謝罪
「ごめん。黙ってて」
俺は座り込んだまま、頭を下げた。
しばらく誰も口を開こうとはしなかった。
沈黙が痛いほど、俺の肌を刺した。
「……そっか~。だからライブの着替えとかアキだけ個室使ってたんだね~」
最初に口を開いたのはヨウタだった。
そう。
一番気を使ったのは着替えと風呂。
その辺りは俺が超恥ずかしがり屋だという設定にしてもらい、徹底的に特別扱いをしてもらっていた。
ライブの着替えには簡易試着室を用意してもらい、宿泊する施設では必ず個室を用意してもらった。
もちろん大浴場のお誘いはきっちり断り通した。
「心の垣根があるんじゃなくて、体の垣根があったんだね」
うまいこと言うね、ヨウタ。
「良かった。アキは僕たちと年が離れてるから、どこか越えられないものがあるのかと思ってた」
良かった良かったと笑うヨウタ。
いいのかよ、それで。
「それにしても女子力なさすぎじゃない?これだけ一緒にいて、俺たちに全然女を感じさせないなんて。ある意味ヨウタの方が女子力高いよね」
ツヨシ。
事実だけに言葉に棘がありすぎるぜ。
「でもさ~。なんでミチルはアキのこと、弟だって言ってたんだろ」
リクが首をかしげる。
それは俺が聞きたい。
「それはね~。その方が面白かったからだよ」
兄貴の声が聞こえるとは、俺もかなり精神的ダメージを負ってるな。
そう思った時。
「ミチル!!」
みんなの声に顔を上げると、視線の先にメンバー全員に囲まれる兄貴の姿があった。
ああ、みんな、やっぱり仲間なんだなあ。
俺はワイワイ口々に何か言いながら小突きあい、抱きあうみんなを見ていた。
今の俺と同じくらいからずっと一緒だったんだもんな。
一枚の完成したパズルを見てるみたいだ。
「アキ。やっぱり迷惑かけちゃったね。ほんとごめん」
気がつくと兄貴がこっちを見ていた。
「ああ。うん。兄貴のせいじゃないよ。多分ね」
そう、これは兄貴のせいじゃない。
兄貴のいなくなった夜、ライブに出たのは俺自身の判断だったし、性別を明かさず芸能活動をする事に同意したのも俺だ。
きっかけは兄貴かも知れないけどね。
「じゃあ、ミチルも来た事だし、そろそろ本題に入ろうか」
社長の存在を完全に無視していた俺たちは、その声に現実に引き戻されたのだった。




