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「神獣と妖怪とサン・ジェルマン」(セーラー服と雪女 第29巻)  作者: サナダムシオ


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⑧ 非公式マスコット

「どうされましたか?」

 ちょうどそのタイミングで、サン・ジェルマン伯爵が、エレベーターから出て来た。ついさっきまで、たまたまレストランで一緒に居た、由理子の事が心配になり、様子を見に来たのだ。


「伯爵、実は……。」

 カグヤが、事のあらましを彼に説明した。

「成る程。そういう事ですか。」

 どうやら伯爵は、事情が分かったようだった。


「あの……伯爵。」

「何だい?由理子さん。」

「この子が、捨てないでって言ってます。」

 由理子が、申し訳無さそうにそう言った。

 鵺がジト目で、伯爵を見ている。


「……イイでしょう。ちょうど年末にセキュリティの検討もしていた事ですし、特例として、我がサロンの番犬代わりに雇いましょうか。」

「ホントですか!?」


 そう言って一番に喜んだのは、実は成雪だった。

 カグヤが帰還の運転中、後席の鵺を気遣って、熱心に手当てしていたのは、何を隠そう、彼だったのだ。


 成雪は勝手に、この合成生物にシンパシーを感じていたのだ。多分、自分自身が不自然な成り立ちで産まれた生き物……雪村の細胞から産まれたクローン人間だからだろう。彼にはそういう自覚が有った。


 そして鵺も、今やそんな成雪に、良く懐いていた。それに、よく見るとカワイイ……訳は無いが。

 まあ何しろそんな訳で、その日から非公式マスコットとして、名護屋テレビ塔の亜空間レストランに、鵺が常駐する事になったのである。


 どうやらエサは、取り敢えずドッグフードとかでイイらしい。今後は様子を見ながら、出来るだけ、美味しいモノを食べさせてあげたいな。そんな風に思う由理子だった。


 それから何日間かは、鵺の存在が、訪問者をギョッとさせる事が続いた。そういう意味では、番犬の役割を果たしていると言えそうだった。村田京子などは、鵺を見た瞬間に取り乱し、大量の冷気を出して、その辺を雪と氷で真っ白にしてしまったのだ。


 でもヒトは慣れる生き物である。その内に誰も鵺の事を怖がらなくなり、終いには、"ヌエちゃん"、なんて親しみを込めて、愛称で呼ぶようになっていたのである。


 まあ、明るい日の光りの元や、バッチリ照明の当たったレストラン内に居る限り、さしもの怪異も、その不気味さを発揮出来ないというものだ。

 今や、ちょっとリアルな形の、"ゆるキャラ"だと思えば、その恐ろしいルックスも、我慢出来なくも無かった。


挿絵(By みてみん)

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