第51話 剣勢
あいにくの天気ですが
海の日投稿です
む…………心地良いな。母さん?
頭や頬を撫でている………口付け?凄く、甘い。
ハっとして目を開けると、アーシャが膝枕をしていた。
「済まない。眠ったようだ」
起きようとすると押し戻された。
「ダメです。旦那様はお疲れです。このまま………ね?」
「いや、十分だ。アーシャこそ寝なさい。”彼女達”はどうした?」
「だめ。せめて身体を休めて……メルが大切なの。貴方が寝るなんて余程だわ。お願い」
「じゃあ、一緒に横になろう」
「ええ。さ、早く横になって下さいまし」
共にベッドに横になり、アーシャは俺の顔を自分の胸に埋めて抱き寄せてくる。
「女性達は旦那様のお蔭で大丈夫です。相当な地獄を体験した様なので、男性の接触は旦那様以外、当面無理でしょう。少し話を聞きましたが、スパンダルとロマーノは非道を行っているようですわ。許せません」
「やはりそうか。アーシャ、ありがとう。眠っている時、母さんに包まれている感じだった。君に安らぎを感じる。安心するんだ」
「お義母様と同じなんて嬉しいです。私もメルに安らぎと安心を感じます。魂が寄せられるのが分るのです。お眠り下さい。私はここに居ますから。お眠り、メル」
本当に母さんの様だ。霊が解け込み、魂が重なる。
{あ、アーシャ。無意識に魂の接続をしてしまった。}
{これが。魂の…………凄く気持ちいいです。全てが繋がった世界。素敵です。ずっと繋がっていたい}
{カトリーヌとは偶にね。魔人同士だから。不思議なのはアーシャとも抵抗が無かった}
{まぁ、カトリーヌと?私ともして下さい。旦那様には全てを捧ているのですから。何時でも}
{これからは、そうするよ。俺もアーシャと居たいからね。ガイアとも接続しないと怒られそうだ。このまま少し寝よう。おやすみアーシャ}
{おやすみなさいまし。旦那様}
起きると寝た時と同じ状態だった。
朝6時、俺には十分な休息時間だ。普段の睡眠は目を閉じているだけに近い状態。
こうして本当の睡眠は中々無い。疲れていたのか。アーシャに感謝だ。
しかし、顔に掛かる胸のボリューム感が凄い!嬉しいからいいのだが。
だが何時迄もこうしててもな。もう少しだけ堪能しよう。それが正解の筈だ。
堪能もしたし、起きるか?と、思ったら頭を胸に押し付けられた。
「もっと堪能して下さいまし?」
「してるよ?素晴らしい胸だから。そろそろ起きない?」
「………そうですわね。でも、ちゃんと可愛がって下さいまし」
「勿論だよ。風呂に行ってくる」
「御一緒致します」
アーシャと流し合い、身支度を済ませてから馬車の厨房で朝食を作る。
と、思ったら騎士団で当番を決めたようだった。
なのでテントに戻り、厨房に行って朝食の準備を進める。
昨晩は保護した女性達の面倒で寝不足だろうしな。
するとアーシャが入って来て手伝ってくれるので、夫婦2人だ。何だか嬉しい。
2人で朝食を済ませて、将軍にも持って行き、そこで昨晩の保護の話をしておく。
女性陣が起床が遅れるのと世話は大勢に影響が無いので、陣地の作業を進める。
此処を本拠地にして、工事・防衛と殲滅作業とに分かれる。
今迄の仮陣地に500づつ残ってるので現状は8500名。
3500が残って5000と我が家、宮廷魔術師で侵攻を続ける。
なので将軍は陣地に残る事に。恐らく今日にも西方軍の一万の軍勢と物資が合流する筈。
日中は俺達も防衛しながら陣地の手伝いをする。
エリダの約束の日迄、後5日だが、防壁を築いた事によって牽制が楽になったからな。
魔物は結局湧いて出るので”混沌の者”が殲滅優先だ。今の速度なら何とかなる。
後は生き残りの人間が居れば保護するだけだ。助けてやらんとな。
日が暮れて来た頃、西方軍の増援が到着した。物資も続々入って来る。
宰相にスフィアで連絡していて良かった。
我が家の皆も問題無く平常運行だし、エリダも我慢出来ているようだったな。
外交は宰相と外務卿、殿下の比重が大きくなるので現状を伝えてはいるが、さて。相手がどう出て来るかが問題だな。
