第36話 討伐体験3
昼食も終わり、午後の部だ。
狩りは俺達教員組が残りの2班を連れ、残置組を冒険者達に見て貰いながら解体をやって貰う。
準備を整へ森に入る。
やはり近くには居ない。奥へ移動したかな。
仕方ないが少し入るか?
悩んだが、川沿いの森の中を進んで行く。
100メートル先、何かが居る?ゆっくり進んで70迄接近した。
大型の鶏?と狼が戦っている。
俺とクリスティが左右から回り込み、魔法で足止め兼追い込み役。
カトリーヌが弓、アネッサとメルルが魔法、他は剣を抜いて走る。
弓は大鳥の身体に刺さったが致命じゃ無い。
俺達が風魔法で逃げ道を塞いで子供達へと向かわせる。いざという時はグレゴリーだ。
カトリーヌが2射目を大鶏の首に当てたが、まだだ。
メルルが風のカッターで獲物を裂くがまだなので、アネッサがファイアアローを大鶏に打つ!
そこへ他の連中が剣を狼と大鶏に突き立て、とどめを刺せた。
まずまずの出来だな。
俺が木を2本切り、狼、大鶏、を括り付けて担ぎ棒にする。
これは男子に交代で持たせる。
一応合格なので、帰還する。
野営地に戻ると、順調に解体も行っているし問題も起きていない。
なので、時間も早いし探索に出る事にした。
「俺と”野生の狼”で探索に行って来る。後は頼む」
取り敢えずは、女達を救出した地点まで行く。
もう一度良く確認したい。そこから感知範囲を広げて調べる。
「異常無しか………何処から来たんだ?」
「自然に集まるには時間が必要だし、周辺で被害の話も出る」
「巣が別に有るって事かしら?」
「本当に異界やも知れん……」
生体感知では動物しか反応無かったので霊波感知を行う。
同じ様に彼等と動物達だが………ん?感覚が少し、変だ。
「直ぐ先だが霊波の感覚がおかしい。見に行こう」
100メートル先に小さな池が有った。ここなのだが――――
「何かおかしいぞ、空間が歪んでいる!」
「え、なに、あれ。けしきが………」
「本当に異界か!」
「おいおい!おかしいぞ!景色が歪んでる!」
「うむ。やはり”混沌の者”か。魔物なら良いが”異形”が出てくれば並みの冒険者では歯が立たんな」
「そんな………」
「心配するな。俺も過去に遭遇したのは師匠と居た時期に2度、1人旅の間に2度だ。近年遭遇しなかったし、この国では一度も無い」
俺は恐る恐る、渦の残衝に時空術で触れる――――やはり元に戻せた。
戻せたが、長時間残っていたと言う事は、大規模だったのか?あの程度で?何か条件が?それとも既に”異形”が解き放たれたのか?
奴等は動きは鈍い。感知範囲を広げるか。
ん?霊波は無制限になったのか?まあ、先ずは5キロ――――10キロ――――15キロ――――居た!!この方向はアルマンの町か?兎に角行こう。
「居た、3体だ。東に15キロ程だからアルマンだろう。お前達は野営地に戻ってくれ。俺はこのまま倒しに行く」
「え!マジで居るんですか!」
「そ、そんな」
「どうやって行くんですか!?」
「俺達は防御を固めるぞ!!」
「いや、心配するな。20キロ以内に奴等を他に感知しなかった。直ぐに済ませて戻る」
急ぐので、霊波移動を行って彼等の前から消えた。
霊波感知の反応地点に身体を再構築すると、アルマンの町が見えていた。
振り返ると、20メートル離れた場所に”異形”が居た。
「よう、久しぶりだな。師匠と仲良くしてたんだ、俺とも遊べよっ!」
走り込んで一閃!一体を切り割く!手応え有りだ!!
次!一撃入れたが倒れん!数撃叩き込むが致命じゃないな、強い。上位種なのか?
もう一体が手刀で突いて来るのを躱し横薙ぎに入れるもまだだ。こいつ等強いぞ!
ソウルイーターを抜いて構える。二体が同時に突っ込んで来るのに呼吸を合わせ一気に切り割く!
