第31話 忙しい日々4
屋敷に戻って、先ずはお茶を飲みながらセバスの様子をアーシャに話した。
やはり姉として心配なのだろうな。
カトリーヌ達と研究室に行くと、幾らかは動かしていたが、まだまだだ。
カトリーヌに聞きながら動かし、アーシャ達の意見も聞いて工夫する。
作業台は長く2列程度。そこに条件を変えて加工した物とする前の者とを並べて
人目で誰でも分かる様に並んで行く流れらしい。
カトリーヌは頭がいいのか、研究に向くのか、中々に段取りと言うか要領がいいし発想もいい。
この上に加熱器や瓶の入れ物等を置いて行くのだな。
部屋の反対側には、糸の巻取り機や織り機を設置。これは繊維が出来てからだな。
綿花と機械が有る。此れで解して使うのか。綿と殻と種だな。
配置は此処までだから次は作る物だな。
カトリーヌが紙に書いて説明してくれた容器を金属で作る。
触媒の魔石を取り出してイメージを固めて錬金で作る。どうだ?良いか?
取り付ける小さな部品もバラで一気に全数を錬金して取り付けていく。こんな感じか?
ガラス容器も変わった形なので俺が作る事にした。
種類毎に各10個づつ。変わってるな?どう使うのだろうか。
濾過機。濾過する為だとは思うが使い方や濾過する物で形状や濾過過程は変えるよな。
これも書いて貰って説明してくれた。ふむ。
やはり頭が良いな。発送が凄い。
妻達も出来上がった物や並んでいく実験機材を見て唸っている。俺も同感だ。
ははあ、これで濾過か。実際に遣る所を見せて貰おう。楽しみだ。
3時過ぎなので休憩を入れる事にした。
この研究室の隣に応接セットを置いて控え室にしてある。
「う~ん、お茶が上手い。ジェシカは流石だな。カトリーヌの発想は凄いな!驚いた」
「そうですわね。技術的な事が分かりませんから頼もしいですね」
「実家も少し大き目だったけど、似た物とかもあるのかしら?」
「やっぱり古くて小さいし自分がこうだったらって、思う物を頼みました。
小さい頃から綿業の合間に工夫してましたから。なので糸は詳しいです。
畑の方は役に立たないので、加工は良くやってましたし」
「カトリーヌが元気になって良かったわぁ。一時はどうなる事かと」
「旦那様のお裁きで安心ですね」
「カトリーヌ。地元の村も俺の領地になったから、代官でジェームズ達が行く。
母親にも少し支援をしておいたし、王都に来たければ助けるから考えろと伝えた。
だから心配事は何も無いぞ」
「はい。皆さん、有難う御座います。私幸せです」
それからソフィアから、領内の事を聞いたりした。
少しづつだが、皆で詳しくなっていかないとな。自領の事だ。
運営の事は義母殿が良いだろう。ジェームズの助けになる筈だ。
休憩が終わって、皆が綿花や器具をつついている間に装備だな。
基本は革鎧だが、どうするかな。
最初は体験だし着け慣れててもいないから、最低限にしよう。
動き難いだろうし、身体も痛いからな。
冒険中に着てても良い可愛い服を選んで貰う。
ブーツにグリーブとポリンを一体化させる。フォールズと一体の膝上スカート。
これで長パンツを穿けば良いだろう。
上は普通に長袖の上にブレストプレート、左腕だけリヤ―ブレイスとバンブレース。
手はグローブで良いだろうしな。
この上からマントを羽織ればいいか。では一気に作ろう!
全て革製にした。金属が入ると重くなるしな。
その代わりに革はドラゴン製だから、強力な魔法攻撃も跳ね返すぞ。
勿論ローブもドラゴンの物を使った。これなら安心だな。
熟達の具合を見ながら上級向けに作り替えれば良い。
スコップと短剣はこの前のベルトセットが有るし、弓と矢も時空術に入ってる。
カトリーヌに装着して貰う。裸になる必要も無いし楽だ。
「どうだ?動き難いとか痛い所は無いか?」
「う~ん?大丈夫です。胸が少し苦しいです」
「少し大き目にするか――――これでどうだ?」
「あ、大丈夫です!有難う御座います。すごい~」
「カトリーヌは大丈夫?怖く無い?」
「怖いです。でも、仲間も冒険者の人も居るし、御当主さまが居るから大丈夫です」
「怪我をしない様にね?」
「明日は午前中に商会に行って、昼から少し学校に行く。その後は屋敷に帰るから
カトリーヌの弓と魔法を見てみる。最初の2回は体験だしな。だが、とどめは刺させる。
余程の事が無い限り問題無い」
「余程の事とは………」
「ん?ゴブリンやコボルトが異常繁殖で大量に出て来るとか、オークが群れで出て来るとかだな。あそこは出てもトロールが偶に出る程度だから」
「旦那様、それって随分な事態では……」
「俺が居るから問題無い。ミルの森は王都から1日の距離だから常時討伐依頼が出ているし、定期的に中央軍も鍛錬兼ねて出動しているから」
食堂に移動して、皆で食事をした。
ジェシカは少し慣れないのか、不安気な感じだったが。
風呂も結局全員で入った。
カトリーヌが恥ずかしがったのだが、今更と言うか、
アーシャ達に押し切られる感じで、真っ赤になって隠しながら入って来た。
俺が身体を洗ってやると、少しは慣れたようだったな。
寝る迄は俺の寝室に有るソファーに座って雑談の時間だ。
皆、好きな物を飲む。俺はラガーの樽を置いたので、グラスに出し、魔法で冷やす。
ん~うまい!やはり作って正解だったな。
皆が欲しそうに見ているので、其々冷やして渡す。どうだ?
