表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王を殺して、人でなしになる。  作者: 日向ぼっこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/7

03.境界線を越えたら、空気が毒とかいうクソゲーが始まった

 人間領での旅は、今にして思えば甘ったるいお伽噺(おとぎばなし)だった。

あのときの俺たちは、希望という名の盲信に酔いしれていた。

 

 ボルドスは大きな斧を担いで豪快に笑い、ルカスは知的な眼鏡の奥で皮肉をこぼす。

そしてメルは、いつも穏やかな笑みを絶やさなかった。


「イグナート、急ぎすぎよ。

 たまには足を休めましょう」


そんな彼女の小言さえ、あの頃は心地よいリズムに聞こえていた。

俺たちは『勇者一行』という完璧な歯車だった。

世界中の期待を背負い、輝かしい未来へと突き進んでいた。

その歯車は魔族領との「境界」に足を踏み入れた瞬間に、一瞬でガタガタに崩れたのだった。


 魔族領との境界線。

そこにあったのは、ボロボロになった長い石壁と門だった。

一歩向こう側は、うっすらと黒い霧が立ち込めている。


「なんだか、嫌な空気ね」


メルが聖印を握りしめ、不安そうに言った。

俺たちは「魔物の住処だから少し不気味だ」くらいにしか考えていなかった。

その程度の認識だったんだ。

だが、その一歩を踏み出した時。

 

「――う、がっ…… あ……っ!」


 最初に膝をついたのは、魔術師のルカスだった。

彼は喉を掻きむしり、激しく咳き込む。

吐き出された唾液には、すでに血が混じっていた。


「ルカス! どうしたの!?」


メルが駆け寄るが、彼女も自分の胸を押さえてその場に崩れ落ちた。

 

 そこは「魔力」が濃すぎる場所だった。

空気そのものが魔力に侵され、高密度の毒となっている。

吸い込むたびに、肺が鋭利な刃物で抉られるような感覚。

鼻から脳へ、ドロドロとした熱い毒が流れ込んでくる。

 

ただの呼吸が、全力疾走した後のような息苦しさと激痛を伴う。

それまで当たり前だと思っていた「生きるための動作」そのものが、緩やかな死へのカウントダウンへと変わったんだ。

 

「……はあ、はあ…… 何だ、これ…… 何だっていうんだよ!」


ボルドスが大きな声を上げた。

だが、その声も霧に吸い込まれて消えていく。

 

視界は数メートル先さえ不透明。

空はどんよりとした重い闇に覆われ、太陽なんて魔族領に入ってから一度もお目にかかれなかった。


「メル、頼む…… 浄化を……っ」


俺が掠れた声で頼むと、メルは顔を真っ青にして魔法を唱え始めた。

彼女の浄化魔法によって、かろうじて俺たちの周囲の「空気」だけが呼吸可能なレベルまで落ち着く。

だが、それは同時に彼女の魔力を一秒も休むことなく削っていくことを意味していた。

 

「大丈夫…… 私が、守るから……っ」


震える手で聖印を掲げる彼女の姿。

それが絶望という名の物語の本当のプロローグだったんだ。

 

「境界を越える前の俺たちは『魔王を倒す』なんて意気込んでた。

 ……だがな、あそこに入った瞬間に俺たちの唯一の願いは『息がしたい』に変わった。

 ただそれだけに変わったんだよ」

 

 俺の言葉にシルフィーが震える手で口元を覆う。

俺が「シルフィー」と呼ぶたびに彼女の肩が小さく揺れるのが分かる。

 

「……そんな。

 空気そのものが毒だなんて……」

 

「クソゲーだろ?

 最初からまともに戦わせる気なんてないんだ」

 

俺は、ポーチの中の干し肉を一口噛み砕いた。

硬くて味気ない肉。

だが、これだけが俺を生かした。

地獄の始まりは、まだ序の口にすぎない。


「面白かった!」

「続きが気になる!」

「今後どうなるの!?」


と思ったら、

下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いします!!


面白い!なら☆5つ、つまらない!!なら☆1つ、

正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です。


ブックマークも頂けると本当にうれしいですし、はげみになります!

よろしくお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