⑬ 新しい住処
次にグリフォンと赤いビートルが出現した場所は、とある施設の中庭だった。
それとほぼ同時に、警報音が辺りに鳴り響く。
バラバラと警備員たちが走って来た。
皆、血相を変えた様子で、手に手に電磁網発射装置を持っている。
慌てて由理子が降りて、皆に顔を見せる。
「みんな!あたし、あたしよ!」
続いて弓子と雪村もクルマを降りた。
それを見た警備兵たちが漸く警戒を解いて、警報音も止められた。
ちょうどそこに、居候のカグヤ・イシュタルと成雪が出て来た。
そう、ここは、昭和の時間軸の真田研究所だったのだ。
グリフォンが不安そうに周りを見渡して、低く唸り声を上げた。
由理子がそこに歩み寄り、黙ってその眼を見つめる。テレパシーで語り合っているのだろう。
しばらくたった後、弓子が彼女に尋ねる。
「どう、説得出来た?」
「ええ、何とかここを新しい住処として、認識してもらったわ。」
カグヤがそこに話し掛けて来た。
「由理子さん、コレは一体どういう……?」
「ああ、カグヤさん、ごめんなさい。突然押しかけたりして。」
代わりに雪村が説明に入る。
「実は紀元前のイラン高原で、このグリフォンを保護してね。暫くの間、この研究所の中庭で面倒を見て欲しいんだ。ここなら、外からも滅多に見つからないだろう?番犬代わりにも、ちょうどイイしね。」
「あの、私たちは構わないんですけど、肝心の所長の雪子さんは、何ておっしゃってるのでしょうか?」
「ああ、うん、コレ思いつきだったから、事後承諾になるかな。」
由理子が舌を出しながらそう言った。
「ええっ!?」
カグヤと成雪が声を揃えてそう言った。
あらあら仲がイイのね。それを見た弓子はそう思った。
「ところで、その雪子さんは?」
雪村がその仲良しカップルに尋ねる。
「またどこかに、調査に出かけちゃってます。私たちは留守番を頼まれたのです。」
カグヤが答えた。
「もうお姉ちゃんたら、あれほど単独行動は自重してねって、言ってあるのに……。」
ふくれっ面の由理子がそう言った。
「多分、大丈夫なんじゃない?雪子さん、こういうペット好きそうだし。」
弓子も本人が居ないのをイイことに、好きな事を言っている。
「そういう訳だから、暫くはココで大人しく暮らすように。分かったね?」
雪村が優しくグリフォンに話し掛ける。
それに対して、「クワッ」と小さく返事をする幻獣だった。何だかすっかり、可愛くなっている。
三人はそれを見届けると、赤いビートルに戻った。
「ああ、そうそう、グリフォン。」雪村が最後につけ加えて言う。
「夜になったら見つからないように、森林公園の近辺を飛び回ってもイイけど、ニンゲンを襲ったりしたらダメだよ。全てのニンゲンは、僕の兄弟みたいなモノだからね?」
そして赤いビートルは、名護屋テレビ塔に向かって、再び出発したのだった。




