おまけ
現実逃避ぎみにそんな事を考えているうちに、ライブDVDは終了した。
来月発売になるらしいDVDは、なかなかいい出来だったと思う。
「ん?」
そのトップメニューに、俺は不思議なものを見つけた。
「おまけ?」
メニューの端っこに『おまけ』とある。
なんだ?おまけって。
「あ、気がついた?見る?」
リクがそれをぽちりとクリックした。
それは関西地方のライブ映像だった。
アンコール前の歌を歌い終えて、メンバーは口々にありがとうと言って、pieceたちに手を振っている。
突然、キャーという悲鳴が場内に響き渡った。
ステージ上がズームアップされる。
そこには倒れた俺と、それを間一髪、抱きとめたショウヤが映っていた。
この日、俺は珍しく絶不調で、ライブの終了が見えてきたこの時、ふっと気が緩んだんだった。
一旦バックステージに引っ込んだけど、結局戻ってアンコールも歌えたはずだけど。
「なんで、これが……」
「まあまあ。見てたら分かるよ」
ヨウタの言葉に画面に視線を戻す。
ショウヤが俺をお姫様抱っこしてステージを去る。
残された三人がわざとのんびりした口調で話しはじめた。
『ショウヤが戻ってくるまで、ちょっとおしゃべりしようか』
『ごめんね~。みんな~。アキ体調悪かったみたい~。でも心配しないで~。俺たちがもっと楽しくしてあげるからね~!!』
『それにしても見事なお姫様だっこだったね~』
『僕もショウヤに抱っこされたい~』
『俺がしてやろうか』
またしてもいちゃいちゃしだしたメンバー。
俺はステージ裏にいたから知らなかったけど、こんな風に場を繋いでくれてたんだ。
ちょっぴり感動した、その時。
『なんだ?何してんだ?ショウヤ?』
突然、ステージに俺の声が響いた。
え!?なにこれ!?
『倒れたんだよ。今控室に向かってるとこ。おいこら。暴れんな』
『うるせえ。下ろせ。っていうか戻れ』
一瞬、静まり返った会場がわぁあああっと湧きかえった。
『あらら~。あいつら、ヘッドマイクのスイッチ入ったままだよ』
『なんか、ヤバい会話聞けるかもよ』
『え~。マジでヤバいんじゃない~?』
ステージ上の三人は滅茶苦茶楽しそうだ。
何も知らない俺たちの会話はまだ続いている。
『歌えるって!大丈夫だって俺が言ってるんだから!聞けよ!ショウヤ!』
『ダメだ。お前、自分の顔色見えてねえだろ。真っ青だ。戻ってもまた倒れる』
ドアの開く音がして、ごそごそと何かがこすれる音が響いた。
『何やってるんだろうね~。この無言も気になるね~』
ステージではヨウタが能天気な解説を繰り広げていた。
何って、控室に入って、ソファーに下ろされただけだよ!!
『静かにしてろ。お前は今日は充分にやった。後は俺たちがやるから』
画面を見つめる俺の顔から血の気がさ~っと引いていく。
そうだ。
あの時俺は……。
俺にタオルと飲み物を押し付けるショウヤの顔があんまり優しくて、俺は無性に悔しくて悲しくて、泣きながら叫んでいた。
『やだっ!!最後まで歌う!!ピースのみんなのために歌いたいんだ!!だから……置いてかないでよ』
嵐のような拍手が、会場を包み込んだ。
俺は氷のように固まったまま、画面を見つめていた。




