③ 夫婦の神
そう言えば、ガネーシャの母親も、中々のツワモノだったハズだ。鷹志は伝説を思い返していた。確か普段は心優しく美しい女神パールヴァティだが、怒ると"ドゥルガー"や"カーリー"といった、恐ろしい戦闘の女神に変身するはず……。ソレを思い出した鷹志は、思わずブルブル震えてしまった。ひょっとしてユリちゃんも、完全覚醒したら、そうなっちゃうのかな?
シバ神はソレが恐ろしくて、慌てて息子を生き返らせた結果、あんな事に……。いやシバ神自身も大概強い武闘派の神だったハズだ……自分の中に一切そんな要素を感じないが。ソレでも敵わないくらいカカア天下だったんだな……何だか分かる気もするな。帰りの道すがら、助手席でそんな事をツラツラ考えてしまう鷹志だった。
やがて赤いビートルは、無事に名護屋テレビ塔の地下駐車場に戻って来た。
亜空間レストランで待っていたサン・ジェルマン伯爵は、いつものように暖かく二人を出迎えた。
「お疲れ様。お二人の昔の息子、ガネーシャはいかがでしたか?」
「伯爵、知ってたんだ。」驚く由理子。
「まあ私も一応、ベテラン・タイムトラベラーなので……。」そう言って笑う伯爵。
「おかげさまでまた、ユリちゃんに属性が増えちゃいましたよ。ソレも結構強烈なヤツが。」
鷹志がそう言って苦笑した。
「ああでも、鷹志君もちゃんと覚醒すれば、相当なチカラを発揮できるはずなのですよ?」
「ええ~、そうなの~?見てみたいなあ。それならもう、後方支援じゃなくてもイイのにぃ。」由理子がジト目で言う。
「額に第三の眼が開くんですよ。」
「うわあ、凄い!なんかチートっぽいじゃない?確か厨二病って言うんだっけ?」
「ヤメテくださいよ。僕はそんな、バケモノになったりしません。」
「鷹志君は、特別理性のチカラが強いですからねえ。心のどこかで、荒唐無稽な話は信じないように、自分自身に縛りを掛けている。そのガードが外れるきっかけが、覚醒の時でしょうね。」
伯爵がニコニコ笑いながら、そんな恐ろしい事を言った。
「以前、ヤマタノオロチを退治した時に、少しだけチカラを使ったはずですよ?多分、無意識だったでしょうけど。」
「……あっ。」何か思い当たる鷹志。
「だからその時に、長じたカグヤ・イシュタルさんから、スサノオの名を貰ったのは、決して偶然では無く、妥当な事だったんですよ。」
「そう……なんですね。」
それでも鷹志は、額に第三の眼が開くのは、まるで昔読んだ手塚治虫先生の漫画、"三つ目がとおる"みたいで、カッコ悪い気がした。
「因みに由理子さんは、覚醒すると、肌が金色に輝くんですよ。」
「キャー、素敵じゃない!」
「ええ~?なんかイヤだなあ。まるで昭和の"金粉ショー"みたい。」
「……何、ソレ?」
「……何でもありません。」気まずそうな鷹志。
「……そして彼女が戦闘モードに入ると肌が真っ黒に!」
「わーい!ソレもカッコよさげ……でもガングロギャルみたいかしら?」
「ユリちゃんは、いつもどおりでカワイイから、変身しないでよね!」
「ありがとう、鷹志!」
由理子は鷹志に抱き着いて頬にキスした。
「ごちそうさまです。」
伯爵はそう言って笑った。




