俺の初ライブ
ライブ会場には電車で移動した。
昔のPuzzleでは考えられない事だ。
こいつらは今の状況をどう思っているんだろう。
表情を消して、電車に揺られるメンバーたち。
Puzzleとして最後の舞台に向かう、その胸中は、俺には計り知れなかった。
ライブ会場は、街中のライブハウスだった。
ライブハウスにしては広いそこは、それでも一世を風靡したアイドルグループの記念ライブをするにしてはかなり規模が小さいと言えるものだった。
これがPuzzleの現状。
俺は黙って会場入りするメンバーの後をついていった。
客を入れる前の会場。
メンバー全員が黙々と楽器のセッティングをする中、俺はショウヤと今日演奏する曲の確認作業に追われていた。
時間的にリハーサルは難しい。
ぶっつけ本番という訳だ。
ここでPuzzleは終わる。
絶対、恥ずかしくないライブにしたい。
「ミチルが大丈夫っつってたんだから、大丈夫だよ。そんな力入れんな。振りを忘れたら自由に動きゃいいんだし、歌詞を忘れたら適当に俺に振れよ」
ぐっと暗い客席を睨みつけていた俺の頭を、ショウヤがポンポンと叩く。
「ショウヤ」
「楽しもうぜ。最初で最後のライブ」
ニッと笑うショウヤに、思わず俺は笑い返していた。
ライブは最高だった。
正直、暗いステージの上でスタンバイしている時は、ここにいるのが兄貴ではなく無名の俺だという事が分かったら、どんな反応が返ってくるのか、不安で仕方なかった。
俺に落胆されるのはいい。
けど、折角来てくれたPuzzleのライブを、聞かずに帰られてしまったら。
不安に押しつぶされそうな俺の耳に、ショウヤの低い声が聞こえた。
「行くぞ。アキ」
ヨウタの熱いギターの音が耳をつんざく。
続いてツヨシの滅茶苦茶激しいドラム。
リクの正確なベース。
ああ、Puzzleだ。
俺は胸が熱くなる。
その時、ライトがステージを照らした。
嬌声が、訝しげな響きを帯びる。
それでも構わずにショウヤが歌い始めた。
Puzzleのデビュー作。
どこか切ない旋律のメロディーライン。
俺はここにいないミチルの代わりにステップを踏む。
俺のダンスが始まると、訝しげだった空気が明らかに変わった。
ショウヤのパートが終わり、俺はマイクに向かい、ぐっと腹に力を入れ前方を睨む。
ミチルの代わりに、Puzzleのために、集まってくれたファンのために、俺は大きく息を吸い込んだ。
会場中が俺の声に息を呑んだように感じた。
にやりと、隣でステップを踏むショウヤが笑う。
俺の声に絡むように、ヨウタのギターが昇り詰めていく。
会場は、悲鳴のような大歓声に包まれていった。




