魔法少女株式会社
――変身! ハイパーミラクル★超プリプリ天使モード!
魔法少女に憧れていた。
魔法少女は魔法の力で悪から私たちを守ってくれていた。悪者を見つけた時に、すぐに駆けつけて来てくれて街の平和を守っていた。
引きこもり過ぎてどうやって外に出ればいいのか忘れてしまった。でも、夜中に何も食べるものがなくなったから出ることにした。コンビニまでのわずか二百メートルの外出。勇気を出して外に出た。
コンビニの店員にきょどりながら、ホットスナックの名前を伝える。昔はもっとスムーズにチキンを買えた。どうしてこんな風になっちゃったんだろうと思って涙が出そうになった。
道端に大きなゴミが落ちている。なんとなく、拾い上げてしまう。少し昔のパッケージの炭酸飲料の空き缶だった。足元に戻した。
夜道に声を掛けられてしまった。単純に人と話すのが怖くて、ちゃんと話せているかどうか不安だった。
ゴミを拾わない私が、ゴミ溜めの中から拾われた。
「君、魔法少女に興味はない?」
そして、魔法少女になった。
やってみると、案外悪くない。みんなからは崇められる。最初は笑顔も作ったし、可愛げに振る舞おうとした。でもだんだんとありのままの私が受け入れられ始めた。敵機関に軽い暴言を吐き、それは「毒舌キャラ」としてウケた。
私が戦場に立つと、私の姿を見ようと人が集まった。かつて憧れていたように、少女に憧れを与えていると実感した。博士は私のことをしっかりとサポートしてくれた。
私がこんな存在になれたのは博士のおかげだ。博士がいてくれたから、今の私がある。そんな私を見つけてくれて、育ててくれた博士が大好きだった。
幸せだった。
私が、私の存在が、認められている。今まで隠してきた素を出して、それがみんなの心に響いている。
本当に、幸せだ。
幸せ過ぎた。
だから、私は博士を背後から刺した。
心臓を貫いて殺した。そのために包丁を新聞紙に包んで博士の家に行った。博士は何も言うことなく、寂しそうな目を向けて息絶えた。
みんな私に期待するから。
何にもない空っぽの小さい器にみんななんでもかんでも入れてくる。そんなの溢れたり、破けたりして当たり前だ。
幸せになるためには器が必要なのだろう。受け入れる器が。
幸せをとっておくためのコップが必要なのだ。私はもとから小さな容器だったから、それでも入れ続けるから、その重さに絶えられなかった。
私は逃げた。組織に追われている。
気がついたら四畳半に戻っていた。布団をかぶって見えない敵に怯えていた。
私にはお似合いだと思った。
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フセハラミュージックエンターテイメント株式会社の事務所に一通の手紙が届いた。
差出人不明だったが、内容を見たら誰が送ってきたのかすぐに分かった。
「魔法少女は、もうできません」
8/2実施分は以上です。
次回開催は本日(8/10)予定のため、作品数にもよりますが明日から投稿できると思います。




