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青い落雷  作者: KaJyun
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4


 近衛の職に就き、順当に出世をした。

 早い方ではあったろう。


 それなりの重役に就き、ようやく安定が得られたころ。


 政変があった。

 長らく重用されてきた大臣が、どうしたことか、玉座を狙って狼煙を上げた。


 国は真二つに割れた。

 東西南北のあらゆる領地が大義名分を得、どちらかの陣営を名乗り、大手を振って戦をした。


 自分は家の派閥を裏切って、対立派閥へ属す。

 兄との談話の結果である。


 どちらが勝っても家が残存するように。


 その日から自分と兄は袂を分かった。自分は皇家への謀叛を企てた派閥に属した。

 叛乱軍は、勢いのままに皇都を占拠し、皇城を包囲した。


 皇家は都落ちを余儀なくされた。

 帝も皇子もその奥方も、東の方へ落ち延びた。

 上なく尊き御方が。盗人のように闇夜に紛れ発ちゆくさまは、まことに憐れとしか言いようがない。


 都には諸橋(もろはし)家だけが残された。

 帝の正妻の出身の家である。この国で五本の指に入る、折り紙付きの名家である。


 帝に代えて、都の守りを申し仕る。帝の正妻と兄である当主がそう申し出たそうである。


 やがて叛乱軍は城に突入し、制圧した。

 諸橋家の人間を捕らえよ。

殺してはならない。

 発見次第生捕りにせよ。

 指令が下り、自分はそれに従った。


***


 城の男衆は全て捕らえた。

 残るは、城下の屋敷にいる女子供だけであった。


 止める家人を突き飛ばし、屋敷へ踏み込む。


 逃げ惑う人間を追い回し、牢へと移送した。

 第二皇女だけが見つからなかった。なんでも、彼女は帝から全権を託され、諸橋の人々と共に都に残ったそうな。

 体の良い捨て駒だ。


 彼女は変わり者であるという噂は巷に流布していたが、自分は彼女の実際を目にしたことはなかった。


 曰く、男のような格好をして城を練り歩いた。

 自室で、蛇や虫や蛙を籠に入れて飼育している。

 嘘か本当か判別のつかない噂話がまことしやかに囁かれていた。


 自分は囚人の移送を部下に任せ、彼女の捜索に当たった。

 


 庭に出る。

 流石は最上級の貴族の屋敷、贅を凝らしてあるのがよくわかる。

 広々とした草地に丁寧に刈り込まれた庭木。戦の中でも庭師がよくよく管理を怠らなかったに違いない。


 くねりゆく砂利道を辿る。


 突き当たりには、背の高い木に囲われた庭園があるようだった。


 入り口を潜る。

 ちょうど木の下に設えられた長椅子に、美しい黒髪を靡かせた女人が寝そべっていた。長い足を地に投げ出し、ぼんやりと空を見つめている。

 飛来した蝶を追いかけ、上体を起こし、可憐な蝶に手を伸ばす。



 雷が落ちたと思った。

 花に囲まれて座るあなた。


 髪は自分が見たどんな髪より艶やかで。

 シャツから覗く細い首筋。


 あなたの耳が静謐への乱入者の気配を捉え。

 首を巡らせ。

 あなたの青い目が自分の方を向いた。


 その瞬間、僕はあなたのものだった。



 「やあ、久方ぶりだね。」

 彼女は言った。


 「この姿で会うのは初めてだろう。これは、澄華というんだ。仲良くしてやってくれ。」

 そして、優美な微笑を見せた。


 「我々の家では、幼い頃は男は女として、女は男として扱われるんだ。健康に育つための呪いみたいなものだね。」


 二の句のつげない自分に対して、彼女は「騙して悪かったよ。」と言った。


 騙すなら、騙し通して欲しかった。

 最後まで、隠し通して欲しかった。


 そうすれば少年期の甘美な思い出として、あの頃を抱えておけたのに。


 柄にもなくあなたとの明日を望んだりはしなかったのに。


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― 新着の感想 ―
1話は短くて読みやすいね、文章は若干難解だけど、あなただけの味があっていい。
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