④ 霊獣白澤
それは、1997年の年も押し迫った12月26日の金曜日。時刻は22時を回った頃だった。チーム・サンジェルマンのフルメンバーが集まって、催されていた忘年会も終わり、みんなで、亜空間レストランの後片付けをしている時の事だ。
突然、室内中央に、見慣れない、白い大きな獣が現れたのだ。その姿は一見、ホワイトライオンのように見えた。しかし、よくよく見ると、色々とオカシナ点が有った。
まず背中に、一列に並んだ、イグアナのようなトゲがたくさん有る。前脚のすぐ後ろの脇腹には、眼が三つ付いている。多分、反対側にも同様に有るに違いない。そして、まるで人面犬のような顔には、額に第三の眼が開いていた。つまり合計九つの眼が有る訳だ。
そんな全長5mもありそうな、巨大な妖怪を目の前にして、普通のニンゲンなら、ワーキャー騒ぎ立てるところだろう。しかし、ここのメンバーたちは、残念ながら(?)この手のバケモノの類には、もうすっかり慣れっ子になっていたのだ。
「ねえ、伯爵……。」
溜め息を一つつきながら、村田京子が最初に口を開いた。
「はい。何でしょう?」
サン・ジェルマンが、静かに答える。
「もう、このセリフを言うの、何度目か忘れたんだけど、この部屋のセキュリティは、もう少しどうにか、改善出来ないのかしら?仮にも、私たちの基地なのだから……。」
「はあ、最善は尽くして居るのですが、何しろ易々と時空を超えていらっしゃるお客様が多くて……申し訳無い事です。」
「仕方無いわねえ。」
「我が名は白澤。」
そんな二人に構わず、唐突にそのバケモノが喋り出した。
流暢な日本語だ。
流石にみんな見構えた。
「ワシが仕えるべき、主の元に参った。」
そいつはそんな事を言った。
「主って?」動物相手が得意な、由理子が尋ねた。
すると白澤は、その場でお座りの姿勢になり、右の前脚を挙げて、まるで指差すようなポーズをとった。
部屋中の皆が、その指差す方向を見た。
そこに居たのは、何と真田香子だったのだ。
「えっ、アタシ?」本人が一番驚いていた。
「アタシはただの植物遣いだけど……?」
確か白澤と言えば、古代中国の時代から、徳の高い君主と認めた者の前にのみ、その姿を現すと言われているはず……杉浦鷹志は、そんな事を思い出していた。
「特殊な動物なら、ほら、そこに居る由理子が得意よ?」
香子はそんな事を言うが、どうやら白澤の決意は、揺るがないようだった。