一体は倒したが最後の一体はまだだ。耐久力が高い。
左手を振り、指の先から炎弾を3発飛ばし、抜け様に横薙ぐ。振り向いて上段から地面に振り下ろし真っ二つに割いて泡の様に消えた。
「ふぅ。油断出来んな」
霊波感知を行い他が居ないか確認して、町を遠巻きに目視する。
これ。と、言った異常は見当たらないな。
歩いてアルマンの町に近付き、門番に声を掛ける。
「やあ、ニルヴァーナ伯爵だが異常は無いか?」
「は?英雄様!!失礼しました!問題有りません!」
「何か、有ったのでしょうか………?」
「うむ、準備学校の討伐体験を引率中にゴブリン等が大量に沸いてな。被害が無いか確認に来た。どうだ?」
「直ぐ――――あ、昨日通り掛かった旅の家族が居ましたが……」
「何人だった?」
「確か男2人の女3人で5人の筈です」
「出身地は聞いてないか?」
「ベルンと言ってました」
「――――町の出入りに異常は無い様です」
「分かった、邪魔をした。一応気を付けてくれ」
ーーーーーーーーーー
「いま………魔人様、消えちゃった………」
「ああ。どう、なってんだ」
「もう、魔人様、だからな………何でも、有りだろ」
「我々も移動しよう。報告せねば」
あ、ケイティです。私達は野営地に戻って、事のあらましを教員と草原の風に伝えました。
その、人が消えるって言う衝撃が抜け無くてすみません。
魔術師だけど、私もクリスティさんも、そんな魔法聞いた事も無いし。驚いてて。
子供達には知らせず、警戒だけはしておこうって事で、見張りに立ってるのですけど………
森の中から何か出てくる?私は杖を構えて発動準備に入ります。
「ケイティ、大丈夫か?力んでるぞ?」
「メル様っ!!良かったぁぁ。どうなっちゃうかと心配で………」
「うお!魔人様!どうでしたか!?」
ーーーーーーーーーー
「うむ、多少手こずったが問題無い。それより女達は起きたか?」
「あ、はい。中で食事です」
「では、話を聞こうか。周囲に魔物は居ない。通常警戒で十分だぞ」
「「「了解です」」」
「ジェシカ、クリスティ、ご苦労だな。俺にも茶を――――済まない」
女性達が食べ終わるのを待ち、ゆっくりと語り掛ける。
「君達は、ベルン出身の旅の家族。そうだね?」
「は、い………主人と、息子が………ま、魔物に、喰われ、わた、わた、したちも………」
「そうだな。戻ってどうにかなるのか?」
「なん、とか………家と店、が………あります」
「そうか。明日此処を出て王都に戻る。それからベルンへ送り届ける手配をする」
「あり、がとう………ございます」
テントを出て、皆に声を掛ける。
「さあ、いい時間だ。夕飯の準備に掛かれよ!」
夕飯は自分達が狩った獲物を主体に調理して食べていた。
うん。いい傾向だな。狩った命に感謝してくれると意義も高まると言う物だな。
晩も班のテントで交代監視に立たせて野営の厳しさと心構えを教える。
ん?カトリーヌ達のテントの前にアーノルドが立っていた。監視番か?
「アーノルド、監視か?野営はどうだ?」
「あ、先生。まあ楽しいですね。ただ女の子ばかりなので気を遣います」
「そこは諦めろ。現役冒険者だって皆そうだし、実際女性冒険者はかなり疲れると思うぞ?」
「え?そうなんですか?」
「まず、女性の方が体力も腕力も無いだろ?男の前でトイレとかも嫌だろうし一緒に寝るのも貞操を警戒してるらしいからな」
「はあ、大変なんですねぇ。自分らマシですか」
「多分な。逆に守ってやる位の気持ちじゃないとな」
「まあそうなんですよね。カトリーヌ嬢やアネッサ嬢は小さいので、自分頑張らないとダメですね」
「気負い過ぎてもダメだがな?平常心さ。狩りはどうだ?」
「経験済みだったんで何とか。魔物は緊張します」
「分かってるならいい。一歩づつだ」
他のテントも其々回って異常がないか確認する。
クリスティの様に寝込みを襲うヤツが居ないとも限らん。
だが、こうしないと研修の意味もないしな。
無事に朝を迎え、ぽつぽつと起き始めた連中が居るな。
朝食が楽な様に晩から仕込んでいた班も有った。加点だな。
今日は撤収だけだから、さっさとテントを畳んで荷物を纏めている。加点だ。
カトリーヌ達は撤収と料理に分かれている。もう終わりか。加点だ。
俺が近づいて頭を撫でると、嬉しそうに見上げて来る。カトリーヌとエイミィが料理番か。
「美味そうなスープだな。だがアーノルドが足りるか?」
「これ、お魚の身をいれて煮込むんです。足りませんかぁ?」
「う~ん、それなら大丈夫か」
「自分!肉飲みたいっす!おっぱいも、ゴビン!!ぬぐあ」
「アーノルドさん!破廉恥です!」
「あたしのおっぱいはあげないわよ?」
「メルルさんも!」
アイツの演技は凄いが、キャラが間違ってると思うんだよな。
そんなバカやってる内に朝食も終わり、荷物を積み込む。
が、人数も増えたしどうするかな?
