表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この体、男子ですけど何か?  作者: 蒼狐


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/24

第12章 一筋の光

木曜の朝、営業部はいつもより緊張した空気に包まれていた。


今日がA社への最終提案日の前日だ。

何度も修正を繰り返した資料は、もうこれ以上ないというところまで仕上げてあった。


会議室で最終確認をしていると、部長が珍しく声を荒げた。


「山田、このままじゃダメだ。クライアントが求めているのは『新しさ』だけじゃない。現実的な成果だ!」


プレッシャーが一気にのしかかる。


私は資料を睨みながら、頭をフル回転させた。

悠真のビジネススキルと、愛子としての「普通の人の感覚」を必死で混ぜ合わせる。


「……部長、ひとつ提案があります」


会議室の視線が一斉に集まった。


「ターゲットを広げるのではなく、逆に30代主婦に絞ります。

ただし、クリエイティブは『共感』と『ちょっとした贅沢』を軸に。予算を抑える代わりに、感情に刺さるストーリー性を強く出しましょう。女子高生……じゃなくて、普通の主婦目線で考えると、こういうのが響くと思います」


愛子の視点が、思ったより活きた。


会議が終わった後、佐々木が肩を叩いてきた。


「山田、お前今日なんか冴えてたな。『普通の主婦目線』って、なかなか言えねえよ」


「……たまたまだよ」


午後、クライアントへの最終プレゼン資料を完成させた。

美咲が最後のチェックを手伝ってくれ、二人で夜遅くまで残った。


「山田さん、これ……すごくいいと思います。私、感動しました」


美咲の目が少し潤んでいるように見えた。


金曜の午前10時。

本番のプレゼンテーション。


クライアント企業の会議室で、私はスーツをぴんと着て立っていた。

心臓がうるさいくらい鳴っている。


プレゼンが始まると、不思議と頭がクリアになった。

悠真の経験と愛子の感性が、滑らかに言葉を紡いでいく。


「——つまり、『日常の中の小さな特別感』をコンセプトに据えています」


プレゼン終了後、クライアントの担当者がゆっくりと頷いた。


「……面白いです。これまでとは違うアプローチですね。

前向きに検討します」


部屋を出た瞬間、膝に力が入らなくなった。


佐々木が駆け寄ってきて、私の背中を叩く。


「やったじゃねえか、山田!」


美咲も目を輝かせて駆け寄ってきた。


「山田さん、かっこよかったです……!」


その夜、チームで少しだけ祝杯を上げた。


マンションに帰宅した私は、ベッドに倒れ込みながら天井を見つめた。


初めて、自分がこの体で「山田悠真」として成果を出せた気がした。


仕事の達成感、チームの信頼、美咲の笑顔、遥香の存在——


全部がまだ絡まっているけど、少しずつ前へ進んでいる。


「この体、男子ですけど何か?

今日は、仕事で初めて本気で頑張って、結果を出せた気がします」


小さな達成感が、静かに胸を温かくした。


まだ道のりは長い。

でも、悪くない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