恐らくロマーノとスパンダルは、この地に攻めたかったのだ。だが、”混沌の者”の強力な存在に阻まれて、単独国での侵攻を諦めて、難民の搾取で金を稼ぎ溜飲を下げた。
そこへ先日の”邪神”事件でロマーノ北部が大混乱に陥り、スパンダルはこの機に侵略戦争を仕掛けるつもりでいたのだろう。
だが、我が国が、自国の防衛理由に一方的に旧オストラバ地区の平定作戦に出たから、二の足を踏んでいる。簡単に言うと、その様な感じなのだろうが、
ロマーノとスパンダルか。非道を平然と行う国家と国民性。末端の国境警備の兵が率先して、難民を虐げ、搾取し、犯し、騙し、売り、殺す。
残虐種族なのか、国家運営が元からだからそうなったのか。
どうにしろ、放置出来ない国だな。いっそ潰すか?それも手だな。
取り敢えず今はこの土地の掌握だな。
陣地では既に、おれが錬金した石の建物を上手く利用して工兵達が次々と柱や壁を建て込み、屋敷の形に仕上がって行く。飯場も巨大な建物になり始め、あっという間に本拠地に変わり始めた。
俺も要塞馬車に入り、テントに行く。するとジェシカが飛びついて来たので、抱きしめて口付けを交わす。
「どうした?寂しいのか?」
「それも、有りますわ。保護した方達が起きてますので。此方です」
ジェシカに手を引かれ入ったのは談話室。保護した9名とイエネッタ。
アーシャ、ガイア、カトリーヌが居た。
「「「お帰りなさいまし旦那様」」」
「ご苦労さん、メル。今から話を聞く所だったのよ」
「うむ、皆、身体に異常は無いか?何でも言え」
「安心しなさい?私はストラスバルト王国の宮廷魔術師筆頭代理。イエネッタ・フォン・ルジェアンテよ。オストラバは既に無く、生き残りも貴女達が初めてなの。我が国で、国民として保護するから心配いらないのよ?」
「ありがとう、御座います、助かります。ご恩返しが、出来れば良いの、ですが………」
「そんなの良いのよ?邪竜の後から今迄、どうなったか聞きたいの。話せる?」
「はい。私は王都の南に住んで居ました。巨大なドラゴンが攻めて来たって、避難を勧められて、家族で王都を離れた直後に、王都が黒い炎に包まれて。必死で逃げました。周りも沢山の人が逃げてて。最寄りの街に逃げこんだら受け入れは断られて、次の街に向かったら、何とかなったのですが、一週間程すると、魔物と黒い化け物が攻めて来て。また逃げました。父さんはその時死にました。命からがら逃げた先の村も既に滅びてて。でも化け物が居ないから暫くそこに潜んでました。半年近く隠れてましたが、魔物が多くて場所を転々としながら、流れ着いたのがスパンダルとの国境です。でも、誰も入れて貰えず難民で溢れていました。母さんが食べ物を分けて貰うって、国境の兵士に泣きすがったら、お金を掏ったからっていきなり兵士達に叩きのめされて。私と妹はそいつ等に代わる代わる犯され続けて。夜中、気が付いたら終わってたけど、妹はまだ犯されてて。止めに入ったら死んでました。死んでも犯されてました。妹の死体を抱いて母さんを探したら、袋叩きにされたそのままで死んでました。原型は無かったです。棒で穴を掘って埋めました。そしたら、ここから逃げるから連れて行ってやると声を掛けられて。汚いテントに押し込まれて、色んな男に毎日犯されました。そいつは食べ物を受け取ってたみたいで。ある日逃げだしたんです。でも、何処へ行っても同じ光景の繰り返しで。兵が奴隷を募集してました。男だけです。でも、地獄から出れると思って皆行くんです。残った女達は毎日搾取されるんです。見た目の良い娘は無理やり連れて行くんです。パン一つで殺し合いが始まって、一人で居る女は、すぐ犯されてそんな毎日です。ロマーノ側に流れても同じでした。あそこの兵は暇つぶしで女を皆の前で犯して、男は生きたまま、腕を落とされ、腹を裂かれるんです。魔物の巣です。私達は段々仲良くなって、一緒に生き延びたんです。もっと居たけど、仲間同士で殺し合う様になって。最後は魔物の顔になってるんです。国境を離れて途方に暮れていたら、山に隠れ住んでる人達に出会って助けて貰ったんです。でも、食料も少ないし男の人を奪い合いになって、また殺し合いが始まって。最後の一人残った男性も出ていったきり。私達では魔物を倒せません。食料も尽きて、外に出たら化け物に襲われて。ニルヴァーナ様に助けて頂けなかったら、あそこで死んでました。この3年地獄でした。アイツ等は魔物と同じ怪物です。人じゃありません」
