第31章 揺れる心
最終プレゼン成功から数日が経った。
会社では「山田がまたやってくれた」と評価が上がり、次の案件の話もすでに出始めていた。
仕事面では、確かに前に進んでいる。
でも、心の中はむしろ複雑になっていた。
ある夜、美咲からメッセージが届いた。
【美咲】
山田さん、お疲れ様です。
よかったら、今度の休日に少しだけ時間いただけませんか?
お話したいことがあります。
私は少し迷ったあと、「いいよ」と返信した。
---
日曜の午後、美咲と待ち合わせたのは、静かな公園だった。
彼女は私服姿で、白いカーディガンを羽織って待っていた。
会社で見る姿とは違う、柔らかい雰囲気が漂っている。
「来てくれてありがとうございます」
「こちらこそ。美咲、今日は何の話?」
ベンチに並んで座り、しばらく沈黙が続いた。
美咲が深呼吸をして、静かに切り出した。
「山田さん……私、ずっと我慢してました。
でも、もう言わないと、自分が壊れそうで」
彼女の声が少し震えている。
「私、山田さんのことが好きです。
事故の後から、ずっと応援してきました。
仕事も、人としても……山田さんの隣にいたいです」
その言葉が、胸に深く刺さった。
美咲の瞳は真剣で、真っ直ぐだった。
「美咲……」
「急に答えを求めたりしません。
ただ、私の気持ちだけは伝えたくて……」
私は言葉に詰まった。
遥香の顔が一瞬よぎる。
過去を共有する彼女の深い想いと、今目の前で告白してくれる美咲の純粋さ。
「俺は……今、すごく迷ってる。
お前を傷つけたくないし、自分の気持ちもまだ整理できてない」
美咲は寂しそうに微笑んだが、優しく頷いた。
「わかりました。
待ってます。
山田さんが決めるまで……私はここにいます」
別れ際、彼女は小さく頭を下げて、背を向けた。
家に帰った私は、ソファに座り込み、深く息を吐いた。
美咲の告白。
遥香の想い。
そして、自分自身がまだ「山田悠真」として完全に生ききれていないこと。
全部が重なり合って、頭がぐちゃぐちゃになる。
「この体、男子ですけど何か?
今日は、美咲に告白されて、本当に答えが出せなくなりました……」
私は目を閉じた。
この先、どうするべきなのか。
そろそろ、本気で自分の気持ちと向き合わなければならない。




