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代筆屋の私が、なぜか自分を探す手紙を依頼されているのですが  作者: トークン
自分宛ての手紙を書きました

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7/14

第七話 「妹に相談しました」

「お姉様、また考え込んでいらっしゃいますね」


 屋敷の小さな食堂で、ミラがスープを差し出しながら言った。十六歳の妹は、姉のことをよく見ている。


「ええ、少しややこしい依頼があって」


「あの辺境伯様の件ですか」


「……どうしてわかるの」


「お姉様、辺境伯様の話をするとき、声がいつもより少し高くなります」


 レナータは咽せた。


「事実だけ話すわね」と、なんとか体勢を立て直した。「マクシミリアン様が探している手紙の書き手——おそらく、私なの」


 ミラがスプーンを止めた。


「お姉様」


「ええ」


「すぐにお伝えするべきです。『あの手紙、私が書きました』と」


 ミラの目は真っ直ぐだった。


「待って、それは——」


「お姉様、嘘をついている状態ですよね、今」


「嘘ではなくて」とレナータは口ごもった。「ただ、まだ確証が——」


「お姉様の控えが一致したのでしょう」


「……ええ」


「それは確証ではないですか」


 レナータは黙った。妹の正論に、返す言葉がない。


「でもね、ミラ」とレナータは言った。「代筆屋の正体は秘密なの。それが知られたら、もう商売ができない。今、私の代筆業が町で評判になっているのは、書き手が誰か分からないからでもあるのよ。匿名性が、価値の一部なの」


「それは、わかります」


「だから、辺境伯様にだけ正体を明かすわけにもいかない。明かしたら、彼が他で漏らさない保証もないし」


「辺境伯様、そんな方に見えますか?」とミラは静かに聞いた。


「……見えない、けれど」


「でも信用しきれないから、悩んでらっしゃるんですよね」


 レナータは頷くしかなかった。


「お姉様」とミラは続けた。「私、思うんですけど」


「何」


「その辺境伯様、お姉様のこと、気に入っているんじゃないですか?」


 レナータは咽せた。今度はスプーンが手から滑り落ちそうになるほどに。


「ち、違うわ。私はただの代筆屋として依頼を受けているだけで」


「毎日通ってらっしゃるんでしょう?」


「進捗確認のために——」


「進捗を確認するのに、毎日通う辺境伯様、いますか?」


 ミラの正論は、今夜も鋭かった。


「お姉様」とミラはスプーンを置いて言った。「気持ちが揺れているのは、お姉様の方だと思います。だから言い出せないのではないですか?」


 レナータは何も言えなかった。


 その夜、レナータは寝る前に控えをまた開いた。


 マクシミリアンが探しているのは、書き手の自分だ。


 ミラは、自分がマクシミリアンに惹かれていると言った。


 ——どちらも、正しいのかもしれない。


 怖かった。

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