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eye  作者: いるか
3/10

彼は、私と同じクラスの人間だった。

おそらく、小学校から一緒で、家も割りと近かった記憶がある。

そして、私の大好きな、真っ黒のすんだ瞳を持っているひとだった。


彼(厳密に言えば、彼の目ということになる)は私の理想そのものだった。

日本人は、黒といっても、焦げ茶色や茶色の光彩の人が多いのだけれど、彼のは真っ黒といって差し支えなかった。黒ければ黒いほど、光を受けて輝きを増す。泣かなくても常時潤んだように見える瞳は、なかなかに官能的だった。


彼は、私を好きだといった。


小学校の頃からずっと、と付け足した。


私は首をかしげた。


目のことは好きでも、人のことに興味がなかった私は、人を好きになる、人に好きになられる、ということが理解できなかった。


彼は、つきあってください。と小さな声で締めた。


やっぱり、よくわからなかった。


だから、はい、とうなずいた。


最低だ。


それから彼と付き合うことになった。

人との関わりに興味がなかった私は、友達と、恋人との境界線をどう引けばいいか、決めかねていた。

付き合うことを了承したものの、付き合う、とは何かわからなかった。

けれど彼の目が美しいことだけは、私を納得させるほどの事実だった。


だから、まあいいか。と思ってしまった。


やはり最低だ。


彼と付き合いだしてした、恋人らしいこと(と世間一般で定義されているらしいこと)といえば、毎日一緒に帰るとか、週末に一緒に遊びにいくとか、友達とあまり変わりがないことだけだった。

手を繋ぐのも友達なら結構していたし、抱きつくことも友達とする。


やはり友達と恋人の境界線はガタガタで、私は早々に線引きすることを諦めた。

必要性も感じなかった。


彼はどうして私なんかを好きになったのだろう。

もっとかわいくて、(外見も内面も)彼のことを好きになってくれる女の子はいっぱいいるはずだ。

こんな、どこの馬の骨とも知れない、眼球フェチを好きになってしまった彼のことを不憫に思った。


それならば、私は彼をふるべきだったのだけれど、他人のことなど省みない私は、断る理由がない気がしたのだ。これは完璧に惰性だった。


ああ。最低だ。



意外にも、彼との仲は長く続いた。

彼と私は似たところが多かったからだ。

好きな本、好きな音楽、好きな漫画、好きな食べ物、嫌いな食べ物、何よりも大きかったのは、価値観が似ていたことだろう。

学力もほぼ一緒で、将来の夢も似たり寄ったりだった。

そうなると必然的に進学先も一緒になり。


気がつけば、彼と同じ高校に入学していて、気がつけば、彼と付き合って今年で4年目を迎えようとしていた。


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