俺の未来
「その写真週刊誌が発売されたらまずは、事務所からの声明文を出す。そもそもアキは生年月日以外はプロフィール非公開なんだから、うちが謝罪をする必要はない。性別をはっきりさせなかったのは話題作りのため。けどアキのあまりの男らしさに、話題にもならなかったというだけのことだ」
社長は一枚の紙をひらひらと俺たちに振って見せた。
「まあ、少しの間騒がれるだろうけど、そこまで問題視される事じゃないと思う。問題はファンの方だね。アキの事を王子様だと思ってた子たちが、どういう風に受け止めるか」
pieceのみんな。
やっぱり、騙してた事になるのかな。
鉛を飲んだ気分とはこういうものなんだろうか。
「アキの分のコメントも用意してあるから、最後にサインだけして。こっちにはファンに対する謝罪文を入れてある。で、アキはしばらく活動自粛ね。一週間になるか、一か月になるか、それ以上になるか。それはファンの出方次第かな」
それ以上。
つまり、それは、俺がPuzzleに戻れない事を指すんだろう。
「Puzzleは、アキがいなくなればもう成立しない。それだけは確かな事だ」と、ショウヤの呟きが俺の胸を刺す。
「それも含めて、みんなは自分の言動に注意してね。アキは自粛だけど、他のメンバーは今している仕事をちゃんとする事。アキの事でコメントを求められる事もあるだろうけど、知らなかったで通すんだよ。特に、ショウヤ。下手に知ってて黙ってた事が公になると、お前も叩かれるし、アキももっと苦しい立場に立たされることになるからね?もし、Puzzleがなくなることになっても、みんなは自分の道を歩いていかなくちゃならない。その道を失うような事だけは避けるようにね」
社長の言葉にみんな声もなくただ黙って項垂れた。
そんな中、ミチルが社長に向かって深々と頭を下げた。
「本当に、ご迷惑をおかけします」
そしてみんなにも頭を下げる。
「みんなもごめん。もっとちゃんと話し合って、辞めるべきだった。アキの事も」
「ミチル、弁護士になるんだって?」
重くなる空気を破るように、ヨウタが世間話をするような調子で言った。
「お前はアキとちがって勉強ができたからな」
一言多いよ、ツヨシ。
「イケメン弁護士だねえ。儲かりそう。また奢ってよ」
そこ?そこなの?リク。
「夢を見つけたんだな。がんばれよ」
やっぱ、お前が一番まともだよ、ショウヤ。
兄貴はけじめをつけた。
俺は、どうけじめをつければいいんだろう。
騙していた事になるpieceは、こんな紙切れ一枚で俺を許してくれるんだろうか。
社長の差し出す用紙にサインをしながら、俺は胸一杯に広がる不安と闘っていた。




