第54話 帰還と密約
予告無し連投です
何時も通りに朝五時の目覚め。
まあ、感知で方々確認していたから、眠った訳では無いが。
イエネッタは右側でぐっすり眠ってる、胸が当たってて感触が凄い。
一応お腹に手を当てて治癒を掛けておくのを忘れない。
「ん…………ぉはょ。ん、何したの?」
「治癒を掛けた。負担は減らしたい」
「んん。優しいのね?嬉しいけど。でも、のめり込みそうで、怖いわ」
「その時は仕事も投げ出せ。ウチの屋敷で過ごせばいい」
「怖い事言うのね?そうしたいわ、許されるなら。今日は何時出るの?」
「そうだな。十時、かな?泣きそうな顔するな」
「だって………寂しいじゃない。抱いて欲しいもの」
「スフィアも有るし霊波移動でこまめに来る心配するな」
「ほんと!だって、数か月は動けないでしょ?案外ノンビリ出来るかもだけど」
「ああ。毎日でも構わんがな。風呂に行こう。抱き着け」
「え?これ、え?浴場?どうなってるの?」
「これが霊波移動だ。どうだ?便利だろ」
「じゃあ、毎日来て!五分でもいいから!」
「心掛けよう。さ、流すぞ?」
湯で温まって、少しじゃれ合って、文字通り恋人の時間だ。
俺がイエネッタの髪の毛を乾かした時は驚いていたが、
服を整え化粧が済むまで待って外に散歩兼見回りに出た。
駐屯陣地は問題無いからぐるっとひと周りで、難民陣地に行く。
歩哨の連中も真面目だし、女性隊員が安心感を与えているのも大きいな。
櫓の連中も警戒感が出ているし問題無しか。
難民女性も早くから起きて洗濯や飯場の当番で働いているし、機能は順調だ。
男性街の連中も炊き出しに並んで、仕事に掛かる準備か。
問題を起こさなければいいがな。慣れた頃が危険だ。
中央棟のイエネッタの部屋を整備してやらんとな。
上級職で女は彼女だけだし。そうなると全員で三十人しか居ない女性部隊も
分けて、整備してやらんと、俺達が帰ってしまうからな。
「イエネッタ。今日中にお前の宿舎は整えておく。他の女性隊員のはどうする?」
「ありがと。あんまり区別も良く無いけど、少ないし間違い起きちゃこまるわ。出来れば女性棟が良いかも知れない。私含めて」
「では別棟を錬金して工兵に頼んでおく。誰か侍女にした方が良いぞ?」
「うん。お願いします。侍女ねぇ…………考えるね」
「では陣地に戻ろう。場所を選んでくれ」
「分かったわ」
駐屯陣地に戻って、中央棟に行く。
渡りで繋いで併設する事にした。イエネッタの部屋は二階の奥。
注文を聞いて細部を作り込む。
今なら木材の加工も”真神の力”で可能だ。
今日中に絨毯とベッド、壁紙、ソファーセット、鏡台を入れれば取り敢えず。
馬車に戻って朝食にしよう。
テントの食堂で朝食を取る。
「今日は十時に此処を出るからそのつもりで。戻ったら王宮に行って報告会だ
エリダも連れて帰るから、宜しくな。
イエネッタの事なのだが」
「いえ、節度を守ってお二人が大人の対応をして頂けるなら私達は異論有りません」
「いや、ハッキリさせておこう。彼女は俺と自分の立場を考えて”恋人”の立場で我慢すると言っているが、経緯は別にしても、俺の女になった女性は幸せにしたいとは思っている。一応良い考えが無いか爺さん達に相談はする。だが、子は授けて欲しいとの事だから、最悪は周り等関係無く家で過ごさせる。君達妻にも良き関係を築いて欲しい」
「分かりましたわ旦那様。イエネッタ様、宜しくお願い致します」
「「「「「「宜しくお願い致します」」」」」」
「此方こそ宜しくお願い致します」
テントを外に出し、馬車とユニコ達を中に入れて準備完了。
もう一度感知でスパンダル、ロマーノを確認する。
スパンダルは変化無しか。当分放置出来そうだな。ロマーノは?
う~ん。昨日より侵攻範囲が広がってるな。これ不味くないか?
