第26章 遥香の隣で
新プロジェクトが本格始動してから、数日が経った。
資料作成に追われる日々の中、ある夜、遥香からメッセージが届いた。
【遥香】
悠真、最近すごく忙しそうだね。
無理してない?
もし時間が取れたら、少しだけ会えないかな。
話したいことがあるの。
私は少し迷ったあと、「週末なら少し時間作れるよ」と返信した。
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土曜の午後、遥香と待ち合わせたのは、以前よく行っていた静かな公園だった。
彼女は淡いベージュのコートを着て、ベンチで待っていた。
秋の風が、彼女の長い髪を優しく揺らしている。
「来てくれてありがとう、悠真」
「こちらこそ。遥香、元気そうでよかった」
二人は並んでベンチに座り、しばらく無言で落ち葉を眺めた。
「悠真、最近変わったよね」
遥香が静かに切り出した。
「事故の後から、優しくなったっていうか……
人の話をちゃんと聞くようになった気がする」
「……そうか」
「前の悠真は、仕事が最優先で、私の気持ちをあまり見てくれなかった。
でも今の悠真は、少し違う。
だから、余計に忘れられないの」
彼女の言葉が、胸に深く刺さった。
美咲の顔が一瞬よぎる。
純粋で、一生懸命で、いつも私を支えてくれる後輩。
それに対して、遥香は過去を共有し、私の「前」を知っている人だ。
「遥香……俺は今、すごく迷ってる。
仕事も、自分のことも、人のことも……全部整理しきれてない」
遥香は小さく頷いた。
「わかってる。急かしたくないの。
ただ、悠真が一人で抱え込まないでほしいだけ」
彼女は私の手に、そっと自分の手を重ねた。
その温かさが、男の体を通じてダイレクトに伝わってくる。
「もし、また一緒に歩けるなら……私は待ってる」
公園を出るとき、遥香は少しだけ私の腕に寄りかかった。
家に帰った私は、ソファに深く沈み込み、天井を見つめた。
美咲の優しさ。
遥香の深い想い。
そして、新プロジェクトの重圧。
全部が重なり合って、頭がぐちゃぐちゃになる。
「この体、男子ですけど何か?
今日は、遥香の隣にいて、また気持ちが揺れてしまいました……」
私は目を閉じた。
この三角関係は、簡単には決着がつかない。
でも、この葛藤こそが、今の私なのだと思い始めた。




