異変
関田はおお、と感嘆の息を漏らした。
ふふ、やはり俺には才能があったな。
「いや、水溜りに氷張ってるだけじゃん。どした。」
「ちげえよ!俺が氷にしたの!」にぶいな、全く。
「この季節には珍しいがな。」といって関田が氷の上に立った。
ん?と首を傾げている。やっとわかったか。
「おい!」ふふふ、なんだい?
「この氷、中まで氷だ!張ってるんじゃねえ!」
正直、自分でも驚いた。俺の能力は、対象の水を氷にしてしまう能力なのか?
「魔法は信じらんねえが、これもしんじらんねえ。」
「だから、それは俺がやったって言ってんだろ。」疑り深いなあ。
「すげえな、じゃあ、あそこの水溜りも凍らせてくれよ!」
「おっけい!まかしんさい!」よし、と気合を入れて
「凍れ!」…あれ?何も起こらない。
「凍れ!」…あれ??何も起こらない。
「凍れ!」…あれ???何も起こらない。
「凍ってお願い!」…なんで?何も起こって…「るわ」
「え?なんて?」関田が聞き返す。
「凍ってるわ!このカエルが!」なんと水溜りの近くにいたカエルが凍っていたのだ!
さすがの関田もこれには衝撃を受けたようだ。
まじか…と固まっている。
「それもそうだけど、俺たちこのままだと遅刻だ…。」
…え?「まじか!」俺たちは走って学校まで行った。
結果、ギリギリセーフで学校についた。
「おい、椎名。今日は珍しくぎりぎりだったな。どした?」
クラスで中のいい笠田が話しかけてきた。
今日もガリガリだなーと思いながら「秘密だ。」とだけ言っといた。
そして、すぐに1時間目の数学が始まった。
中山優子先生の熱血指導の中、放送が入る。
『校内放送です。校門前に不審者が出没しました。先生方は〜』
クラスがざわついた。中山先生が「静かに!」といって一度は落ち着くが
やはりざわざわしている。
今なんじゃないか。そう思った。
今がこの力を行使するときではないのか、そう思ったのだ。
水溜りも、カエルも元に戻せた。この能力は思いのままに動かせる。
(ヒント:天才だから)
今ここで不審者を凍らせて捕まえれば一躍クラスの、いや学年の、いや学校の、
いや町の、いや区の、いや市の、いや県の、いや地方の、いや国の、いや世界の、いや銀河系の、
いや宇宙の、いやこの世のヒーローになれる!
「先生、ちょっと行ってきます!」クラスを飛び出した。
どこ行くの!という声も振り切って。
ひたすら直進した。
俺はいままで守られてばかりだった。
幼稚園の頃はいじめられっ子で、そのたびに関田や幼馴染の石田がたすけてくれた。
関田はその頃から身長が高くて、5歳のときに115センチあった。
石田は小柄な女子なのだが、威圧的な言動で周囲を圧倒していた。
二人は仮面ライダーよりもかっこよかった。
二人は悟空やケンシロウ、承太郎よりもかっこよかった。
二人は俺のヒーローで目標だった。
あと一人いたような気がするけど…思い…出せない。
不審者、改めR区連続殺人事件の犯人に刺されて意識が朦朧とする中、
思い出すのはあの頃のこと。
思い出せないあの子のこと。
「りゅーくん」って呼んでくれた、いつも味方でいてくれた、お姉ちゃんみたいだった子。
俺は、僕は、思い出せないまま死ぬのか。
そっか。
「そんなの嫌だ」




