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第3話



 僕は流千奏さんに通信端末で流千奏さんのいる組織に入らせてほしいと頼むため連絡をする。


「流れやその時の気持ちはとても大切だ。俺の組織に入りたいと決意したのならすぐに行動に移したほうが良い。君の都合にもよるがもし問題無いのなら今すぐ会おう。そのまま組織に招待する。待ち合わせ場所はこの前の公園で良いか?」落ち着いた口調と声のトーンでそう言われ、いつもだったら何かを始める時、凄く緊張するはずなのに不思議と緊張せずに精神状態が安定している。


「わかりました!すぐに準備をして向かいます!」精神的には落ち着いているのだけど心は緊張ともまた違う若干興奮気味でその状態のまま準備をして家を飛び出し公園へと向かう。

 

 ドタバタしていたので親から心配と注意をされるが僕は上手く当たり障りのない対応をして家から出てそのままずっと走って向かい公園に着く。

「・・・!?」流千奏さんがすでに公園で僕の事を待っていた。その事に僕は驚く。この公園は僕の住んでいる家から近いからという理由で前回待ち合わせにしたはずだ。つまり僕から向かうほうが距離が短く近いという事になるはずだし、僕の方が先に着いているはずだと思っていたから驚いた。もちろん、流千奏さんが僕からの連絡を受けた時に僕の家からよりこの公園に近い位置にいたからという可能性も全くゼロではないのだけど。

 その僕の顔を見て流千奏さんはほんの少し柔らかい表情をして「すまない。驚かせてしっまたな。この事も追い追い話そう」と僕が何に驚いたのかをすぐに察する。

 そのまま一緒に歩き始めて人が全く通らない隠しカメラも設置されていない裏道に向かい周りの気配を読み取り他に人がいない事を確認してある端末を出す。

「この端末で俺の組織のある場所に繋がる入り口を発生させる事が出来る」端末を操作する。

「現実とは違う世界かなんかにあってそこへ繋げるって事ですか?!」入り口を発生させるという発言を聴きもの凄く驚いてしまい動揺する。

「少し違うな。間違いなく同じ世界での場所だ。ただし、同じ世界であっても次元は別、というのが正しい解釈だ」そう言い目の前に入り口となる空間が発生する。

「それと俺のいる組織、タイプオリジナルが集まって形成する組織を組織(レギオン)と呼ぶ」

「レギオンですか…。多数の集団っていう意味ですよね」普通に学校で習う単語なので意味を知っている。

「その通りだ。実際は多数の集団と呼べるほどには人数はいないのだがな」

 視線を僕の目から入り口に戻し「少し怖いかもしれないがここから入ってくれ」短く必要最低限の言葉を発して、まず僕から先に入れようとする。

「大丈夫なんですよね?!」もの凄く失礼な事を訊いてしまっているけどおっかなビックリで驚きと動揺を隠せず言葉にも出てしまう。

「大丈夫だ。速く入ってくれ」短く必要最低限の事しか話さずに安心させる、というのも人を安心させるのに時として誠実な対応だったりする。

「わかりました・・・!」僕はその空間に入る。

 僕のすぐ後に流千奏さんも入って僕の後ろについて空間内を歩く。

 こうして見るとワームホールみたいだし、実際に向かっている目的地の流千奏さんのいるレギオンの拠点と繋がっていて僕のいた次元と中間地点なのだと思う。

 ワームホールから外に出る。視界に入ってくるのはそこは工場とオフィスを併せて出来たような感じの場所だった。

 綺麗だけど綺麗すぎない、荒れているようで荒れていない、そんな感じの場所だった。

 そしてそこにはレギオンのメンバーである人達が各自立っていたり座っていたりで僕に視線を注ぐ。

 流千奏さんはその工場とオフィスが混ざったような空間内で僕と皆を見て「まずは全員の自己紹介から始めるのが正しいのだが自己紹介よりまず、俺達タイプオリジナルの事についてを説明したほうがメンバーの自己紹介も理解がしやすくなるから先にそちらからにさせていただく」ホワイトボードにペンで書きながら口でも説明が始まった。

