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この体、男子ですけど何か?  作者: 蒼狐


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13/27

第13章 週末の風

土曜の午後、晴れた空が気持ちよかった。


先日のプレゼン成功の余韻がまだ残る中、高橋美咲からメッセージが届いた。


【美咲】

山田さん、お疲れ様でした!

よかったら今日、軽くお祝いしませんか?

おすすめのカフェがあるんですけど……


私は少し迷ったあと、「行くよ」と返信した。


待ち合わせ場所は、駅から少し離れた落ち着いたカフェだった。

美咲は私服姿で待っていた。白のブラウスに淡いブルーのスカート、髪を軽く下ろしている。

会社で見るスーツ姿とはまた違う、可愛らしさが際立っていた。


「山田さん! 来てくれてありがとうございます」


「こちらこそ誘ってくれてありがとう。今日は私服の美咲さんも新鮮だな」


言葉が出てから少し後悔した。

でも美咲は頰を赤らめて嬉しそうに笑った。


カフェでケーキセットを注文し、窓際の席で話した。


仕事の成功話、学生時代の話、最近ハマっていること……

会話は驚くほど弾んだ。美咲は笑顔が多く、聞き上手で、時々鋭い感想を返してくる。


「山田さん、事故の後って本当に変わられましたよね。

前はもっと近寄りがたい感じだったのに、今は……すごく温かいです」


その言葉に、ドキッとした。


(温かい、か……)


愛子の性格が、この体を通じて出ているのかもしれない。


カフェを出た後、美咲が少し遠慮がちに言った。


「あの……もしよかったら、もう少し一緒に散歩しませんか?

近くに綺麗な公園があるんです」


私は頷いた。


公園のベンチに並んで座り、夕陽を眺める。

風が心地よく、木々の葉が揺れる音が静かに響いていた。


「山田さん」


「ん?」


「……私、山田さんのこと、ずっと尊敬してました。でも最近は、それだけじゃなくて……」


美咲の声が小さくなる。


彼女の横顔が、夕陽に染まっている。

心臓の音が自分でもはっきり聞こえるくらい、鼓動が速くなった。


男の体で、女の子にこんな気持ちを抱くこと。

まだ完全に整理できていない。


「高橋くん……」


私は慎重に言葉を選んだ。


「俺、今は自分のことで頭がいっぱいで……ごめん。

でも、こうして一緒にいる時間は、すごく楽しいよ」


美咲は少し寂しそうに微笑んだけど、すぐに明るく頷いた。


「わかりました。急かしたりしませんから……ゆっくりでいいです」


帰り道、駅まで一緒に歩いた。

別れ際、美咲が小さく手を振ってくれた。


マンションに帰った私は、ベッドに寝転がりながら天井を見つめた。


遥香の「やり直したい」という言葉。

美咲の優しさと好意。


二人の顔が交互に浮かんで、胸が苦しい。


「この体、男子ですけど何か?

今日は、美咲さんと過ごして、気持ちがまた揺れました……」


新しい人生は、恋愛に関しても本当に難しい。


でも、その難しさの中に、少し甘い予感も感じ始めていた。

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