㉖ 彼の顛末
スフィンクスを倒したオイディプスはテーバイの王となった。そして実の母であるイオカステーを、そうとは知らずに妻とし、2人の男児と2人の女児をもうけた。
オイディプスがテーバイの王になって以来、不作と疫病が続いた。クレオーンがデルポイに神託を求めたところ、「不作と疫病はラーイオス殺害の穢れのためであるので、殺害者を捕らえテーバイから追放せよ」というお告げを得た。
そこでオイディプスは、過去に遡って調べを進めるが、次第にそのあらましが、自分がこの地に来た時の、ポーキスの三叉路でのいざこざに似ていることに気が付く。
更に調べを進めるうち、やはりそれが自分であること、しかも自分がラーイオス王の子であったこと、母との間に子をもうけたこと、つまりは、以前の神託を実現してしまったことを知る。
それを知るや、イオカステーは自殺し、オイディプスは絶望して、自らの目をえぐり、故郷のテーバイから追放されたのだった……。
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「……ね、ひどい話でしょ?」香子が隣の由理子に言った。
「ああ……何だかもう……ねえ。」由理子もすっかりイヤな気分になった。
今、目の前でスフィンクスを論破して、意気揚々と去って行く青年の末路が、まさかそんな事になっているとは……正に一寸先は闇。人生とは何が起きるか解らないモノである。
さて、崖から飛び降りて死んだフリをしたスフィンクスは、その後シレっと由理子たちの後ろに来て、控えていた。そりゃあそうだろう。あんなに立派な翼を、背中に付けているのだ。高い所から飛び降りたくらいで、死ぬ訳がないのだ。完全な勝利を目指すなら、やはり死体はちゃんと確認するべきである。オイディプスは、何かと脇が甘い感じがする青年だ。だからこその、あの末路なのだろうが……。
「それじゃあ、我が眷属よ、こちらの乗り物に乗りなさい。」
香子はそう言うと、赤いビートルの助手席側のドアを開けて、前席を倒した。どうやらスフィンクスを後席に押し込んで、連れて帰るつもりだ。スフィンクスも大人しく言われた通りにした。契約は絶対のようだ。
「えっ、お姉ちゃん。コレ、連れて帰るの?」
由理子が驚いて姉に尋ねる。
「そうよ。もう、この世界線では死んだ事になっているから、モンダイ無いでしょ?」
「……伯爵に許可貰わなくて、大丈夫かなあ?」
「だってもう、何頭か連れて帰った前例があるんでしょう?来るべき危機に備えて、手駒は多い方がイイしね……ダメならまたここに戻すまでよ。いいから行きましょう。」
今日の香子は何だか強引である。
さては最初から、ソレが狙いだったようだ。
(ああ、伯爵に怒られないかしら。)
由理子は心配だった。




