呼び方
また別の日の堕落部、僕と霞ヶ原先輩、竜ヶ岬、志穂の4人での出来事。
「『お兄ちゃん』と『兄ちゃん』、皆さんどっちの呼び方がいいと思います??」
志穂がまたくだらないことを言い始めたなぁと僕は気にせず漫画のページをめくる。
「それでしたら『お兄ちゃん』ですね。志穂さんのお兄様への愛情が伝わる気がします!」
竜ヶ岬は兄心を凄くよく分かっている。
確かに、その方が志穂からの愛情が直に伝わってくる気がする。
「竜ヶ岬先輩は『お兄ちゃん』派ですか……」
志穂がいつになく神妙なおももちで話を聞いている。
その感じで学校の授業も聞いて欲しいものだ。
「志穂くん『お兄ちゃん』と『兄ちゃん』以外の呼び方はダメなのか?」
さすがは霞ヶ原先輩、指摘が鋭い。
その鋭さで鰹節を削ったら凄くいい香りがするのだろう。
「そうですわね。例えば『お兄様』はいかがでしょう? 尊敬の意がすごい伝わると思います!」
竜ヶ岬からその提案が最初に出るということは、もし竜ヶ岬に兄がいたなら『お兄様』と呼んでいるのだろうか。
「いや、別にお兄ちゃんのこと、そこまで尊敬してないです」
僕の心の涙がエンジェルフォールのように流れ落ちる。
「では『汚兄ちゃん』というのはどうだろうか?」
霞ヶ原先輩がさらっと酷い提案をしてきて、おもわず2度見どころか4度見くらいした。
「いや、それでも志穂にとっては大切な兄なので──たまにみすぼらしい時もありますけど。」
「その最後の言葉は必要なのか!?」
どうやら、ツッコミを心の声で我慢する限界を突破してしまったらしい。
「それなら『にぃにぃ』はどうだろう?」
先程と打って変わって、霞ヶ原先輩の提案が凄い良くなった。
もし可愛く『にぃにぃ』なんて呼んでくれたら、もう僕はお婿に行けなくなる。
「それなら、まだ『汚兄ちゃん』の方がマシです」
志穂が食い気味に答えたことにより、僕の心の涙がナイアガラの滝のように流れ落ちる。
「やっぱり、志穂は『お兄ちゃん』が1番落ち着くかな!」
僕は大きく息を吐き、普通のありがたみを噛み締めるのだった。