「まず、基本として俺達タイプオリジナルはタイプノンオリジナルには出来ない力を持っている。一つ目は自分達の身体能力と五感などの感覚の強化だ。選人、君があの過激派が使っていたライフルの弾を躱せていた事は覚えているな。あれは感覚の強化を行って体感速度と反射神経が飛躍的に強化されて上昇していたからだ」わかりやすくホワイトボードにもその事を文字にして書く。人間は聴く事と見る事で理解力が飛躍的に上がる。また、百聞は一見に如かずという言葉があるが実際には見るより聞いた方が理解が早まり記憶しやすい事もあったりする。そのために流千奏さんは口から言葉にするのと同時にホワイトボードにその事を文字にして書いて聴覚と視覚の両方から教えてくれているのだろう。

「二つ目は、自分達に対して向けられたタイプノンオリジナルに対する干渉、および操作だ。使い方次第ではタイプノンオリジナルを簡単に殺す事も出来るし、自分への記憶をタイプノンオリジナルから消す事も出来る。忘れさせてから思い出させる事も可能だ。ただし記憶操作は下手に使い続けると記憶がメチャクチャになってしまい、部分的、断片的には覚えていても全部はこちらの事を覚えていない、という状態にもなってしまう事もあるので記憶操作はどうしても必要な時のみにした方が良い。俺からはあまり使う事を勧めない」わかりやすく絵に描いても説明してくれる。

 説明の本題とは関係ないが凄く絵が上手い。

「そして三つ目。これはこの前君が知りたがっていた俺たちタイプオリジナルが扱う武器だ。タイプオリジナルは自分に対して向けられたこの世界への反逆としての武器、反逆の意志リベリアス・スピリットを生成する事が出来る」絵で武器を描く。

「俺たちのこの身体能力と感覚の強化、自分に対して向けられたタイプノンオリジナルへの干渉と操作、武器生成、は全部この世界の事象の上書きによるもので“事象の上書き(オーバーライト)”と呼んでいる。そしてその事象の上書き(オーバーライト)の能力を、未知の意味を含む“X”と潜在能力であるPotential の“P”とそれらが複数系の意味を表す“S”で“XPS(サポス)”と呼んでいる。

「ここまでで何か質問する事はあるか?」僕の目を見てそう訊く。

 僕は挙手をして説明に対しての疑問を投げかける事を希望する。

「言ってみてくれ」短くそう言い促される。

「僕がよくデジャヴを体感するのは感覚の強化だったりしますか?」ずっと怖かった体験を訊く。

「デジャヴか。少なからず起こる事だしタイプノンオリジナルでも起こる事ではあるがどのくらいの頻度で起こる?」

「1週間に1~2回は起きます」不安を感じながら訊く。

「そうか。どうやら君は未来予知の力が強いみたいだ」冷静な口調で話しているが顔は少し驚いた表情をしている。

「未来予知ですか?!未来を見るというより起きてからこれ過去にもあったかな?ってなるんですけど」

「この世界はこの世界で起きる事がある程度全部決まっていてその決められた通りに我々人間や他の生き物は行動し生きている。一種のログ通りに行動して生きている、と言ったほうがわかりやすいな。そして恐らく、君はそのこの世界のログにアクセスして未来を無意識に見て先を読んでいる。そしてその読んだ出来事が起きた時に、これ過去にもあったかな?とそのログにアクセスして見た出来事が記憶として思い出す」

「それって起きてからでないとその未来を見て読んだという自覚が無く、実際に起きるまで覚えていないんですよね?なんか、使えない能力ですね」ガッカリとする。

「いや。そんな事は無い」ホワイトボードに絵と文字を書きながら「たしかにその未来予知は起きてからでないとその予知を思い出せない。だが、実際に起きてデジャヴを感じた時の瞬間はその未来を見ていた記憶の前後も一緒に思い出している。起きた事に対してまだ起きていない事と体験していない過去の記憶の両方を見ている事になる。デジャヴを感じた時に実際には体験していない事まで過去にあったように記憶にある事があるだろう?」

「はい。デジャヴ自体も体験していない事なんですけど、デジャヴが起きた瞬間はそのデジャヴの前後まで存在しないはずの記憶があります」

「この能力は使い方次第で大きなアドバンテージになる。ただし、使いこなす事は無理だろう。自分で意識して扱う事の出来る能力ではない」絵に描いて説明する。

「やっぱりアドバンテージにはなっても使い道はあまり無さそうですね」ははは、とガッカリしながら笑う。

 そして「これって僕の固有スキルかなんかなんでしょうか?」と訊く。

「いや。XPS(サポス)に固有能力は無い。全てのタイプオリジナルは全てのXPSを使える。ただし、XPSの強さには個人差があるし、得意不得意もある。これは学校などでもその学年の生徒が習う範囲の一般レベルの範囲として学べるだけの能力を有してはいても得意な教科もあれば不得意な教科もあるのと同じ感じだ。数学は計算力が高くて得意なのに語学である英語は全く出来ず覚えられないみたいな感じに認識してくれ」

