達と寝たかったのに、一人自室に押し込まれた。
するとベッドに背を向けて寝ている女がいる………?
「は、はは、初めてだから…………優しく、してね。おねがい」
イエネッタだった。
事態が全く読めないのだが、だからアーシャ達は俺を一人にしたのか。
と、言う事はお互い女の中では合意の上の行動になる。
なら、問題無いか。
いや、問題でしょ!不味くない?
「メ、ル?」
うわ~そんな潤んだ瞳で見つめられても!いや、女に恥を掻かせたら怒られる。
しかも今回はアーシャ達が事前に合意してる!逃げ場なっしいんぐ!
イエネッタは右側に抱き着いている。
言い訳は出来ない。せがまれて二回してしまった。
「…………ね、メル?別に結婚して。なんて言わないから安心して?
週に一度位でいいから、こうして恋人として愛してくれたら我慢するから。胸、触って?ホラ、ドキドキが凄いでしょ?こんな歳迄恋も知らずに来たから………面倒な女になりたく無いのよ。私が今や軍事の要。爵位も父から継いだ。今更結婚なんて大騒ぎだわ。それなら、恋人の方がいいでしょ?都合のいい女で。その内しれっと子を授けてくれればいいから。それで満足。家もその子に継がせる。どう?いい考えでしょ?ねぇ………私じゃ魅力無いかしら?」
「魅力が無ければ二回もしないだろ。いや、それでいいのか?表面上は確かに揉めないが。発覚した後が問題起きそうでな。嫌ならそもそも抱いてないから恋人と言うのに否は無い。しかしそれでは男にとって都合良過ぎだろ。俺の女になるなら幸せにはしてやりたい、と思う。」
「ううん、いいの。お互いの為でしょ?で、恋人も続けられる。そりゃあ奥さんに憧れは有るけど、かなりお互いに面倒でしょ?役職はいいにしても、爵位持ちだし。懐妊したら逢いに来てよ?愛でてくれないといやなんだから」
「………宰相と爺さんには相談する。まあ、エリダみたいな扱いになるかも知れんが、何もしないのは性分では無いし女のお前に失礼だろ。出来る事はする。自分の女の事だからな」
「そう…………なら期待しとくね?ね?しない?」




