⑦ その後
退治されたという、鵺の死体の行方だが、諸説ある。コレは恐らく、その内で一番信憑性の高いもの……どうやら京の都の人々は、鵺の祟りを恐れて、死体を船に乗せて淀川に流したらしい。
淀川を下った船は、大阪東成郡に一旦漂着した後、海を漂って芦屋川と住吉川の間の浜に打ち上げられた。芦屋の人々は、この屍骸を秘密裏に手厚く葬り、最終的には、京都府の清水寺の、舞台下に埋めたという。
さて、このエピソードへの、カグヤと成雪の介入である。実は二条城の北に鵺が落下した際に、猪早太より先に、ビートルで現場に駆けつけていたのだ。そして、いち早く鵺を助け出し、変わりに伯爵お手製の、合成タンパク質で出来たニセの死体を、その場に転がしておいたのだった。
そして後部座席に鵺を詰め込んだビートルは、取り敢えず、光学迷彩を透明モードにして、上空へ舞い上がったのである。
「さて……どうしようかしらね?」
ハンドルを握るカグヤは思案する。
「やっぱり詳しい人に見てもらうのが、一番イイよね?」
成雪はそう言った。
「そうよね……そうしましょう。」
迷いが無くなったカグヤは、クルマのリセットボタンを押して元の時空へ戻る道を選択した。
名護屋テレビ塔の、地下駐車場に戻って来た二人は、取り敢えず、左腕のデバイスで、亜空間レストランの由理子に連絡をとった。
「お待たせ!」
二人で後部座席の鵺を見張っていると、すぐに由理子がエレベーターから現れ、元気な声を掛けて来た。今日も当たり前のように、赤い髪にメイド服だ。
「この子ね?」
彼女はビートルの左ドアを開けて、後部座席を覗き込む。矢の傷の応急処置をしておいたので、鵺は随分元気になっていた。
暫くの間、由理子と鵺は、まるでにらめっこのように、黙り込んで見つめ合って居た。
そして「大体分かったわ。」と由理子が呟いた。
「結論から言うと、この子は、妖怪でも、神獣でもないわ。」
と由理子。
「ええっ?」とユニゾンで驚くカグヤと成雪。
「この子はただの……可哀想なキメラ。あの時代にこんな合成生物を作る技術を持っているのは、未来人か、異星人か、鳥族か……後は爬虫類族ね?私は爬虫類族説に一票だわ。」
「そうなんですね?」とションボリする成雪。大物だと思って釣り上げた魚が、大きな長靴だったような気分なのだろう。
「もう、どこでもイイから、逃がしてあげたら?」
「いや、そんな、捨て猫みたいに……。」
カグヤも困ってしまった。




