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水銀の錬金術師と、姉を殺しにきた妹  作者: 光
第三章 姉と妹と

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第49話 贋作には贋作の意地がある

 紛い物なら、紛い物どうし、仲良くしてみない?


「そうやって抵抗していると、簡単には殺してあげないわよ? 手足をもいで、吊るして、内臓を一つ一つ潰してあげる。それが嫌だったら大人しく――」


「ミラのふりをするなら、ちょっとは似せる努力をしたほうがいいわ! そんな人殺しの顔はしないもの!」


 悪夢は初めて忌々しそうに顔を歪めた。


「……せめて苦しませないつもりだったのだけれど、これもまた『私』の罪かしらね」


 理解していた。今、どうするべきなのか。今、どうしたらいいのか。


 足りていないのは想いだ。卑屈になっていたから、ううん、そうじゃない、信じきれていないから、応えてくれなかった。


 最初からこうするべきだった。「わたしに力を貸せ」


 アランとヤンを除けて、立ち上がる。ナタリーの肩に手を置いて微笑んで、悪夢の正面に出る。


「その輝き……まだ抗うつもりなの、贋作の分際で!」


「贋作には贋作の意地がある。偽物だって、本物に触れられる。ここには本物がある、わたしの中には!」


 願う、違う、ぶつける。この想いを、白い石に叩き込む。


 悪夢が銀色の刃で攻撃してくるが、右腕の一振りで薙ぎ払った。


「その目……あなた如きがなぜ……絶対に認めない」


「お前も紛い物なら、紛い物の想いに、わたしの想いに応えてみせろおおおお!!」


 白い石で地面を抉る。ここで生み出す、ここで錬成する。勝つための力を。たったひとつのオリジナル、自分だけのアルケミアで暗闇を払う。


 白い閃光の中から、一体のゴーレムが生まれる。


 銀の輝きを放つ甲冑、


 研ぎ澄まされた細身の大剣。


 白銀の騎士。


 聖なる鎧と剣は、あらゆる悪を打ち払う。


「あなたも人ならざるもの、資格は……、だけどぉ、所詮出来損ない! こんなものにぃ!」


 悪夢は全身を融解させて、水銀そのものとなりゴーレムに迫った。だが、そんな反撃など意にも介さず、大上段に大剣が構えられる。


「役立たずは、そっちだったね」


 振り下ろす。燐光のような瞬きが軌跡を描いた。


 闇を裂く白銀の一閃。悪夢の分身は消滅し、足元に真っ白な塩だけが残った。


 天井が突き破られ、白みを帯びた月が見える。石粒が、パラパラと降り注ぐ。イグネアが身体をもそっと動かして、イーディスに微笑んだ。


 力が抜けて背中から倒れると、ナタリーが受け止めてくれた。


「あれ、イーディスの目、ミラみたい……わたしはどっちも好きよ!」


 そんなことを言われたが、よくわからなかった。目がどうしたのだろう? 


 瞬きをすると、ナタリーは「あっ」と驚いたように声を上げた。


 それから「やっぱりなんでもないわ!」となぜか誇らしげだった。


 まぁ、いいか。ナタリーは気分で物を言うから。


 遠い夜空を見つめて、つぶやいた。


「イーディスは……みんなの力で敵をやっつけたよ。あとはミラ姉さまも」


 それから白い石に目配せして、「ありがとう」と礼を言った。

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