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ある日突然、奥方様からもう来なくて良いことを告げられた。
澄人さまは御自分の居られるべき場へ戻られるのだ。それのみ告げられた。
どのようなお生まれで、なぜ自分のような者が関わりを持たせていただいたのか。
わからぬままであった。
心の備えも儘ならず、仕えた主君に別れを告げた。
跪き、叩頭し、暇乞いをした。
砂利で擦れて血が滲むほど強く地へ伏せた。
澄人さまは笑って、ただ「ありがとう」と仰った。
自分も御礼を申し上げたつもりであったが、嗚咽の混じった汚い礼は、果たしてあの方に伝わっていたのだろうか。
あの方のもとへ通わずとも、当たり前のように桜は散り、紅葉は色づき、やがて落ちていった。
それからは言いようのない侘しさを紛らすように武芸に打ち込んだ。
大会でどのような成績を修めても、
「さすが私の騎士だ。」と、
頭を撫でてくださる優しい手はない。
喪失感を埋めようと、益々努力にのめり込んだ。




