ハウススノーと午後のひととき
昼食を食べ終えてから部屋を見回していると、棚の上にほこりがたまっていることに気付いた。最近掃除をほったらかしにしていたツケだろう。
掃除するのは面倒だし、最近やってみたかったことを試してみよう。
均一に積もっているほこりを指でかき集め、その中にある綿ぼこり以外のゴミをピンセットで取り除いていく。一般的にはすべてゴミというだろうけど、それは粋じゃない。そもそもハウスダストという言葉も、字面だけ見ればスターダストと変わらないはずなのに、どうにも印象が悪い。世間一般の常識が、ハウスダストという呼称に余計な先入観を与えてしまっているのだ。私は不純物を取り除いた、目の前の灰色の物体をハウススノーと呼ぶことにした。
たらいを取り出してきて、漂白剤を入れ、ハウススノーを漬け置きする。
好きな音楽を聴きながら昼寝していると、あっという間に一時間が経過し、ハウススノーは見違えるほどに白くなっている。よくもみ洗いして、漂白剤を洗い流し、ドライヤーで念入りに乾かす。完全に乾いたことを確認すると、私は微笑んだ。
グラスを持ってきて、私が大好きな飲み物――メロンソーダを注ぐ。その上に、ハウススノーをちょこんと置いてみる。
一瞬だけ、美しいグリーンと、まぶしいまでの白さを持ったハウススノーが対峙する。それはまるでエメラルドグリーンの海の上に広がる雲のようで、しばしその美しさに見とれそうになる。
けれども次の瞬間に、ハウススノーに液体が染み出し、くすんだ緑色になってしまう。苦労の上に広がる、一瞬の美。それを見られただけで、今まで苦労してきたかいがあると思えた。
最後にハウススノーが口に残ってしまうと飲み込むのが困難になりそうだったので、メロンソーダで勢いをつけて一気に飲み込んだ。もっさりとした感触がのどを通っていく。
わたぼこり、いやハウススノーのもとは、家じゅうの綿や布の断片であるはずだ。それらの主成分であるセルロースは、胃腸の調子を整え、お通じを改善してくれる食物繊維の一つだ。
家から出たハウススノーが、最後は私の体をきれいにして去っていく。そう考えると、家と一つになって生きているという実感がわいてきて、うれしかった。
その日の夜、実は毛布が化繊だったことに気付くのはまた別の話。




