兄貴の失踪
失踪、失踪、失踪……。
俺の頭の中でシッソウという言葉が何度もリフレインする。
やっぱり、やりやがったか、兄貴。
いつか何かをしでかすとは思っていたが、まさか失踪とは。
無責任すぎるじゃねえか、兄貴……。
Puzzleというグループは、奇跡的に揃ったイケメンたちのおかげで、あっという間に全国レベルのアイドルグループにのし上がった。
当時平均年齢十六歳の七人グループ。
デビュー後一年も経たないうちに、全国ツアーを組むほど爆発的にブレイクした。
だが、彼らPuzzleは悲劇のアイドルグループだった。
結成後三年目を迎える頃、兄貴とツートップを務めていた正統派イケメンの一人が、突然結婚したいからとグループを脱退した。
悲劇はそれだけでは終わらなかった。
メンバーの一人が未成年にも関わらず、喫煙をしていたという事が公になり、Puzzleも活動を自粛する事態に陥ったのだ。
不祥事を起こした彼自身も永久活動停止。
彼は泣きながらメンバーに謝り、芸能界から姿を消した。
Puzzleはそれから数年、仕事のない日が続いた。
弱小芸能事務所の辛いところである。
メンバーはそれぞれバイトをしたり、路上ライブをしたりして、その日その日を過ごしていた。
きっかけは無料の動画サイトだった。
去年、彼らの路上ライブが動画サイトに投稿され、一気に人気が再炎した。
全国レベルの露出も増え、ああ、これで一安心だな。
そう思った時だった。
兄貴がテレビ局のプロデューサーを殴ってしまったのは……。
幸い、警察沙汰にはならなかった。
殴られたのは、癖が強いと評判のプロデューサーで、実際殴られても仕方のない暴言を常々吐きまくっていた人物だった。
同情の声が多数上がる中、兄貴は半年間の芸能活動自粛を発表し、Puzzleも必然的にまたもや活動停止という状況に陥った。
「今日はさ、自粛発表から丁度半年で、お帰りライブが予定されてたんだ」
ヨウタがポツリポツリと話しだす。
「集合時間に来てみたら、こんな手紙があった」
ヨウタは一枚の紙切れを俺に渡した。
『Puzzleは辞める。探さないで。 ミチル』
「……なにこれ。ふざけてんの?」
「お前の兄貴の字だろ?」
俺の怒りに満ちた低い声に、さらに地獄のように低い声でショウヤが答える。
「それは、そうだけど。くそっ。情けねえ。あのクソ兄貴」
俺は思わず近くにあったテーブルを殴りつけた。




