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W・M・S (Warlock Magus System)  作者: 渡野さら
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第13話 アーシャ6

 


 目覚めると朝5時。


 アーシャは俺の左側に抱き着いて、腕を枕に幸せそうに眠っている。

 右手でアーシャの頭を撫でながら、起きるか起きないか考えたが起きる事にした。


 そっとベッドから起き出して、身支度を整えて外に出る。

 護衛の神殿騎士達が俺に気付く。


「おはようございます、魔人様!」


「ああ、ご苦労様」


 日課だった鍛錬も今日から再開だ。先ずはソウルイーターで。次に魔法剣で。

 2種類を振り終わり、鞘に納めて一息つくと、周りに神殿騎士だけでなく、当番で警邏中の軍の連中までが集まって見学していて、一斉に拍手が起こった。

 いや、見世物では無いんだがな……まぁ、仕方ないのか。


「流石ですな!見事な剣筋と冴え!」

「稽古を付けて頂きたいです!」

「今度、軍にも教官で!」

「神殿でも定期訓練を!」


「あ、ああ、考えておこう。」



 時間は6時30分、シャワーを浴びるか。

 テントに入り、時空術から着替えを出して浴場に行く。


 身体を拭いて皮パンと黒シャツに着替えてから、昨日の物も含めて洗濯をする。

 それぞれ乾かした物を棚に入れて終わりだ。


 厨房に行き朝食の用意をする。

 棒パンを輪切りにスライスする。小魚、小エビ、魚卵でパテを作る。

 茹で卵のスライスと果物のサラダ。後はお茶でいいか。


 寝室に行きアーシャを見る。眠っている姿も綺麗だと思う。

 ベッドの端に腰掛け、彼女の右手を握る。そうして起きるのを待とう。



「ぁ―――だんなさま」


「おはよう、アーシャ。気分は悪くないか?」


「はぃ、大丈夫です。眠ってないのですか?」

「いや、一緒に寝た。朝の鍛錬やら色々していたからな」


「そう、なのですか。眠ってばかりで、すみません」

「仕方無いだろう。身体が言う事を聞かないのだからな。無理をすれば治りが遅いぞ?」


「はい―――我慢します」


 サイドテーブルにポットとカップを2組出してお茶を注ぐ。

「さ、一緒に飲もう。ゆっくりな」


 鍛錬の事を聞いてきたので2種の刀と剣を説明して、連中が集まって朝から騒動だったと教えた。


「まぁ、そのような事に?旦那様は武人にとって尊敬の対象なのですね」


「此れからは暇を見て剣術や武術の講師なども行った方が良いのかも知れないな」


 洗面器に湯を入れてタオルと一緒に持って来た。

 顔を洗って隣の鏡台を置いた衣装部屋に連れて行き着替えを手伝ってからテーブルセットの椅子に座らせて紅茶を出し、厨房に行く。

 着替えはやはり恥ずかしいのか真っ赤になっていたが我慢してくれ。怪我をされても困るから。

 背中の真っ白で綺麗な肌と絹の様な長い金髪が、とても美しかった。


 輪切りしたパンに各パテを塗って焼く。それだけだ。

 テーブルに朝食を並べて、感想を聞きながら一緒に食べる。

 中々好評だった。だがやはりコックに任せたいものだ。


 食べ終わってノンビリとソファーで寛ぐ。

 気にしている様子なので、抱き寄せて撫でながら話した。

 今暫くは仕方無いと。それに王都に戻れば侍女やメイドも居る。

 2人で仲良くする為の時間だと思って割り切れ。俺もそうだと伝えた。

 ハッとなって思い至ったのか笑顔になった。どうやら間違えてなかったようだな。




 今日は創神教の司祭服に着替えて化粧もしている。

 昔使っていた予備のコートを掛ける。外気を遮断して保温効果が有るからアーシャにはちょうどいい。

 抱き上げてテントを出る。