「うわ~おいしいです!」
「ええ。本当にね!」
「旦那様!これは大売れ間違い無しですわ!」
「流石は旦那様です。癖になりそうです」
「…………」こくん
「はい!これを売り出しているなんて自慢ですね!」
6人の女性達はいい気分になってらっしゃるようです。
なので、全員が俺にしがみ着いて寝る。と言う技を編み出したようでして。
おやすみ。
夜が過ぎれば朝が来る。いつも通りだな。
ん?ジェシカが居ないぞ?衣装室を覗いてみると
「きゃっ…………驚きました。おはようございます。あの、つまみ食い、されますか?」
下着姿でもじもじしながら胸に寄り添って来た。
ガウンを脱いでジェシカに掛けて、抱き寄せて口付けを交わす。
彼女が満足するまで好きにさせた。
お互いに服を着て、自室の居間のソファーでお茶を飲んでいるとカトリーヌが起きて来た。
やはりカトリーヌは普段から早起きなのだな。
「おはようございます」
「「おはよう」ございます、カトリーヌさん」
自分でちゃっちゃとお茶を入れて飲み始めた。農村の娘は逞しい。
「カトリーヌは朝が早いのだな?」
「はい。田舎は明りも節約なので、日の出日の入りで生活するんです。流石に寝るのは早過ぎですけど」
「どうしていたのだ?」
「月明りで本を読んだりですけど、綿花からは油も取れるんです。だから少しづつ使ってました。このお屋敷は凄いです!火を使わなくても灯りが取れるし、お風呂も何時でもお湯だし」
「ああ、魔力を使ってな。厨房もそうだ。火を使わない。魔法が行使出来なくとも、微弱な魔力を持つ者なら大勢居るからな」
「私も最初は驚きました。どうなっているのか不思議で」
2人には、少しだけ技術的な説明をしておいた。
見回りと鍛錬が有る。そろそろ行こう。
「「あ、私も」」
「2人共、朝位ゆっくりしろ。出迎えてくれればいい。2人で話しをするなり、ノンビリしてろ」
「…………はい。では、中庭で」
本館と別館を回り、林沿いに歩きながらユニコ達やバハムートに挨拶をして
中庭に戻ってジャケットを脱ぎ、魔法剣を2本抜き出し振る!
20分振ってソウルイーターに持ち替える。
空気を切る!音すら切る!世界すら切る!
「っ!!!危ない!…………本当に、世界すら切りそうな感覚だった…………今のはなんだ。
今日は削がれたな。お終いにしよう」
振り返るとジェシカとカトリーヌが座って見ていた。
「見蕩れてしまいました」
「最後の…………なんだか全てが、終わりそう。でした」
ジェシカが拭いてくれカトリーヌがそんな事を言っていた。
あの感覚が感じ取れたのか。
最近、学校や商会、カトリーヌの事と領地の事でバタバタだな。
ここは一つ投げ出すか。
「風呂に行く」
「お流し致します」
「わわ、私も!やあ、やっぱり待ってます」
2人で入り、ジェシカに流して貰う。
湯に浸かると抱き着いて来るので、彼女の形の良い大きな胸がつぶれる。
そのまま口付けを貪ってくるので…………
スーツを着せて整えてくれるので、ジェシカの髪の毛を乾かしてドレスを着るのを手伝う。
居間では妻達とカトリーヌが談笑していた。
「明日は皆で出掛けよう。甘味巡りでも買い物でも演劇でも。女性陣で決めてくれ。息抜きだ」
「本当ですか旦那様!嬉しいです!」
「ええ、最近色々とありましたから」
《旦那様となら何処でも!》
「うわ!初めてのお出掛けですわ」
「嬉しいです。どこが良いでしょう………」
「お出掛け出来るなんて。楽しみです!」
そんなに喜んでくれるか。提案して良かった。
彼女達はどうしても、先日みたいな事が無いと貴族女性は屋敷にこもり気味になるからな。
最近はお茶会も少ないし。学校の生徒のアネッサとエイミィは呼んでも問題無さそうだがメルルは平民だから、後々メルル自身が嫌がらせを受けるか?
