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代筆屋の私が、なぜか自分を探す手紙を依頼されているのですが  作者: トークン
町外れの代筆屋です

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第五話「依頼主が毎日来るようになりました」

 マクシミリアンが手紙を受け取りに来た翌日から、奇妙な変化が起きた。


 彼が、毎日店に来るようになった。


「どうも」


「……今日も、いらっしゃるのですね」


「進捗確認だ」


「進捗、と言われましても、手紙はもう書きました」


「次の手紙を頼みたい」


「次、ですか」


「一通では届かないかもしれない。何通か出してみたい」


 レナータは内心で困惑したが、商売としては大歓迎だった。報酬三倍の依頼が、複数通になる。妹の冬服どころか、屋敷の暖炉の修理代も出るかもしれない。


「お受けします」


 しかしマクシミリアンは、依頼を出した後もすぐには帰らなかった。


「茶を、もらえるか」


「……茶ですか」


「頼む」


 レナータは慌てて店の奥から茶を出した。安物の茶葉だ。代筆屋の店で出す茶を、辺境伯が飲む光景は、どこから見てもおかしかった。


 マクシミリアンは何も言わずに茶を飲んだ。そして、店の隅にある古い椅子に座って、本を取り出した。


 帰る気配がなかった。


 数時間後、別の客が来た。新しい依頼だった。レナータは依頼主の話を聞き、メモを取り、ペンを走らせた。マクシミリアンは隅で本を読み続けていた。視線は感じない。でも、いる。


 依頼主が帰った後、レナータは思い切って聞いた。


「あの……何を、なさっているんですか」


「待っている」


「何を、ですか」


「君が仕事をする様子を見ていれば、書き手の手がかりが掴めるかもしれない」


「それは——理屈は通っていますが」


「迷惑か」


「迷惑ではないです」とレナータは正直に答えた。「ただ、退屈ではないかと」


 マクシミリアンが、本から顔を上げた。


「退屈ではない」


 たった四文字だった。でもその答え方に、何か——温かいものが混ざっていた。


 レナータは頬の熱を感じながら、机に向き直った。


 その日の夜、屋敷に戻ったレナータは、店の奥の引き出しから三年分の代筆控えを全部出した。


 半年前の控えの隣に、別の月のページも開いた。一年前、二年前。自分が書いた文の冒頭を、改めて見直した。


 ——文体が、似ている。


 当然だ。同じ人間が書いたのだから。


 でも、他の代筆屋の書く文とは、確実に違う。レナータは町の他の代筆屋の作品も、何度か目にしたことがある。彼らはもっと直接的に感情を書く。「愛しています」「会いたい」「あなたなしでは生きられない」。


 レナータは違う。感情を、行動の描写で包む。


 マクシミリアンが見せた、あの手紙。


 レナータは目を閉じた。


 文体は、自分のものに近い。控えに残っている書き出しが、一致する。ここまで揃って、他の人間が書いた可能性はあるだろうか。


 一晩中、レナータは控えを見つめていた。


 答えは出なかった。


 でも——


 それはもう、違和感ではなかった。

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