「…………言葉も無いわね。ありがとうね、話してくれて。食事をして、ゆっくりしてて」
「あ、あの………ニルヴァーナ様は………お姿が、見えないと、不安で」
「ん?俺はここに居る。お前達が寝たら殲滅に出る。先に食事をしておけ。栄養の補給をしなければ回復せんぞ?一度、俺達が戻る時に王都の屋敷に連れて行く。イエネッタ、いいか?人頭は後に提出する」
「ええ、そりゃ構わないさ。保護した以上はウチの国民だし。メルなら安心だよ。アーシャ様が居るから」
「おい、俺がたよ………まあ、鈍いのは確かだが。やはりロマーノとスパンダルは捨て置けんな。この際お互いで潰し合ってくれればと思うが、巻き込まれる善良な民も居るだろうからな」
「腹黒宰相と陰険外務卿に任せなよ。上手く………は、無理っぽいね。ヤツ等の言い分や要求も支離滅裂なんだろうしさ。そうなると、メルも巻き込まれるんじゃない?」
「俺もそう思ってる。頭が痛いが家族やエリダの為だ。何とかするさ」
保護した女達を落ち着かせて食事を取らせ、女性軍人達が一緒に風呂に入ってくれた。
俺も家の者達と食事をして、妻達と風呂に入る。
夜の単独出撃まで時間が有るので、少し自室でゆっくりする。
「昨晩からは、攻略速度を上げる為に粗目で攻めているから、日中の戦闘に異形が多く混じるだろう」
「はい。デッカーさん達と頑張ります!」
「その分大地は荒れて無いと言う事ですね」
「南半分は呪いが有りませんから、攻撃も手伝います」
「早目にお戻りになって、お身体を休めてください。心配です」
「ん。切りを見て引き上げる。では行って来る」
本日もバハムートと上空からの爆撃で”混沌の者”と魔物を蹂躙する。
人間の感知も無いし、順調に潰して今晩は終わりにする。
陣地に戻ると4時だった。
テントに入り、風呂に行く。汚れを流してサッパリした。
自室に入って、さあ寝るぞと、ベッドを見るとジェシカとカトリーヌが寝ている。
ま、いいか。一緒に布団に入り眠りに就く。
朝6時、薄っすらと起きたらカトリーヌとジェシカが交代で上に乗っている。
その、何だ。見なかった事にしよう。そのまま寝た。
1時間後に起きると、2人共つやっつやで満面の笑みだ。正解だったらしい。
「おはよ2人共。気持ちのいい朝だ。風呂に行く」
「「御一緒に!」」
久々に3人での風呂だな。カトリーヌがまた、色々と成長してる?
て、言うかジェシカも成長してる?どことは言わないが…………
風呂から出て、そのまま3人で朝食を作り、妻とナターシャ達とイエネッタで朝食を済ます。
軍の女性は彼女達の面倒も見て貰う。
日中の行軍兼掃討戦の始まりだな。
イエネッタと魔術師団員を半数。軍の5000人と当家で進む。
大地の復活と錬金での街道敷設も同時で行う。
自分達の進軍と今後に生かせる為にも必要な処置だからな。
”混沌の者”が出る度に、カトリーヌと騎士団が張り切って切り伏せてる。
あの一体感が凄い!何時の間にか仲良しと言うか、カトリーヌがシンボルみたい?
いや、まあ。いい事なんだがな。崇め方が宗教みたいだ。
「行きましゅよ~!はっ!やっやっや!たぁ~!頑張ってくださいよ~」
「「「「「「「「「「「「押忍!我が戦姫様!!」」」」」」」」」」」」
「うおりゃ!」
「だ、はあ~!」
「そら!そりゃ!」
「ぬをおお~これしき!」
「気を抜いちゃダメですよ~あ!アントロスさん後ろ!ふぅ~」
「団長!楽しいですな!や、はっ!」
「ああ!戦姫と戦える喜び!天上の如し!ぬはっ!」
「はっ!やっ!ぬ~~はっ、たっ、たっ、たった~!」
シュン!ヴュン!シュキンシュシュシュシュシュシュキンキン!