 今日は護衛の神殿騎士を伴って各ギルドが詰める仮りの事務所に行く。


 建物に近付くにつれ、周囲に人が増えて行く。アーシャを見たいのだろう。

 この場に女性が珍しいと言うのも有るが、やはり『あれが聖女か』と言った心理が大きいのだろう。



 ダンカンが近付いて来て声を掛けてくる。


「ようメル!聖女様同伴とはヤルじゃねーか!」


「ああ、おはようダンカン。アーシャ、このオッサンが王都の冒険者ギルド所長、ダンカンだ」


「これは聖女様、ダンカン・グッドスピードです。お見知りおきを」


「宜しくお願い致します、グッドスピード様。アーシャ・フォン・ボルドーです。これから御世話になると思います」



「いえ、こちらこそ。お具合は如何ですかな?ご無理はいけません。冒険者の生きる鉄則です」


「はい。旦那様のお陰で。経験に基づいてらっしゃるのですね?胸に刻んでおきます」


「は?いや失礼。メルツエリンと婚約でも?」


「ええ。凱旋後直ぐに婚姻を」


「急がれますな。中へどうぞ」



 殺風景で簡素な事務所に入り腰を下ろす。

 既に事務員が1人居て、お茶を出してくれた。見た顔の受付嬢だな。


「実は国から爵位の打診が来てな。訳有って受ける事にした。それで諸々の事情でアーシャとの結婚も急ぐ必要が有る。ターニャの件も悪いが頼む」


「そうか、メルがな。ターニャの件は大丈夫だ。あいつが幸せなら問題無い」


「勿論だ。俺もアーシャも泣かせるつもりは無い。爵位も俺達以外の周囲の為に受ける事にした。それから、アーシャは諸々が落ち着いたら冒険者登録をしておきたい」


「お前も、聖女様も、、大変だな。まあ、力にはなる。聖女様の登録だが――――金クラスでいいか?」


「いいも何もギルドが主導で決める事だろ?」


「そりゃそうだが、一応な。特例だしよ」


「宜しいのですか?」


「構わんです。邪竜討伐とメルのパートナーって事で。そもそも、あの討伐は誰にも出来んのですよ。宮廷魔術師であってもね。自信を持って下さい」


「そう言う事だよアーシャ。まあ、今日は顔見せと気分転換も兼ねて確認だ」



 そんな感じに話も進んで、魔術師ギルドにも挨拶してから現場を一回りしてテントに戻った。





 戻ってから、アーシャがワンピースに着替えるのを手伝ってから昼食の準備を。

 軽いモノが希望だったのでサンドイッチにした。

 具は肉と野菜、卵、果物。小さくカットして食べやすくしておいた。


 向かい合って雑談しながら食事をする。

 なんだろう?こうしていると、何年もアーシャとは一緒に居る気がしてくる。不思議なモノだな。

 運命を感じる。と、アーシャが行っていたが、そんな気になる。

 母さんは知ってて引き合わせた。この先も知ってる。はずだよな。なら、運命かもな。


「旦那様?どうされたのですか?」


「ああ―――アーシャと出会えて良かった。と思っていた」


「あの、わ、あ、私も!です。しあわせです」



 午後はテントで休ませる為に冒険者の話を聞かせた。

 ギルドのシステム、役割、俺のスタイル、主な依頼内容と過ごし方。

 此れからは今までとは少し違う形になると思われるので、クラスの依頼は略無いので下級クラスの仕事もこなしながらアーシャに実地で色々と教えて行く。など。

 暫くはこの陣地とベルンでの活動になるし、体調が先決なのでボチボチ進める事になるだろう。



 夕食前に1人で見廻りをしてから食事にした。

 食後は一緒に風呂に入ったのだが、終始恥ずかしさで身体まで真っ赤だった。


 風呂の後はアーシャの髪の毛を乾かしたり、お茶を飲んで過ごした。

 明日は昼には凱旋の為に出発する予定だから、早目に寝ておくのが良いだろう。







 目覚めると朝5時だった。

 アーシャが抱き付いているからおきるのは待っていると1時間程で目覚めた様だ。