アーノルドも呼んで、奴は騎士団と鍛錬させれば呼んでも問題無さそうだな。
宮廷魔術師も女性はイエネッタだけだしな。
俺ももう少し貴族と交流した方が良いと言う事か………とほほ。
朝食の時も女性陣は明日の事で盛り上がっていた。平和で良い事か。
ジェシカと2人、馬車に乗り商会へ向かう。
車内ではご機嫌なジェシカが腕を絡めて手を繋いでくる。
「「「「おはよう御座います」」義兄上」御当主様」
「おはよう皆」
「御当主様、父は5日後の出立に決めたようです」
「分かった。屋敷からの連中とケーニッヒ家は合わせる様に伝える。要塞馬車を出すか?いや、悪いが不便でも隊列を組んで周囲にも周知させた方が良いな。馬車と荷馬車の必要台数は明日伝えさせる」
「畏まりました」
「セバス、休みは週に2日は取るようにな。休み方は任せるから前日事務員に伝えろ」
「はい!義兄上!あ、数日中に林檎のお酒も本格稼働を始めるって、父上が」
「そうか。助かると伝えてくれ。その内に、見学に行こう」
「はい!」
「君達は派遣だが、ウチに就職する気は有るか?」
「「はい!願っても無いです!」」
「う、そうか、助かる。交代勤務にしたいから、希望者が居れば2人程声を掛けてくれるか?商業ギルドとは、俺が話を付ける」
「分かりました。人選致します」
「宜しくお願い致します。」
昼迄は通常業務で問題無く過ごした。
今日も全員でレストランに昼食に行き、お任せを頼む。
大きな海老を使ったグラタンにパンとサラダだ。ラガービールを頼む。
「ウチの商品を飲まないとな!うむ、海老も美味い」
「同じ物にしましたが、美味しいですわ」
「サラダの野菜も新鮮ですし」
「このフィレ肉も美味しいです!」
「そうですね。魚も美味いし、この店腕が良いです」
「パスカル様はダイアナには?」
「え?いや!そ、まだ。ですが………」
「一言お声を掛けられた方が。彼女も喜ぶと思います」
「なんだ?スパっと行けんのか?」
「いえ、その、自信が有りませんので」
「パスカル様はニルヴァーナ家の一番の重臣、アルゼンヒュット子爵家の嫡男ですから、今後は女性から引く手数多です。そんな方に見初められて嫌な女性は居りませんわ」
「そうですね。パスカル様はカッコイイし私が立候補したい位ですよ?」
「英雄様と聖女様の重臣なんて、憧れの的です!あ、ボルドー家も人気高いですよセバス様!」
「そうなのですか。自身が………」
「僕、今年成人の未熟者です」
「無理にとは言わんが頑張ってみろ。後悔するより良いだろう」
「はい…………頑張ってみます」
消極的なパスカルを見て思った。巷で言う”草食系”がこれか。
セバスも似てる感じなんだよなぁ。こいつら大丈夫かな?
いらん心配をしつつ、ジェシカと馬車に乗りギルドへ行く。学校は休みだからな。
ギルドに入り受付嬢のクリスタに取り次ぎを頼み、ダンカンの執務室へ向かう。
「よう!どした!美人連れて羨ましいな!ガッハッハッハ」
「いいだろ。あんたの強面を見に来た」
「ああ、いいな!で、相談か?」
事前に大筋では決めてはいたが、初めてだから色々と確認にきたのだ。
どの道掛かるモノは掛かるのだから、1期を通して収支を見るしか無いのだが。
節約は必要だ。しかし足りなくても困る。命に係わる事だしな。
此れからは2週に一度、討伐は有るので、日持ちする物は商会で大量に買い付ける事にした。
「冒険者は?銀と銅で1づつだな。え~っと、
銀クラスはパーティー”野生の狼”で銅クラスはパーティー”草原の風”だな。荷馬車4台だ」
「分かった。済まんな」
「俺は指示だけだ。やるのは事務方」
物資関係と随行冒険者の話をして終わりにした。
カトリーヌの指導。と言うか確認がしたい。
ジェシカと屋敷に戻り、別館の研究室に行くと隣から声が聞こえる。
「ただいま。お茶してたんだね。ん?ソフィアは?」
「おかえりなさいませ、旦那様。ソフィアさんは御母上とジェームズに領地の勉強会ですわ」
「お疲れ様でした」
「…………」こくん
「ああ、頼もうと思っていたんだ。気が利いて助かる」
「旦那様もジェシカもお茶にしましょう」
助かる。現地での予備知識は大切だからな。
俺も参加したい位なのだが、カトリーヌの確認と練習は体験まで時間が無いから必須だし。
商会もパスカルは抜けてセバスが見習い。放ってはおけないからな。
明日は久々に妻達との時間だし。
学校の事ももう少し目を掛けたいのが本音だ。
いや、任せた方が良いのか?どの道、実地や鍛錬は見に行くのだし……
この後は地下の訓練所に行こう。