放置したら滅亡するんじゃないか?我が国もタルベとピルニャンが国境に面しているから、何時かは介入するだろうけど、ヤツ等の首都は南だから貴族や王族が生き残れば問題無いってか?最悪だな。ま、今はいい。
「では出立する。イエネッタ、何か有ればスフィアで」
「分かったわ、気を付けて下さいね」
「バハムート、頼むな」
「きゅいきゅい~」
こうして漸く帰路に就いたのだった。
バハムートに依れば、直線距離で三時間らしい。早っ!助かるがな。
なので、空中で昼になる。
家の者と保護した女性九人だけなのだが、騎士団が六十名だからな。
メリヌ、ジェシカ、カトリーヌと俺で調理する事に。
保護した女性に食堂と配膳を頼んでおいた。
無事に作戦も成功したし、奮発してドラゴンステーキだ!
「皆!良く頑張ってくれた!事前協議で国からは、何等かの形で報償が約束されている!きちんと手当や賞与で報いるから安心してくれ!それとドラゴンステーキだ!では頂こう!」
「「「「「「「「「「「「「「御当主様に感謝を!」」」」」」」」」」」」」」
「旦那様。皆、嬉しそうで何よりですわ。素晴らしい夫で鼻が高いです!」
「俺も素晴らしい奥さん達で誇らしいよ?」
んで、ワイワイやってる内に、無事屋敷に到着した。
「ただいま、皆が何事も無くて何よりだ」
「「「「「「「「「「「お帰りなさいませ、御当主様!」」」」」」」」」」」
「「「待ち侘びておりました旦那様!!」」」
「「無事の御帰還、安堵致しました」」
屋敷の使用人達、妻達、妾の二人。勢揃いで迎えてくれた。
皆も変わり無くて安心したよ。予備隊も顔つきが大分変ったな。
テントから馬車とユニコ達を出して厩舎へ。バハムートにはドラゴンステーキ!
きゅいきゅい喜んでるよ。テントは出したままで掃除等の整備をして貰う。
保護した女性達はマリアンヌに任せておけば心配無い。
取り敢えず居間に入りお茶を飲む。
スフィアを出して宰相に繋ぐ。
「やあ、忙しいのに悪いね。戻ったんだが」
『うむ、ご苦労だった。して、どうするかな午後三時はどうかな?』
「了解。では後程」
宰相と通話を切ってエリダに繋ぐ。
「泣いてない?」
『泣きました!旦那様?何時になりそう?無事なの?』
「いや、後で会議兼迎に行く。待っててくれ」
『はい!お待ちしております!』
「うん、じゃあ後でね」
「アーシャ?物資調達に出て来る。そのまま王宮に向かうから。
夕食は屋敷で。エリダも連れ帰る」
「もうですか?少しお休みになられては」
「いや、難民陣地に保護した人々の物資は元々計上してないから、最初の内は足りないだらけなんだ。助けた以上は無責任な事は出来ん」
「…………分りました。お早いお帰りをお待ちしております。行ってらっしゃいまし」
そのまま霊波移動で商業ギルドへ行き、物資を受け取り定期的な依頼にしておく。
ついでに寝具と絨毯について聞き、この先の角の倉庫が問屋らしいから行ってみる。
歩いて行き、ベッド、寝具、鏡台、絨毯を聞いてみる。
一応有るが鏡台は余り選べないらしい。十分だから見せて貰う。
大衆用は一般的な物を30台と鏡も同数、天蓋ベッドの豪華な物を1台と絨毯も毛足の長い上物を2枚と鏡台。ついでに鏡をあるだけ購入した。
問屋を出て、路地で霊波移動を使いイエネッタの部屋に飛ぶ。
突如現れた俺に驚いたが、直ぐに抱き着いて来た!
