表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その時代を生きた人々 - フランス革命  作者: Miris
第4部:王を消しても、不安は消えない

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/19

第15話:終わらない広場

注記: 本作は史実をもとにした歴史フィクションです。

人物の会話、心理描写、一部の出来事の流れには創作を含みます。

史実そのものの解説は、本文最後の「櫻未來の歴史メモ」で補足します。


 ******


今回の登場人物


ジャン・ボーモン:パン屋。王の処刑後も変わらず店を開ける。

マドレーヌ:王がいなくなったのに不安が残ることに戸惑う少女。

テレーズ:市場の女性。怒りが次の相手を探し始めていることに気づく。

エティエンヌ:書記。王ではなく市民の名が増えていく文書を見る。

ガスパール:処刑人の助手。処刑台の仕事が終わらないことを知っている。


 ******


1793年初め、パリ。

ルイ16世は処刑されたが、パンの値段も戦争の不安もすぐには消えなかった。

人々は、終わったはずの不安がまだ残っていることに戸惑い始めていた。


「王は死んだ」


パン屋の列で誰かが言った。


ジャンは扉を開けながら返す。


「粉は生き返ってない」


笑いは起きなかった。


マドレーヌは籠を持って並ぶ。


「王様がいなくなったら、皆、安心すると思ってた」


テレーズが隣で言う。


「安心したかったんだよ」


「違うの?」


「安心は、欲しがるほど逃げることがある」


列の後ろで声がした。


「あの女、処刑の日に泣いていた」


皆の目が、通りの向こうの女性へ向く。


マルグリットという洗濯女だった。


マドレーヌも知っている。


前に、母の布を安く洗ってくれた。


「王党派か」


「息子を兵に取られたから泣いていただけだろ」


「それならなぜ、あの日に泣く」


テレーズが低く言う。


「泣く日まで決められるようになったのかい」


男が振り向く。


「かばうのか」


「馬鹿を止めてる」


「反革命を見逃せば、皆が危ない」


「反革命って言葉は、便利な桶だね。何でも放り込める」


マドレーヌは声を出したかった。


あの人は悪い人ではない。


そう言いたかった。


だが、列の目が怖かった。


ジャンがパンを渡しながら、そっと言う。


「知っている人でも、知らないふりをしたくなる日がある」


「それは悪いこと?」


「悪い」


「じゃあ」


「でも、人は怖いと悪いことをする」


エティエンヌはその日の午後、名簿を見ていた。


そこには王の名はない。


代わりに、市民の名が並んでいた。


仕立屋。


洗濯女。


司祭。


粉屋。


書記。


最後の職業に、彼は息を止めた。


隣の役人が言う。


「何を見ている」


「名前です」


「名前を見るのが仕事だ」


「いいえ。最近は、名前の向こうに首が見えます」


役人は顔をしかめた。


「不謹慎だ」


「不謹慎で済むならいいのですが」


夕方、ガスパールは広場を片づけていた。


マドレーヌが遠くから見ている。


彼は刃に布をかける。


テレーズがマドレーヌの肩に手を置いた。


「見るな」


「あの人、毎日ここにいるの?」


「仕事だからね」


「仕事なら、怖くないのかな」


ガスパールは彼女たちに気づき、少し頭を下げた。


その顔は、怖い人の顔ではなかった。


疲れた人の顔だった。


夜、エティエンヌは名簿を閉じた。


「王の名を書く方が」


彼はつぶやいた。


「まだ怖くなかった」


外では誰かが叫んでいた。


「疑わしい者を知らせろ」


王がいなくなった広場に、次の名前を求める声が響いていた。


 ******


櫻未來の歴史メモ


今回の出来事


王の処刑後も、戦争、食料不足、反革命への恐怖は消えませんでした。不安の向かう先は王だけではなく、隣人や司祭、商人、政治的に疑わしい人々へ移っていきます。



史実と創作


この話は橋渡し回としての創作です。王の処刑がすべての問題を終わらせたわけではなく、恐怖政治へ向かう空気を日常の会話から描いています。



櫻からの問い


人々は敵を見つけたから疑ったのでしょうか。それとも、不安が消えないから敵を必要としたのでしょうか。


 ******


この話が良かった、参考になったと思ったらお好きな数だけつけてください!

また見たい!と思ったらブックマークもお願いします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