第28章 中間報告
中間報告の日がやってきた。
会議室には、新任役員をはじめとする関係者が揃っている。
空気は張り詰めていて、私の手のひらに少し汗がにじんだ。
「それでは、山田から中間報告をお願いします」
私は立ち上がり、資料を画面に映した。
「本日は、現状の進捗と、今後の方向性についてご説明します」
悠真の経験が自然にプレゼンの流れを作ってくれる。
しかし、肝心の「尖ったアイデア」の部分で、役員の表情が厳しくなった。
「山田君、この案は前回の延長に見える。
もう少し『驚き』が欲しい」
一瞬、言葉が詰まりそうになった。
そのとき、頭の中で愛子の感覚が動いた。
「……一つ、追加提案があります」
役員の視線が集まる。
「ターゲット層の『日常の中の小さな非日常』を、より感情に刺さる形で表現します。
例えば、忙しい主婦がふと手に取ったときの『これがあるだけで、今日も頑張れる』という感覚を、ビジュアルとコピーで強調する。
数字だけでなく、感情の動きを軸にした設計です」
会議室が少し静まった。
役員はメモを取りながら、ゆっくりと頷いた。
「……面白い。その方向でさらに詰めてみろ。
ただし、次回は完成度を上げて持ってこい」
報告が終わった後、控室に戻ると美咲が駆け寄ってきた。
「山田さん! すごく良かったです……! 役員の反応も前向きでしたね」
「お前の意見が活きたよ。ありがとう」
美咲は嬉しそうに頰を赤らめた。
その夜、家に帰った私は、ソファに座ってビールを開けた。
中間報告は無事に乗り越えた。
でも、本番はまだ先にある。
スマホを見ると、遥香からメッセージが届いていた。
【遥香】
悠真、今日大事な報告だったんでしょ?
うまくいった? 無理しないでね。
美咲の笑顔と、遥香の心配が頭の中で重なる。
「この体、男子ですけど何か?
今日は、中間報告を乗り越えて、少し自信が持てました……」
それでも、心の奥ではまだ揺れ続けている。
この先の本番と、二人の女性との関係。
私はまだ、すべてを受け止めきれていない。