一頻り口付けを交わしてから
「ちょっと寂しくなってたから、嬉しいかも」
「買い物をして来た、待ってくれよ?」
絨毯を敷いて天蓋ベッドを置く。ソファーセットと鏡台を置いて、部屋の隅に鏡を出した。隊と保護した女性達用のだな。
「直ぐに戻るの?」
「少し時間有るよ。どした?」
「一緒に居たいから」
そう言って抱き着いて口付けをしてくる。
こんなイエネッタが可愛いとは。今迄知らなかったからな。
これから、色んな顔を見せて貰おう。
「ちゅ。ん、ちゅ………ふぅ。ね、布団入る?」
「少しなら。実際バタバタで疲れてる」
「なら、癒してあげるわね?」
布団をめくり中に入りながら、ドレスを脱いでいるが…………いいか。
俺も脱いで横になる。息吐く暇も無いから助かる。
胸に俺の顔を当てて抱いて来る。彼女の甘い香りと柔らかさが眠りを誘う。
30分だけ、な。
「うふっ。寝顔かわいい!…………な~んで好きになっちゃったのよ…………仕方無いわ、なったのだから。ドキドキが止まらないもの…………ずっと、メルの事ばかり。重症だわね、どうしましょ。でも、離したくない。離れたく、ない。ずっと…………すごい!…………本当に30分で起きるのね?ね、私の胸どう?癒せたかしら?」
「ああ。最高に心地良い。イエネッタがこんなに可愛い女性だと気付かなかった、すまない。お前との関係も大切にするから安心してくれ」
「ええ………お願いします。胸の鼓動が凄いの。離さないでね」
「ああ、もう俺の女だからな。このまま王宮に行く」
身支度を整えて、霊波移動で王宮のエリダの執務室に飛ぶ
「やあ、エリダ。泣いてないか?」
「メル!お待ちしておりました!早く逢いたかったの!少し泣いてしまいました」
そんな事を言いながら、満面の笑みで飛び込んで来る!
エリダは泣き虫だからなぁ。そんなトコも可愛いのだが。
「メル?此方に座って?隣です。直に来るでしょうからお茶しましょ?」
「ん、そうだな。待たせて済まんな。此れでも急いだんだ」
「女王様。アウリッヒ殿下と筆頭殿、宰相殿がお見えになりました」
「ええ。通して」
「お主は本当に10日で平定するとはの!頼もしい限りじゃ!」
「うむ。後は防衛と開拓だな?」
「2国はどうなりましたか?」
「ああ、報告の通り、将軍には元王都付近に本陣地を作ってポルンガとの国境線警備と緩衝材になって貰ってる。俺がその隙に南部のロマーノ、スパンダルの国境線に防壁を築いてから、中の掃討戦を行った。侵攻開始からの野営陣地は全部そのまま残して街道も構築、兵も500づつ残して今後の進軍・通商ルートにしてある。最終陣地は南端、スパンダルとの国境だ。イエネッタを連れて検問所で警告をして。生き残った難民は受け入れた。駐屯陣地の隣に難民陣地を作って国民として保護してある。ざっと5千5百人で男性が少なく4百人程度だな。で、早速偵察隊が何度か来て処理したが、昨日の朝に完全武装で1万2千が進軍してきたから、再度国境線で警告はした。したが止まらんのでな、監視員が国内に完全に入ったのを確認して消した」
「消した?どうした?」
「消したのさ。陰も形も残してない」
「陰も形も?まあいい。再三の警告で止まらないなら合法だ。書簡も回しておるしな」
「感知で動きを見る限り、反撃は無いな。無理だろう。逆にロマーノからの異形の侵攻を防衛するのに必死になるだろうさ。ロマーノ側なんだが、難民含め生体反応は無し。北部は魔物と異形だけだが………日増しに侵攻範囲が広がっててな、このままなら5~6日でタルベとピルニャンの国境に到達するだろう」
防衛自体は現状で問題無い事
食料含め資材は慢性的に不足
国が管理するとして、開拓・開発を誰を入れるか?
何処から何から開拓して行くのか?
タルベとピルニャンの国境防衛は?
ロマーノをどうするのか?
ポルンガには譲歩をどうするか?
