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W・M・S (Warlock Magus System)  作者: 渡野さら
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第14話 凱旋

 


 あの後、最後迄したのだがアーシャの体調が気になって眠らなかった。

 勿論、治癒魔法を最中も終わった後も掛けたのだが、元々、体調が悪いのもあったので本当はまだ先にしたかったのだ。

 今は静かな寝息を立てて、俺の左側で寝ている。

 この女性を妻にするんだよな。守らなくては。



 作業ズボンにタンクトップで宿の中庭に行き、ソウルイーターを振る。

 20分で辞めて次の20分ショートソードの魔法剣を振る。

 疲れはしないが、汗は出るし身体も動かせたので、風呂に汗を流しに行く。


 部屋に戻って寝室を覗くと布団がモゾモゾ動いている?

 近付いてみると、アーシャが泣きそうな顔で布団を弄っていた。



「旦那様!寂しくて泣きそうでしたわ!」

「ああ、おはよアーシャ。ごめんな?身体はどうだい?」

「せっかく結ばれたのですから、朝も居て欲しいのです……」

「あ、すまん!ほら、好きなだけ抱き締めてあげるから」

「ぅぅ…寂しかったのですぅ」


 暫くは胸にしがみ付いているアーシャを抱き締めていたが、アーシャもシャワーを浴びたいと言うのでテントの中に連れて行き、一緒に入った。

 やはり恥ずかしそうにしていたが、嬉しそうな笑顔だったので正解だったのだろう。


 身体を拭いて下着を着けている間に、アーシャの髪の毛を乾かして司祭服を着せた。

 神道女達も部屋に入って来て、アーシャの服や髪の毛を整えて化粧を施す。


 朝食が運ばれて来て、朝食が始まる。

 朝から良い食材を使うとは思ったが、和やかに雑談をしているので口には出さなかった。


 8時に出発。快調に走り10時に休憩。

 13時にナーゲンの街に到着し手厚い歓迎を受けて町長の館で昼食。

 兵士達は街の外のテントに食事が用意され、馬も水と飼葉をあたえ世話をして貰った。




 小休止無しで18時、ナーゲンブルクに到着した。

 都市は歓迎ムードで代官が挨拶。ここは王都に隣接した都市で、王家直轄領になるので街の規模も大きいし、歓迎の為の人だかりが凄い事になっている。

 軍の兵士達は昨日に続き、街の防壁の外に大規模陣地が設営され不自由無く持て成されている。


 俺達、宮廷魔術師達、将軍と師団長までは領主館に案内された。



「ようこそお出で下さいました英雄さま、聖女様、皆々様方。

 今回の討伐、見事に討ち果たしお疲れ様でございます。

 私、エリダヌス様よりこの地の代官を任されております、ディスバルデ男爵で御座います。

 先ずは湯殿で疲れを癒して頂き、お食事のご用意をさせて頂きます。

 では、皆の者、お部屋と浴場へご案内を」


「忝い。厚遇感謝します」

「うむ。男爵殿も大変ですな。宜しく頼む」



 其々が挨拶をして部屋に案内される。

 軽くお茶を飲み、言葉を交わしてから浴場へ向かう。

 アーシャは入り口まで俺が抱いて連れて行き、後は神道女達に任せた。



 入浴後は着替えを宛がわれ、全員で食堂に。

 晩餐会では無く、夕食会。と言った感じの雰囲気だな。気楽で助かる。

 俺とアーシャが主賓扱いで並んで座るのは良いが、全員が武人、荒事専門の役職の連中だとアーシャが辛いかと思ったが、イエネッタが気を利かせてアーシャの隣に座ったお陰で場が崩れてアーシャの相手もしてくれるので助かった。



