② 二人の前世
「ようこそ。お父さん、お母さん。」
二人が、よく出来た作り物に見惚れていると、突然そんな風に、後ろから声を掛けられた。いや、正しくは、心の中に気持ちが伝えられたと言うべきか。何故ならソレは、テレパシーだったからだ。
振り返るとそこには、生々しいガネーシャが立っていた。いや、コレも正しくは、ガネーシャのイメージが見えていた、と言うべきだろう。それは実体ではなかったからだ。
「何故、私たちに向かって、そんな呼び方をするの?」
由理子が答える。
「言葉通りの意味だよ。だって貴方たちは、僕の父と母の生まれ変わりなのだから。」
ガネーシャが当然のように、そう言って笑った。
ウソをついているようには見えない。第一、神がそんなウソをついても、何の得にもならない。
(すると、ユリちゃんの身体の垢を集めて、こねて作った息子の首を、この僕が切り落として、ゾウの頭に挿げ替えた事になるな。)
鷹志は思わずそんな事を想像して、気温は高いのに、少し寒気がした。
「ああ、残念だなあ。前世の記憶を失っているんですね?」
尚もそんな事を言うガネーシャ。
(ユリちゃんはただでさえ、古代エジプトの神が憑いているのに、また属性が増えるのか、大変だなあ……いや、ちょっと待てよ?そうすると僕の前世は、古代インドのシバ神てことにならないか?)
大変な事に思い当たり、にわかに愕然とする鷹志。
「わざわざ二人揃って、年に一度のお祭りに訪れてくれたのは、いよいよ僕が、二人のお役に立てる日が来たって事だね?」
嬉しそうに言うガネーシャ。
「そうなのよ。でも、後2年待てるかしら?」
由理子はさり気なく、話を合わせる。
「お安い御用だよ。必要になったら、心の中で呼び掛けて。僕は何時でも、何処へでも、母さんの元へ飛んで行くよ。」
ガネーシャは、満面の笑みを浮かべてそう言った。
「ありがとう。頼りにしているわ。」
由理子がそう言いながら手を振ると、満足したように、ガネーシャのイメージは、煙のように消えて行った。今のは、夢だったのだろうか?
「夢なんかじゃないわよ。」
鷹志の心の中を見た由理子が、すかさずそう言った。そうだった。何でも考えた事は、彼女に丸見えなのだ。
「さあ、とても効率良く用事が済んだわね。長居は無用だから、帰ろうか、鷹志?」
「ああ、うん。」
二人でビートルに戻り、光学迷彩を掛けて、上空へと飛んだ。




