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代筆屋の私が、なぜか自分を探す手紙を依頼されているのですが  作者: トークン
町外れの代筆屋です

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第四話「自分宛ての手紙を書きました」

 その夜、レナータは机に向かった。


 マクシミリアンの依頼——「書き手を見つけるための手紙」を書く。


 原則的には、これは奇妙な仕事ではない。代筆屋への依頼で「特定の人物を探している」というものは、稀にある。失踪した恋人、行方不明の友人、昔の恩人。レナータも何度か対応したことがある。


 ただ今回は、書き手が——


 ——自分の可能性が、ある。


 ペンを置いた。


 頭を整理する必要があった。


 まず、半年前の代筆は確かに自分が書いた。控えがそれを示している。


 次に、その手紙が辺境伯の手元にある。これがおかしい。依頼主は商人の若い男性だった。商人がなぜ辺境伯に手紙を渡したのか。あるいは——手紙が何らかの経路で、最終的にマクシミリアンの手に渡ったのか。


 商人が女性に送り、女性が誰かに渡し、何かの経路でマクシミリアンの目に触れた——ありそうな線ではある。


 でも、どれも確証はない。


 レナータはペンを取り直した。ひとまず仕事を進めよう。書き手が自分かどうかを証明する必要はない。マクシミリアンの依頼は「書き手に届く手紙を書くこと」だ。それを誠実に実行すればいい。


 レナータは新しい紙を出した。書き始めた。


『あなたが書いた一通の手紙を、私は半年前に読みました。市場で立ち止まる女性の姿を、行動の描写だけで描き切ったあの文章を——』


 ペンが、止まった。


 書きながら、自分が自分のことを書いている感覚が、ふと指先を冷やした。


 この一文は、書いた覚えがない。でも、書こうと思えば書ける文だ。それはつまり、書ける人間が、自分以外にも存在しないわけではない。


 レナータは深呼吸をした。


 書き続けた。


『——この手紙が、もしあなたに届くことがあれば、お願いがあります。私はあなたに会いたい。礼を言いたいことがあります。あなたが書いた文章は、私の中で消えませんでした。それがどんな依頼から生まれた文章であっても、書き手の心が映っていることを、私は知っています』


 書き終えて、レナータはしばらくその文を見つめた。


 マクシミリアンが、自分宛てに書いてほしいと言った文章。


 書き手は——おそらく、自分だ。


 確信ではない。でも、書きながら不思議な感覚が続いていた。この依頼主が探している人物像が、書き進めるほど自分の輪郭に近づいていく。


 レナータは手紙を封筒に入れた。明日、マクシミリアンが受け取りに来る。


 ——なぜだろう。


 封筒を撫でながら、思った。


 ——なんだか、自分が自分にラブレターを書いた気分だ。


 慌てて首を振った。違う、これはラブレターではない。書き手を探す手紙だ。


 でも、灯りを消しても、書いたばかりの文字が頭の中で動き続けた。

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