「しかし、身体が150メートルですか?凄まじい巨大さですな!よくぞ討伐してくださいました。王都も沸き返っております」

「大陸中探しても、同じ事を出来る者など居らんでの。聖女殿の聖障壁も人の範囲を超えとるのじゃ」

「そうだな。剣技だけなら俺も近い事が出来るが邪竜は倒せん!凄まじき剣圧と魔力よな」

「そうね。長期戦を考えていたけど、あれだけ短時間で決着が着いたのはアーシャ様の奮闘よ!」

「いえ、私など、そんな。旦那様のお陰ですから…」

「この控え目で慎ましく、でも芯の強さ!で美人なんて、これから王都の女性には憧れの的かも!」

「さすがにそれはぁ―――言い過ぎでは……」


 その後もアーシャは褒め殺しに会い、恥ずかしそうにしたまま歓談が終わって解散した。

 寝間着に着替えるのは神道女達が手伝い、ベッドに入った。

 実際、アーシャは凄いと思ったんだが、実はとんでもない存在かも知れない。事実、母さんが選んだのだし、戦いに身を投じた事。俺や母さんの存在をスンナリ受け入れた事。俺との結婚もあっさり決めたし、あの霊力、精神力、魔力は普通の人間族では考えられない程だ。

 まあ、アーシャが何であっても構わないのだが。

 少し眠ってみるか………




 朝5時に目覚める。

 左側で眠るアーシャに異変は無い。ステータスを見ても睡眠深度はまだ深い。

 顔を洗って服を着替えてから館の中庭に出て、鍛錬を開始する。

 夜中の警護や使用人、早起きの連中が見物人よろしく集まっている。見世物では無いのだが、、立場上仕方ないと割り切ろう。

 此れからは、こういった事が増えて行くのだろうし、役割と思えばどうも無い。

 力の有る者は、振るう権利と守る義務が付き纏うのものだ。

 師匠の教えにも女子供は守れ、弱者を守れと有ったしな。最近は強い女性も居るが………


 ソウルイーターを時空術に納めて一息吐く。すると、周囲から拍手や歓声が沸いた。

 いや、そう言うのでは無い。無いんだ………メイド達等は深くお辞儀をしている?いや、厳つい兵士達に熱い視線を送られてもな。

 仕方なく笑顔を振り撒いておく。印象は大事だ。



 部屋に戻るとアーシャは居間で、入れて貰ったお茶を飲んでいる所だった。

 挨拶しながら神道女が俺にも出してくれる。


「おはようございます、旦那様。鍛錬お疲れ様です。朝の湯浴みをしたいのですが、旦那様と入りたいのですが………」


「おはよう、アーシャ。構わないよ、お茶を飲んだら入ろう。朝の体調は良さそうだね」


「上手く身体が動かせない以外は大丈夫です。ここから中庭の様子が見れまして、その、見蕩れてしまいました」


「見世物の様になってしまったが、此れからは仕方ないのだろうな」


 一緒に風呂に入り、支えながらアーシャの身体を流す。

 何やら接触と言うか密着と言うか、何か有ったのかと思ったが、機嫌は良いのでされるままに任せた。

 アーシャの肌は本当にきめ細かく滑らかで綺麗なので、触るのも注意が必要だ。

 身体を拭いて下着を身に着けている間に髪の毛を乾かしておく。後は神道女がやってくれるし任せよう。



 食堂に昨晩のメンバーで集まり、予定の確認をしながら朝食を摂る。


 出発は8時30分、11時に街道脇で小休止、軽食が弁当として用意されている。

 そこで俺が持ち帰っている邪竜の頭を平積みの台車に乗せて見える様に引く。

 俺達の馬車も屋根を外して顔が見える馬車にする予定だ。

 王都到着は13時の予定。そのまま商業区の環状大通りを1周して城に入り謁見の間にて、勲章の授与とその他の褒章が目録にて渡される。

 晩はそのまま王宮で舞踏会が開かれ、これに参加。この舞踏会は貴族なら誰でも参加が許されるのと、創神教は枢機卿まで参加するらしい。

 物凄い人数になるな……アーシャの傍に居て守らなければな。





 道中は問題無く進み、漸く王都の防壁や周囲の川が間近に見えて来た。

 ん?防壁の外も大量に人が居るぞ?近隣の町から集まって来たのか?

