㉓ スフィンクス
時空転移の出口は、都市国家にほど近い、砂漠の中の道の上空だった。
なるほど。確かに眼下に、道を塞いで立ちはだかっている、バケモノが居る。
由理子は、透明モードのままのビートルを道の脇に着陸させると、香子と連れ立って、スフィンクスの前まで出て行った。
そのスフィンクスの姿は、ピラミッドの前に鎮座しているアレとは、かなり異なる印象のモノだった。
体長はおよそ2m程だろうか?それほど巨大には感じない。もっとも、二人とも今までに、数々のバケモノを見て来たから、いささか感覚が麻痺しているのかも知れないが……。
何より驚きなのは、その上半身だった。なんと二つの乳房が露わになった、美しい裸の女の姿だったのだ。二人がたまたま女性だったから、冷静な目で見る事ができたが、旅の商人などの男どもが、砂漠の真ん中でコレの出会ったら、一体どんな気持ちになるのか心配になる。
そして前脚から後半のカラダは、屈強そうなライオンそのものだ。
おまけに背中には、ワシのような立派な翼が生えている。
由理子は、このパターンのキメラが多すぎる気がした。
(みんな、キャラ被ってることに気がついているのかな?)
彼女は思わず、そんなどうでもいいような心配をしてしまうのだった。
「我から問う謎かけに答える事が出来なければ、ここを生かして通さぬぞ。」
聞く者の腹に直接響く、何とも形容しがたいような不気味な声だった。通常のニンゲンなら、裸足で逃げ出すレベルだろうと思われる。しかし数々のアクシデントを切り抜けて来た二人にとっては、どうと言う事も無かった。
そして二人とも、左腕に同時通訳が可能なデバイスを付けていたので、スフィンクスがそう言ったのが、すぐに理解出来た。
「ええ、いいわよ。どうぞ。」由理子が、何の躊躇もなく返答する。
「……貴様は我が恐ろしくはないのか?」
肩透かしを食らった気分なのだろう。スフィンクスがそう言って来た。
「そうね。こんな砂漠の真ん中で、キレイな胸なんか見せびらかして、"あざとい"とは思うけど、怖くは無いわね。」
由理子はそう答える。
「それに私には、貴女の純粋で美しい心の底が見えるわ。」
彼女にそう言われたスフィンクスが、明らかに動揺しているのが、後ろで見ていた香子には分かった。
(このバケモノ。見かけによらず、純情なのかも……。)