「戦姫様は素晴らしい剣勢だ!負けてられんぞ!」
「「「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおお」」」」」」」」」」」」
確かにカトリーヌは凄いんだよな。戦えば戦う程に強くなってる。
動きも剣勢も凄い。だが、こいつ等のノリがな。
カトリーヌ親衛隊みたいな感じなんだよ。ま、いいか?
--------------------2日後
俺達侵攻隊は遂に国境から5キロ内側の、俺が作った防壁に到達した。
場所はスパンダル側。
コレをガイアの”力”で3キロ外に全移動させる。
「ガイア?頼むな。無理はしなくていい」
「ええ、あなた。朝飯前です。では!【大地細動】!!」
ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!
凄まじい轟音と共に、防壁が動いて行く!凄い迫力だな。
俺達は眺めながら陣地構築に入る。此処に基地が必要だからだ。
今は5000名だが、何時もと同じく直径500メートルの防御陣地を錬金で形成し
櫓、風呂トイレ、飯場、宿舎を其々の場所に作り、中央と思ったら、
カトリーヌが練習を兼ねてか作り始めていた。
「お、いいぞ!カトリーヌ。上出来だ。2人で早く終わらせよう」
「はい!御当主様。早く手助けしたいので」
「ああ、助かってる。騎士団だってお前が引っ張ってるし、客対応や対人の気遣いもアーシャと熟してくれているからな。もう居ないと困る。カトリーヌが好きだしな」
「あわわ~!あ、その、わ、私、も。だいすき。です。ずっと、いっしょ」
「ああ。そうだな?一緒だぞ?カトリーヌにも、子を産んで貰わないとな」
「あぅ…………は、恥ずかしぃ、ですよぅ。いっぱい、産む、です」
「よし、頼むな?さ、終わらせよう!」
「ふ、ふぁい…………」
ここは要の一つにもなるから作りは確りと、細かい処も設備を充実させないとな。
明日には本陣地から工兵と物資、増援が来るから何とかなりそうだ。
ユニコ達を離してやり、カトリーヌ、バハムートと馬車に入り、テントを覗く。
夕飯の支度や各部屋と布団等の準備に追われている。
何か手伝っておこうかな?洗濯と乾燥を済ませよう!大変だからな。
シーツ、カバー類、タオルを一先ず浴槽に入れて魔法で洗う。
次は下着と柔らかい布製品を洗う!最後は服だが、色と種類で分けて洗う。
逆の順序で、手から温風魔法で乾燥させていく。
カトリーヌが来て、乾いた端から畳んで分けて棚に収めて行ってくれる。
女性の服と下着は分らんから助かった。
其々の部屋の布団も温風魔法で天日干しの様にふっかふかに仕上げてシーツ、カバーをセットする。
調理以外の女性軍人も手伝ってくれたので早く済んだな。
そんなこんなで、夕食を皆で食べているとイエネッタが
「ねえ、メル。洗濯も助かるよ。奥方のはいいさ。譲って屋敷の娘もいい。だけど私の下着はダメだろ!有難いけどダメだろ!」
「え?そうなのか?いや、手間だからさ。負担は少なくしたいだろ」
「旦那様?お気持ちは嬉しいのですが、女性には色々有まして……下着は女性にお任せ下さい」
「ん?そうか。皆が手間で無いなら構わないよ」
「…………アーシャ様も大変だわ」
「うふふ。でも、優しいですし、かわいい処なんですよ?」
「そうです。鈍いけどかわいい。にぶかわ」
「御当主様には”口にしないルール”をお教えしたのですが、”敢えて触れないルール”も必要ですね」
「御当主様は、にぶかわ~。」
「何か俺、散々だな。っと、明日なんだが国境に出て”釘を刺そう”と思うがいいか?」
「ん~、まあ?必要かしらね。いや、あたしも行く。連れて行って。今回は公式にあたしが総大将、その立場で以てヤツ等外道に啖呵切っておかないとね?後々揉めるの確実なんだからさ」
「イエネッタが言うならそうするさ」
予約忘れてました~
海って行ったのいつでしょう?
海難事故にはお気を付け下さい。
さら