「大きな問題点はこんな感じだと思うがどうする?」
「問題無いなら早目に宮廷魔術師は返したいの」
「ポルンガは外交だな、揉めはしないだろう」
「だが土地割譲の話は出ている。大筋だけでも纏めんと此方の開発計画に障りが出る」
「ボルドーとベルンは期待したいな。お前も参加するかね?」
「やはり農地は増やさねばならん。同時に街だが………」
「問題はロマーノ国境のタルベとピルニャンか」
「防衛は当たり前だが…………」
「どう、やるか。じゃな?」
そう言いながら3人が俺を見る。こいつ等最近、悪巧みトリオだな。
「行くのはいいが、主力は地元領軍と南方軍だろ?”混沌の者”は倒すさ」
「済まないなメル殿。ちゃんと考えている」
「メル坊が行かんとどうもならんで」
「今回の平定は成果が莫大過ぎるのでな。前倒しで侯爵に上がって貰う。全会一致だ」
「勿論、それ以外も考えているが、各侯爵・公爵と利益の摺り合わせがあるので、少し待って欲しい」
「お嬢も大手を振って連れて帰ってくれて問題無い」
「やったわ!旦那様?今晩から一緒ですわ!」
「俺からも待って欲しいと言うか提案だが、ロマーノ国境の防衛だけして暫く放置したい。保護した女性達から聞いた話だが、あの2国は痛め付けた方が良い。実は――――――――――――――――――――――――――――が現実に起こっていたらしい。難民が与えられた絶望と憎悪は相当な物だ。で、なければ、俺が大規模殲滅魔法で吹き飛ばし、無理矢理に軍事境界線を引いて弱体化させる。半島での出来事等、誰も感知しないしな」
「そんな…………酷い…………」
「正に魔物の所業だの」
「人として許せん!民を預かる者の仕業では無い!」
「…………メルよ、その話どれだけ実現可能だ?」
「俺が単独で3日だ。1日でスパンダルとの防壁を高く強固に作り変え、ロマーノ迄の街道を伸ばす次の1日でロマーノ北部を殲滅魔法で潰してバハムートのブレスで仕上げる。最後にピルニャンから半島の付け根に魔法を落として問答無用で防壁を立てる。3百キロ位か?後の残党と軍事境界線の防衛は人海戦術だがな。問題無く終わると思う。ただ、スパンダルをどうするか?なんだ。我が国でロマーノ北部を開放すると、奴等必ず調子に乗る。また攻めて来る可能性も高い」
「そこ迄は問題無いのだな?…………実は近年ロマーノからの関税が上がっておってな。今や取引不能な金額なのだよ。代替え地も検討しとるが、石材はあそこ程良質で近い場所は無いので足元を見られとる。行商や旅行者の通行税も軒並み高いし警備兵や軍人からの嫌がらせと暴行事件も多い。外務卿も頭が痛いのだ。その、怒るなよ?その理由がだな………聖女を寄越せと2年程前から要求している。勿論突っぱねているが、その代償としての嫌がらせ外交だな。諸外国でも聖女の訪問を望む声は多い。目的は…………拉致、だろうがな」
「ふむ。言うのは勝手だがな。殿下、俺が個人で戦争しても良いかな?北部については先の作戦で、南部は1人で侵攻する。そのまま王都の王宮を押える。それなら街の民にも被害は出ないし向かってくる兵士だけ倒すから被害は最小限だが?」
「…………人的被害が双方押えられるなら賛成したいが。宰相?」
「メル、確実だな?」
「やらすんかい!」
「ああ。楽勝だ。アーシャを狙うなど、俺と母さんに対する挑戦だ。捨て置けん」
「なら任せる。好きにやれ。序にお主が国王代理でも何でもやってくれ、ウチも旧オストラバ地区に手が掛かるから、国境を排して合同で復興させれば良かろう?軍が必要なのはスパンダル国境とロマーノの無事な都市の治安維持だ。なんならストラスバルト王国、ニルヴァーナ侯爵領でもいい。軍は余るからバックアップは十分可能だ。逆に、やってくれるか?統治に必要な人材は可能な限り派遣する。国益は莫大だ!」
「殿下、宜しいか?爺さんは?」
「メル殿、いや義兄上。お願いします」
「皆が遣る気なら、問題無かろうて。統治直後は宮廷魔術師をあそこから移動させるで、軍は南方軍の一部が余るからそのまま向かわせるでな」
「では実行日は…………5日後でいいか?逆算すると明後日には北部の作戦に移る。で4日目に単独侵攻して1日で王宮を落とす。動き易い様に国内でも発表してくれ。面倒事は減らしたい」
夕食の時間になるまで細部の話で時間が潰れた。
明日も王宮で御前会議を開き、その後に打ち合わせを行う事になったので午後は王宮だな。
エリダと帰るのだが、女官長以下、女官3名と侍女5名が今日から移住する事に。
年内は通いだが、女官と侍女の2名は一緒に通うらしい。護衛は当然家の騎士団だ。
屋敷には既に全てが用意されているので、着の身着のままで来て貰う。
王宮馬車に乗り、我が屋敷に戻る。
エリダが腕に確り抱き着いて一体化してるぞ?可愛いヤツめ。
女官長達はそれを見て微笑んでいるがな。
さ、屋敷が見えた。今日も疲れた。
もちろん明日も投稿は予定しております。
さら