「なるほど」わかりやすく説明してもらって理解する。

「生成できる武器はあの時の過激派の使っていたライフル等ですよね?」ずっと知りたかった事を訊く。それと同時に芦谷勇気と月夜野麗さんが頭を吹き飛ばされ殺されてしまった時の事を思い出してしまい吐き気が襲ってくるがどうにか抑え込んで平静を装う。

「そうだ。俺の使う拳銃もそうだし、ここにいる皆も全員生成して扱う事が出来る。ただし、先ほど言ったようにXPSの力が強い者もいれば弱い者もいる。当然生成できる武器の性能も強さに個人差が出る。あの時君が見たみたいに敵はライフルを持っていたが威力的には俺の拳銃の方が高い。一見ライフルという強力な武器を生成できても威力や性能は俺の拳銃より低い。つまりXPSの力は俺より低かったという事だ。必ずしも強力な武器を生成できたからといってXPSが強いとは限らない。能力や性能が低かった場合はXPSは弱い事になる。勿論、武器を生成する事が不得意だった、という可能性もあるが」かなりのスピードでホワイトボードに文字と絵を書きながら口でも説明していく。

「それって僕も生成出来るんですよね。XPSがオリジナル全員に使う事の出来る能力なんですし」実感が湧かないままそう発する。

「勿論だ」すぐに返される。

「他に訊きたい事は何かあるか?」

「いえ。特には」

「そうか。では、一通りタイプオリジナルについての説明は終わったところでメンバーの紹介を始めよう」ここにいる全員の目を1度に見て話を切り替える。

「まずは君からだ」皆に自己紹介をするように促される。

「僕は伊吹選人(いぶきせんと)と申します!趣味は読書で手先が器用な方なので絵を描いたり細かい作業なんかも得意です!仲良くしていただけたら幸いです!!」頭を下げる。

 そして自分の自己紹介をした時に改めて気づいたのはこの場にいるメンバーの人数が僕と流千奏さんを除いて3人いるという事に気づく。やっぱり緊張していたんだなぁ周りが全然見えていなかったもん。と心の中で反省する。

 3人の目を見ようとした時1人から目を逸らされる。

 !?!早速嫌われてしまった!?!と不安になる。目を見てくれないのは良く思われていないという事だし、どうしよう、と内心で焦りまくる。

 その目を逸らした人は「僕は人の目を見て話す事が苦手なんだ。不快にさせていたらごめん」と言ってくれる。

 良かった嫌われたわけではなかったんだ、と心の中で安堵する。

「僕も人と話すのは苦手ですし大丈夫です」

 目を逸らしたまま「ありがとう」と言い「僕の名前はカズラバネク。漢字で数に修羅場、音に苦しいって書いて数羅場音苦(カズラバネク)。僕の親は何を思ってこんな名前を僕に付けて姓も改名しないままこの名前を受け入れているのかが謎だよ。当然、僕はこの名前があまり好きではないから僕の事は漢字で数羅場音苦じゃなくてカタカナでカズラバネクって覚えてもらえると嬉しい」

「わかりました。カタカナでカズラバネクさんですね!」必死に顔と名前を覚えようと頭をフル回転させて記憶に使う。

 2人目は女子だった。

「私は桜咲理愛(おうさきりあ)って言います。姓が桜咲だから親が桜が咲いたように華やかで理知的で人を愛し愛されるような人間になるようにって付けててくれた名前です!」嬉しそうに笑顔で自己紹介される。「私の趣味はお菓子作りと楽器演奏。手先が器用だから比較的何でも出来るし楽器は全般使えるよ!」

「桜咲理愛さんですね!良い名前ですね!」また頭をフル回転させてすぐに覚えようとする。

「本当、僕の名前とは偉い違いだよね」カズラバネクさんがボソッと確かに聞こえる大きさの声でそう言う。

 !?!明らかに周りの空気が凍った。

「ごめん。そんなつもりで言ったんじゃないよ」

 流千奏さんは「すまない。ネクは決して空気が読めない訳ではないんだ。ただ・・・」

「?・・・」僕はキョトンとする。

「良いよ。言って。元々オリジナルだから周りの人達ととけ込めなくて周りから浮いていたけど僕はこんな性格でネガティブだからネクは根暗のネクだって悪口言われて虐められたりもした。虐めてきた本人達に虐めた自覚は無いのだろうけどね」

