04.補給も休息もなしとか、ブラック企業でももう少しマシだぜ
魔族領からの撤退も考えたが、魔王討伐という使命が重くのしかかっていた俺たちは、このまま進行することを決断した。
そして、俺たちは日に日に絶望の度合いを深めることになる。
どれだけ進もうが、建物は一つもない。
ただの廃墟さえ見当たらない広大な大地だ。
「……ねえ、イグナート。
その地図…… 本当に合ってる?」
ルカスが眼鏡を拭きながら聞いた。
俺が持っていたのは、王国が百年かけて編纂したという精巧な地図だ。
そこにはいくつかの「集落」と「拠点」が記されていたが、実際にそこにあるのはただのクレーターか、毒々しい紫色の沼地だけだった。
魔族領に、人間のための施設なんてものは最初から存在しないんだ。
「……ああ。
合ってるよ、ルカス。
ただ、地図を描いた百年後には、全部無くなってた…… それだけだろうな」
俺たちは一日中歩き続け、ようやく夜を迎える。
だが、あそこには「夜」なんて概念はない。
常に黒ずんだ薄闇が支配し、どこからともなく這いずるような音が聞こえてくる。
一秒たりとも、熟睡なんてできたことはなかったんだ。
「ぐ…… あ……」
ボルドスが、大きな斧を握ったまま、座った状態でうなされている。
熟練の戦士である彼でさえ、常に「何か」に監視されているという緊張感に耐えきれなくなっていた。
いつ、どこから、どんなバケモノが襲ってくるか分からない。
魔族領のバケモノは人間領のそれとは比べ物にならないほど凶悪で、かつ巧妙だ。
「補給はどうするの?」
メルが震える声で尋ねる。
持ってきた保存食は、すでに底をつき始めていた。
「近くに街はないのか? そこで買い足せれば……」
ボルドスがかすかな希望を口にしたが、俺がそれを無惨に打ち砕く。
「街……?
ああ、あったよ。
数キロ前に……
だが、そこにいたのは商売人じゃなく、生きた人間を肥料にしようとしてる魔族どもだけだったがな」
魔族の街は、人間にとってはただの巨大な罠だ。
入った瞬間に囲まれ、遊び半分で解体される。
慈悲も対話の余地もない。
あいつらにとって俺たちは、ただの「珍しい食材」にすぎないんだ。
俺たちは自分たちの足以外の移動手段を失い、自分の手持ち以外の物資を失った。
「正直さ……
一ヶ月も歩けば、一回くらいは宿屋に泊まれると思ってた。
ふかふかのベッドで、温かいスープが飲めると思ってた。
……だが、そんなのは甘い夢だったんだよ」
俺は欠伸を漏らしながら、謁見の間の冷たい床を見つめた。
「補給なし、睡眠なし、休息なし。
……どこぞのブラック企業だって、もう少しマシな条件を提示するぜ。」
俺たちは一ヶ月後にはみんな目が血走って、誰が魔物なんだか自分でも分からなくなってた。
陛下が絶句し、シルフィーが震える手で自身の膝を握りしめる。
「そんな…… では、どうやって生き延びたというのだ」
俺は、ポーチから取り出した魔獣の干し肉を、わざとらしく彼らに見せつけた。
「どうやって?
……決まってるだろ。
目の前にいたバケモノをぶち殺して、そいつを食ったんだよ」
それは、さらなる地獄への入り口だった。
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