 目が合うと、抱き付いているのに恥ずかしそうにして微笑んで居る。可愛いらしい人だ。

 どうも、直ぐに起き出す気配が無い。どうやらベッドで少し戯れたい様子だ。

 まあ、アーシャの好きにさせてみた。みたがキリが無くなりそうなので起き出して紅茶を出した。



 昼食を食べ終わった位で馬車と共に護衛が迎えに来た

 全員女性の神殿騎士と、身の周りの世話をする神道女の女官だった。女官と共に馬車に乗り、周囲を女性の騎士が固める。その周りが騎士団になる。

 先頭は軍が固めて進む。クレーターの外輪の一部を崩した場所からセレスト平原に進み本営陣地に合流して、大部分の軍、将軍達と王都へ向けて出発する。


 夕方には最寄りの町へ到着するから宿の心配は無い。女官も居る。

 だが、アーシャは不安そうな顔が目立つ。俺にはその不安は分からない。

 だが、手を握る位は出来る。俺に身体を預けて、漸く安堵の表情に変わる。



 予定通りに夕刻にはマルメの町に到着した。

 街の外には既に兵士達の野営の準備が整っていて、食事の煮炊きの煙が上がっている。

 俺達や宮廷魔術師、将軍達の幹部は街の高級宿へ。他の役職持ちも其々宿に案内される。

 町長と代官が将軍とイッツェハーフェンの爺さんに挨拶をしていたが、俺とアーシャは最重要警護対象なのでそのまま宿の部屋に通される。

 俺が居る時点で誰も必要無いのだが、ま、形式と言うやつだ。



 俺とアーシャは同じ部屋だった。リビングが共有で寝室が別に2つ付いている。

 今、この部屋には俺とアーシャ、神道女官、イッツェハーフェンとイエネッタ、ビスマール将軍が居る。


「此処までは予定通りじゃの。順調なら明後日の午後には王都じゃな」

「うむ。明日宿泊予定のナーゲンブルクでも既に準備は整っているしな。問題無かろう」

「そうね。アーシャ様は疲れました?軍馬は早い分、揺れますから」

「少し疲れましたが早いのに驚きましたわ。今日は早目に就寝致します」

「そうだな。少し辛そうだった。明日も1日馬車だしな」


 その後は皆で夕食を摂り、ボルドー産のワインを飲みながら歓談して解散した。


 俺は居間の一角にテントを出して、アーシャの世話掛かりの神道女達も中に入れて風呂の世話を頼んだ。

 ついでに皆が入れば手間も要らないしな。

 やはりと言うか、寝るのは一つのベッドだと主張してきた。断る理由も無いので一緒のベッドに横になる。恥ずかしそうに、左腕に抱き着いている。




「あの………いつでしょうか……」


「ん?何がだい?」



「そのっ、手を付けて頂くのは……」


「まだ婚約もしていないしな。貴族院に結婚の届け出を出してからか?」



「ソニアさんとターニャさんは……」

「いや、ソニアは身寄りも居ないし理由がな。ターニャは裕福な家だが町娘だし、アイツから飛び込んで来た経緯も有る。アーシャは伯爵令嬢で俺も貴族位を受けるのだから婚前交渉は不味いのではないか?」


「そ、そうかも知れませんけど、でも、あの………」


「俺の屋敷に戻ってからでは駄目なのか?まだ体調も不安定だし」



「あ、焦っている訳では無いのですが………何だか、抱いて頂かないと、落ち着かないと言いますか―――いえ、やっぱり可愛がって欲しいのだと思います。取り残された様で、何だか不安が………」




 貴族だ何だ、体調が、と理由を付けても早ければ数日後には押し切られる内容の事だし、ソニアとターニャは既に関係済みなのだ。

 理由にも言い訳にもならないし、本人がそれで安心だ、と言うならそうするべきか?


 悩みつつも、アーシャを抱き寄せてそっと口付けをする。

 何度も優しく。


 徐々に慣れて来たのか自分から求め始めたので応えながら体調も見る事にする。

 今は悩むより、アーシャの事だけに集中しよう………



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