「子供って残酷ですもんね」いろいろあったんだろうなぁ、と思う。

「最後は俺の番だな。俺は心本明(しんもとあきら)」僕の目を見ながらそう言う。

「選人君は、周りにとけ込めなかったのはオリジナルだから当然として、性格は繊細でナイーブだけど心が壊れそうになるようなダメージには意外と結構丈夫で耐性があって、気持ちを切り替えるのは下手だけど自分の意志とは別に自然と気持ちが切り替わってしまう事は割と多く、意志は強くて基本的に自分の事より友達を優先してしまうタイプ、なんだな」

「ええっ・・・!?なんでわかるんですか!?!」取り乱すレベルで僕は驚いてしまう。

「俺は相手の目を見たらその人の考えと心が読めてしまうのさ」と特に凄い事をしている訳でも無いというように言う。

「奏さんの説明ではXPSは自分の身体能力と感覚の強化ですし、僕はノンオリジナルではないから干渉も操作も出来ないはずですけど!?」気配を感じる事が出来るのは元々人間や生き物には自然と気配が存在している。相手の呼吸音や心臓の音と鼓動の揺れ、体温などによる周りへの変化とはまた別で気配は確かに存在する。だからオリジナルはその発せられている気配を身体能力と感覚の強化で敏感に察する事は出来るが、考えと心が読めるのはそれとはまったく違った能力だ。

「当然の反応だな」と言い説明が始まる。

「俺のこれは能力ではなくて体質。特異体質ってやつだ。今読んだように選人君が今この場で直接思った事や考えていた事ではない事を読んだように、俺のこの考えと心を読むのは簡単に言うと共感覚、感覚が特殊な方向に強すぎるんだ。タイプオリジナルの感覚強化でも普通はこの感覚自体が備わっていないから強化しても読めるようにはなれないし、そもそも強化も出来ない」と説明される。

「凄い特異体質ですね・・・!」素直に驚く。

「まあ、超能力みたいな便利なモノでもないから無いほうが良いけどな。読みたくない事まで読めてしまうのはなかなかに辛いから。とは言えこれは俺の強みになるし使えるなら使えるで上手く使って物事を有利に進めるように使わせてもらうけどな」ニヤリ、と笑う。

 自分の体質を受け入れてそれを自分が生きるために利用する、この人はメンタルが凄く強い方なんだなぁと思う。

「さて、各自自己紹介も終えたところで選人君、君にもタイプオリジナルが使えるXPSを早く使えるようになってもらいたいしいろいろ教えたい。この短期間でいろいろあって大変だろうが頑張って欲しい」

 流千奏さんから一切の不誠実さも感じさせない真面目な表情でそう言われ僕はこの人についていこうと強く思えた。

「そして、タイプオリジナルとは、タイプノンオリジナルとは何なのか、タイプオリジナルとタイプノンオリジナルとの違いとは?言える事はタイプノンオリジナルはこの世界を機能させるために作られた、存在していて存在しない偽物の存在で、タイプオリジナルはこの世界で辛く苦しい思いをするために神に堕とされたオリジナルの存在という事だが、どちらにもお互い心も感情も気持ちも持っていて意思がある、それなのに存在としての根本的な作りが違うその違いは何なのか?タイプオリジナルはオリジナルの個体としての存在で本当に生きているのはタイプオリジナルだけなのか?タイプノンオリジナルは人として見るのではなく世界の一部として見るほうが正しい認識とされているが果たしてそれは本当に正しい解釈なのか?それはここにいる全員が途方もなく長い時間を掛けて答えを知っていくしかない事なのだと思っている。もしかしたら一生かけて知る事なのかもしれない。或いは一生かかってもわからないままの可能性もある。それを知っていくためにもこの組織でメンバー同士常によく考えて学んでいってほしい。最後に選人君、このレギオンの名前は“プレイス オブ ソーレス”と言う。ここが君の“心の拠り所”になれたらと思う」

 誠実さと柔らかさのある表情でそう言ってもらえた。



 その後、すぐにでもXPSの使い方を覚えるべきだが今日は色々ありすぎて疲れているはずだから1回家に帰ってしっかり休むと良い、と言われこのプレイス オブ ソーレスのある空間に繋がるための次元移動装置を僕にも渡される。名前はDGSと言って、今まで渡していただいていた通信装置などの機能も全部含まれている万能機器で、デザインは少し変わったスマホという感じだ。スクリーンが付いていて地図を映し出してあらかじめセットしていた座標ならある程度どこにでも出入り口を発生させられて移動する事も出来るみたいだ。