「男子は1台に10人づつ、最後が7人で荷物は俺が時空術で納めてテントを置く。女子は全員テントに入っててくれ。ジェシカとクリスティで世話を頼む」
「「はい」」
帰りは馬の疲労も考えゆっくりと。休憩はこまめに取る。帰るだけだしな。
折角だから川遊びでもさせてやりたいが、もう一泊になってしまうので却下。
それでも夕方5時半には到着出来た。
「皆!お疲れ様!これで研修は終わりだが、自前の武器、防具を持ち出した者は手入れをしておけ?先輩達にも感謝を忘れるなよ!これで解散!週明けにな!」
「「「「「「「「「有難う御座いました」」」」」」」」」」
「”野生の狼と””草原の風”もありがとうな。助かった。また、頼む。
報酬はギルドだが、素材倉庫にも行くからお前達のも一緒に出すぞ?」
「あ、行きますんでお願いします」
「俺等も行きます!」
「分かった。報告書は俺が作るしダンカンにも話が有る。クリスティとグレゴリーは上がってくれ」
「いえ、お供します」
「儂、腰痛いで帰るの~」
「ジェシカとカトリーヌは彼女達と屋敷に戻ってくれ。アーシャに報告頼む。ダンカンと飯でも食いながら話が有る。帰りは適当にするからキンブリーもいいからな?」
「「「分かりました」」」
「待たせた、では行こうか」
先に素材倉庫に行き、彼等の討伐部位とオーク、オークキングの素材を渡して証明書を貰う。
ギルドの受付で今回の報酬とオークの素材代、ギルドポイントを受け取って終了した。
クリスティと2人でダンカンの執務室に入る。
「お疲れ~!どうだった?」
「まあ、良かったとは思うがな。話が有る、飯でもどうだ?」
「うん?構わねぇがよ。じゃ、そこ行くか」
何時ものビストロに入る。夜は居酒屋っぽいのだな。
2階の隅に座りまずは乾杯だな。
「お疲れさん!カ~うめぇ!で、どんな話だ?」
「まあ、体験自体は忙しいが何とかなった。だが――――――――」
俺は事の経緯を始めから聞かせて、能力も仕方ないが話した。
夜襲で数百のゴブリンを討伐、子供達も無事達成。
更に奥にゴブリンとオークの群れ。
オークキング
襲われた旅の家族、女は保護した事。
翌日の狩りと解体実習。
探索に出て謎の渦と異界の化け物の事。
俺の能力で追って、化け物を倒した事とアルマン周辺は異常無し。
「と、まあこんな感じでな。一応アンタには話さないとな」
「まさか、異界の化け物とはな。お前、最初に見たの何時だ?」
「10歳だな。次は師匠が消えた時だから13だ」
「そんな前からかよ!だが、頻繁に出るって訳でも無さそうだな」
「ああ。俺も1人旅の最中に2回、昨日で5回目だがこの国で感知すら無かった。と言うか大陸の東だけだ。それと、師匠は知ってる口振りだったから、昔から出ては居たのだろう」
「メルの師匠は戦士ラーンだよな。最初の”魔人”だからな。お前さんが2代目って噂で聞いて驚いたもんさ。大陸の中央から東じゃ有名だったからなぁ。おい?ねーちゃん!ラガー3つな!」
「そうか。ダンカンも知ってたか。無敵の強さだったからな」
「ああ!知らねぇ奴は居ねぇって程だったからな!」
「そんなに凄い人だったのですか。お会いしたかったですね」
「今の俺より強かった筈だ。あの人には勝てる気がしない。だが奴等と渦に消えた。思惑が有ったと思う」
「どっちにしろ、目撃情報が有れば対処する。位しか動きようが無ぇな」
「ああ。だが今回の感触だと銀クラスの1位以上でないと難しいだろう。俺が極力動くが」
「「そんなに!」か!そりゃ骨が折れる相手だな」
「動き自体は鈍いんだが、一撃の攻撃力と耐久値が高いんだ。低クラスではダメージ自体が与えられん」
「か~~何だそりゃ!もう飲む!やってられん!飲む!ねーちゃん酒持ってこ~い!」
「私も!ワイン下さいな~」
「気持ちは分かるがな。俺もラガーお替わりな」
「ぐ~~むにゃ、ぐ~~」
「うふふ~メ~ルさまぁ~酔っちゃった~~ん」
「どうしてこうなったんだか…………」