 アーシャは少なからず緊張している様子だ。手を握って落ち着かせないとな。なるべく笑顔で。

 恐ければ俺が抱いてても良いしな。と思っていたら、アーシャの方から身を寄せてきたので、左腕を腰に回して安心させる。

 いよいよ群衆の中に入って大正門を抜けると歓声が凄い。アーシャと神道女はそれどころではなさそうなので、俺は一応、手を振っておく。

「魔人様!聖女様!ありがとー!!」

「聖女様、創世神様ぁ!!」

「やっぱ魔人はすげ~ぜ!」

「聖女様~こっち向いて~!」

「魔人さまー結婚してー」

「魔人のおかげだー!魔人ばんざ~い!ばんざ~い!」


 若い女の媚を売る視線が酷い……老人が土下座している?危ないぞ!子供!跳ねるな!走るな!

 警備の騎士達も大変だな。俺達も暫くは馬車移動でないとまずそうだな……

「巨大な竜の頭だ!!!」

「アレを倒したのか!?」

「魔人様は凄い!!」

「どんだけデカい竜だったんだ!?」


 やはり邪竜の頭は見える様にして正解だな。強く印象に残る。

 アーシャ達も大分取り戻して手を振っている。俺が左腕で少し強く抱き締めると、此方を見てにっこりと笑顔になる。

 それを見て観衆の声が更に大きくなる。こう言う印象操作も必要だろう。


「アーシャ、大変だろうがもう少しだ。大丈夫か?城に入ったら治癒を掛けるから頑張れ」

「はい、頑張ります旦那様」


 向かいに座る神道女達も微笑ましそうにアーシャを見ている。

 彼女達はアーシャに悪感情を持っていないので助かる。




 大観衆に埋め尽くされた商業区を無事に1周して、漸く貴族街に。ここはやはり落ち着いていてアーシャも一安心したようだ。

 そのまま王宮の正門を抜けて中に到着し、徒歩で王宮内を進む事になる。


 そこで、俺を呼ぶ声に気付く。



 …………だん……さ…………旦那様…………?






 ストラスバルト王国歴 685年

 王都 ストラスブルク貴族街 ニルヴァーナ邸 現在



「旦那様?懐かしい想い出ですわね?」

「ああ、そうだね」


「お館様と奥様の出会いって劇的なんですねぇ。あこがれますぅ」

「私もパレードは見に行って手を振ったんです!お館様がカッコ良くって!」

「だよね!興奮しました!」

「私も私も!こうして今はお仕え出来るなんて!」


「はいはい、貴方達。休憩はそこ迄にして仕事の続き!さあ!さあ!…………申し訳有りませんお館様、奥様。あの娘達ったらまったく――」



「いや、構わない。君達は家族のようなモノだからな」

「そうよマリアンヌ。気にする事は無いのよ?」

「私とソニアさんは元々町娘ですしね」

「………」コクン


「今は奥様なのですから、お仕えするお方です。本日ですが、お館様はこの後学校の方へ、奥様方はボルドー夫人と林の教会でお食事会、他はジェームズ氏が明日一杯迄は商会に詰めるとの事です」


「やはりジェームズの負担が大きいよな、家令スチュアートでも有るし。この際、マリアンヌを女家令スチュアーデスとした方が良いか?少し考えるか。じゃ、俺は出る」


 俺が立ち上がると、3人の妻と侍女達と侍女長のマリアンヌが連れ立って居間を出る。

 廊下で作業をしていたメイド達も脇で頭を下げて、玄関ホールまで着いて来る。


「「「「「「「行ってらっしゃいませ」」」」」」」



 待機していた馬車に乗り屋敷を出る。

 貴族街をゆっくりと抜けて行く。すれ違う馬車からは貴族子女が手を振って来るので応えるのも忘れない。

 馬車の家紋を見れば誰でもが乗っているのは分かるのだしな。

 貴族街を抜ければ商業区だ。ここに冒険者準備学校が有る。

 俺が発案、出資、建築手配等を行って建てたのだ。ギルマスのダンカンは一応校長を兼務して貰ってる。

 この春から1期の入学で開校したばかりの手探りの状態だ。

 入学は春と秋の年2回で、受講期間は最大で1年。

 入学金は金貨3枚の低価格で分割や免除申請の制度も作った。当然それでは維持出来ないので、金を集めるシステムに苦労した。

 俺の莫大な資産が有れば問題無いのだが、健全では無いからな。


 学校の敷地に入り、馬車を降りて教員棟に入った。





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