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「神獣と妖怪とサン・ジェルマン」(セーラー服と雪女 第29巻)  作者: サナダムシオ


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⑭ 若気の至り

 1998年5月1日の金曜日。

 時刻は午後3時ごろ。


 いつもは賑やかな、名護屋テレビ塔の亜空間レストランが、今日は静けさに包まれていた。そこでミルクティーを飲みながら寛いでいたのは、サン・ジェルマン伯爵と、その事実婚の妻の村田京子だけである。他のメンバーは皆、休暇を取るか、個人的な用事を片付けるかで、すっかり出払っていたのだった。


「たまにはこういうのも、ホッとするわよね。」

 京子が伯爵に囁く。

「そうですねえ。ただ僕は貧乏性なのか、のんんびり何もしない時間を、楽しめる心の余裕が無いみたいなのですが……。」

 伯爵が正直に答える。


「やっぱりそうなのね……まったく、貴方って人は。何か気になる事でも有るの?」

「最近はすっかり、幻獣や神獣の事が気になるようになってまして……。」

 そう言いながら彼は、チラリとエレベーター前に番犬よろしく鎮座している、ぬえの事を見た。


「実はつい先日、昔の知り合いの戦いの記録を調べていたら、とあるモンスターとの交戦の様子が描かれていたんですよ。」

「昔の知り合いって、誰よ?まさかフルカネルリ卿のウアジェト女王?」

「いや、もっと昔です。まだ私が駆け出しのタイムトラベラーだった頃の……。」


「……誰よ。もったいぶらないで教えなさいよ。」

「……まあ、アレクサンダー大王なんですけどね。」

 それは中々のビッグネームだった。

 しかし、彼が言い渋って居た理由は、他に有るようだ。

 京子には女の勘が働いて、すぐにピンと来た。


「あの忌々しい、真田雪子がらみの話ね?」

「当時の私はまだほんの子どもで、色々と彼女から、タイムトラベルの手ほどきをして貰ってたんですよ。その時に行った先が、たまたま死の直前の、大王の寝室だったというだけで……。」(第15巻 参照)


「……イロイロと手ほどきをねえ?タイムトラベル以外にも、きっと彼女から教わった事は、数多く有るのでしょうね?」

 そう言って永遠の23歳の彼女は、永遠の35歳の伯爵をジト目で見た。


「あ、ははは……そろそろ本題のモンスターの話題に戻しても?」

「まあ、いいわ。昔の事ですものね。私は寛大な心の持ち主だから、許してあげる。」


「そりゃあ、どうも……で、そのモンスターなんですが、北インドの平原で大王の軍隊を迎え撃ち、多数の犠牲者を出したらしいのです。」


「ソイツを調査したいのね?いいわ、今すぐなら付き合ってあげるわよ。」

「そりゃあ、助かります。じゃあ早速、地下駐車場に参りましょうか?」

 伯爵はとても嬉しそうだった。


(全く、こういう所は、いつまでも少年みたいなのよねえ。)

 京子はそう思いながら、彼に続いてエレーベーターに乗り込む。


「ヌエちゃん、お留守番よろしくね?」

 彼女が手を振ると、鵺は頷いて見せた。

 よしよし、よく出来た番犬ぶりだ。

 京子は満足した。


挿絵(By みてみん)


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