 だけど座標をセットするのにはその次元にいる時にじゃないとセット出来ないらしく、つまり帰る時にセットするのではなくて入る時に帰りの場所をあらかじめ決めてセットしていく必要があるという事だ。

 今日この空間に僕を入れさせるために待ち合わせの場所を決めて会う事になったけど僕の家からの方が近い場所なのに流千奏さんの方が早く着いていたのは元々高い確率でまた僕に会う事となる、と思っていて待ち合わせ場所である公園をプレイス オブ ソーレスからの出口としてセットしておいたからだと説明された。本当に気を遣ってもらいっぱなしだ。



「初めての仲間・・・なのかな?」その日の夜、自室で1人そう呟く。

 友達とも違う初めての新しい人間関係。

 友達だったり、仲間だったり、好きな人や嫌いな人、良い人や悪い人、優しい人や意地悪な人、楽しい人や怖い人、親と子、大人と子供、教師と生徒、上司と部下、人って凄く色々な人がいて色々な関係があるんだな、と当たり前の事だけど、今まで人と交われた事が無かったから頭では分かっているつもりになっていたそんな当たり前の事を改めて自覚して認識出来るようになった。

 たぶん普通は小学生低学年くらいの頃に学べる事なんだよなぁ。それを僕は今になって理解するのって相当周りからズレているなと思う。この部屋には僕しかいないんだけどなんだか凄く恥ずかしくなって今の僕を誰にも見られたくないと思ってしまう。人と交われなかったのはオリジナルだったからとはいえ普通の人が普通に知っている事を遅れて知る事になるというのは恥ずかしいし悔しい気持にもなる。

 学校は出来るだけ早く授業を再開しようと大人達が一生懸命動いているけど生徒が沢山死んでしまったし、生徒だけでなく授業を開いて勉強を教える教師も沢山死んだ。教わる側だけでなく教える側も沢山死んでしまったのでそんなにすぐには学校は再開できない。被害が大きすぎた。

 そして前に言ったようにこうしたイレギュラーな事が起きたから中学校では勉強が出来ませんでした、は進学する際もその先の就職活動でも通用しないし、誰もハンデを与えてはくれない。世の中は常にシビアだ。

 芦谷勇気と月夜野麗さんの事を忘れられる事はこの先も絶対に無いだろう。それでも頭を切り替えて勉強を始める。停滞は死を意味する。生きている限り常に前に進んでいくしかない。

 学生の本分は勉強とよく言うけど、何をもって勉強なのか、大人も社会人も生きている限り一生勉強だと思うし常に学んでいく事が生きているという事だと僕は思っている。

「本当だったらどんな仕事に就くのかを考えて進路を考えて決めるはずだったのにこの数日でオリジナルとノンオリジナルの事や世界の在り方を知って全く違う事を沢山考える事になっちゃったな」疲れがどっと押し寄せる。

「それでも生きていくために、抗い続けないといけないんだよなぁ」ハアーと溜息を漏らす。

「そもそも生きていくって何なんだろう?死なない事が生きているって言う事か?そうじゃないと思うんだけど、そもそも生きる意味って何なんだろう?」生まれてくる事に意味は無いと思っていたけど辛く苦しい思いをするためにこの世界に産み堕とされたみたいだし、生きる事にも何か意味があるのだと思うし、意味が欲しい。

 哲学的な思考に入ると沼なので勉強を再開する。



勉強を終えてベッドの上で横になり「初めての仲間か・・・!」と1人呟きプレイス オブ ソーレスでの新しい生活がこれから始まる。

 何を知っていく事になるのか、それは誰にもわからない。

 出来る事はその日その日を無駄にせず一生懸命生きる事。生き物である以上それは絶対だ。だから後悔しない生き方をしなければいけない。だけど将来のために今の時間をしたい事に使わずしたくない事に使ってそれを終えた頃には事故や怪我や病で死んでしまっている事もある。先の事は誰にもわからない。

 結局のところ後悔のしない生き方なんて出来たかどうかは後からしかわからない結果論なのかもしれない。


「それでも僕は生きてく・・・!!」



第3話 プレイス オブ ソーレス



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