26 【計画】
「よし、作れる!」
この日、悠依はお菓子を作っていた。
昨日の陽翔の話を聞いたあと、“遥季の家に行くなら今までのお礼も兼ねて何か持ってきたいな”と思った悠依は、早起きして材料を探したのだ。
~+*―数時間後―*+~
「ちょっと、作りすぎたかも……?」
そう呟いた悠依の前にはクッキー30個、ベイクドチーズケーキとアップルパイが1ホールずつ並んでいた。
遥季の家に行くのは10時。
現在時刻は9時30分。
考えている時間もない、と思った悠依はとりあえずクッキーを持っていくことにした。
ピンポーン
『はーい』
「あ、悠依です」
『悠依? ちょっと待ってて』
扉の向こうからパタパタと足音が聞こえた。
「おはよ。悠依」
「おはよう、遥季」
「兄貴まだ来てないんだ、少し待ってて?」
「うん。あ、遥季、これ」
「ん?」
「クッキー、いろいろお世話になったし、迷惑かけちゃったから。そのお礼に」
「マジ!? サンキュ! でも全然気にしなくていいぜ? 困ったときは俺が助けてやるから、これからも頼れよ?」
「ありがと。じゃあこれからも甘えさせてもらおうかな?」
「おう! 任せろ」
「遥季なんかに任せられるかよ」
突然現れた陽翔は遥季の頭目掛けて手刀を落とした。
「痛っ! 何すんだよ、兄貴!」
「陽翔さん!」
「やぁ、悠依ちゃん、昨日ぶりだね」
「“やぁ、悠依ちゃん、昨日ぶりだね”じゃねぇんだよ! いきなり何弟の頭殴ってんだ!」
「ま、まぁまぁ、落ち着いて。計画立てるんでしょ?」
「よし、じゃあ遥季、架威と薙癒だして」
「あいつらも参加するのか?」
「――――昨日言ったはずだけど?」
「そうだっけ?」
「いいから早くだして」
「――――架威! 薙癒!」
「なんです主」
「なんだ」
「これで全員そろったな」
陽翔の話によると、陽翔が貰ったのは天織と同じ大陸にある天曳という都市にある温泉の宿泊券。
天曳に行くには飛行機で片道6時間掛かる。
「で、いつ行こうか」
「私はもう特に予定もないのでいつでも大丈夫ですよ?」
「俺も」
「じゃあ僕の予定を考慮すればいいのかな?」
「兄貴なんかあんの?」
「一応仕事がね。―――ってことで、出発は3日後。4泊5日ね」
『4泊5日!?』
「うん。 あれ? 言ってなかったっけ? 貰ったのは良いんだけど長いんだよね、期間が」
「本当に長いですね……」
「あと、僕、一応仕事もするから昼間は遥季中心に観光しててね」
「はぁ!?」
「なんかあったら僕に電話して良いからさ」
「……わかったよ」
結局、この日はみんな夜まで遥季の家にいたのだった。




