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9話 ドラゴンは聖女のお知り合い

 お買い物を終えて王宮のお部屋に到着。私はお部屋で髪留めを作っているので、キリエさんもルルーさんもゆっくり過ごしてくださいとお伝えしました。お2人はソファーに腰かけてティータイムにするようです。


 私は手に入れた髪留めに、白いバラの石をどう付けるかをエリアスと相談。バラの花柄のように伸ばしていた部分を髪留めに穴を開けて通して、その花柄の部分は魔法で変形させて取れないようにすればいいとの結論となりました。出来上がった髪留めを私とエリアスで品定め。かなりいい出来と自画自賛です。私が残りの髪留めも全部作ったところで、エリアスからは1つは保管しておいてと頼まれます。私が理由を聞くとエリアスは今後はこれを聖女様からの感謝の品にしてしまおうとのことでした。あれ、魔法で複製しちゃうつもりでしょ!ラービさんのお店の売り上げが落ちても私のせいじゃないですよ。


 髪留めの制作を終えると、購入してきた調合の道具を1つ1つ取り出しては、エリアスと使い方の確認をして過ごしました。ルルーさんが皆さんお揃いですと声をかけにきてくれて、私はルルーさんと食堂へ。普段はメイド服の皆さんがきれいなドレスに身を包んで私に礼をして待っていてくれました。私は皆さんの前に立って、召喚されてきてから今日まで本当にお世話になりましたとお礼を伝えました。そして皆さんに顔を上げていただいたところで、少しお話しをさせてもらいました。



「明後日の朝に王宮を出発します。皆さんと再会できるのは何年後になるでしょうね。きっと皆さんは素敵な旦那様を見つけてご結婚されているでしょう。可愛いお子さんを授かって、お母さんになられている人もいるでしょうね。私は何年経とうと、右も左も分からない王国に召喚されて不安でたまらなかった私を、優しさで包み込んでくれながら無事に旅に送り出させてくれた皆さんのことは絶対に忘れません。私も皆さんに忘れてほしくないので、ささやかですが感謝の品をお渡ししたいと思います。ぜひ受け取ってください」



 私は1人目のメイドさんに小箱を手渡します。中を見られたメイドさんは嬉しいやら驚いたやらのご様子。でも、そのメイドさんにぜひ聖女様に着けて欲しいと頼まれました。もちろん私は喜んでと言って、しゃがんでもらって髪に髪留め着けさせてもらいました。その後の皆さんの髪にも私が着けてあげました。皆さんがお揃いなので、キリエさんとルルーさんにもプレゼントして髪に着けさせてもらいます。ルルーさんがアリス様もというので、私もルルーさんに髪留めを着けてもらいました。


 皆さんがお揃いの髪留めを着けて嬉しそうに微笑まれているのを見ていたら、私は皆さんとお別れするのがとても悲しくなってしまいます。しくしくと泣き出す私を、皆さんはいつものように優しい気持ちで慰めてくれました。


 私がしょぼくれてしまったので、代わりにキリエさんが乾杯の挨拶をしてくれました。私にもグラスが渡されて、お1人お1人と乾杯をしました。落ち込んでいても、シャンパンはおいしかったです。


 何せ女性だけの集まりです。食べて飲んでおしゃべりして。王宮の誰さんがかっこいいとか、剣士の誰さんが優しいとか、もう女子トークがさく裂です。昨日のパーティーも楽しかったけれど、今日は女性だけのパーティーだから気軽な気持ちで格別です。皆さんのお話しを聞いていると、皆さんはお貴族様のご令嬢ばかりでした。どうして貴族のご令嬢がメイドさんに?と聞いてみたけど、聖女様の身の回りのお世話を庶民にさせられるわけがないとのことでした。そんな高貴な女性たちが、私のわがままに嫌な顔もしないでお世話をしてくれていたと知って、私はまたまた涙腺が決壊です。ウルウル涙が止まらないのでした。




 楽しい時間はあっという間、そろそろお開きの時間になりました。私は王国のために……ううん、皆さんや皆さんのご家族のために頑張ってきますとスピーチしてパーティは終わりました。


 驚いたことに、パーティを終えたメイドの皆さんがメイド服を着てお部屋に戻ってきたのです。私はどうして?ってなっていると、聖女様が出発するその時まで、私たちが聖女様のお世話をしたいのですと言われてしまいました。そんなこと言われたら、泣くに決まっているではありませんか!絶対皆さんは私を泣かせるために戻ってこられたのです。確信犯です。


 私はめそめそしながらお風呂に入ることになります。皆さんはメイド服に着替えたけれど、髪留めはそのまま着けてくれていました。嬉しいな。


 私は嬉しい気分でベッドに横になり、天幕を降ろしてくれているメイドさんにおやすみなさいと言って目を閉じました。




 翌日は昼食会を兼ねた私たちのパーティーへの壮行会が開かれます。ただ、急に壮行会の前に王妃様がお会いしたいとのことでお部屋にお伺いすることになりました。キリエさんもルルーさんもきれいに着飾ってパーティーの準備万端で、王妃様のお部屋に向かいました。


 王妃様はガラス張りの眺めのいいお部屋にお茶の支度を整えて待っていてくれました。私は国王陛下にも王妃様にもお会いしたことがなかったので、キリエさんに教えてもらった王国式のお辞儀でご挨拶をします。驚いたことに王妃様は私の挨拶を受けると、私に謝罪を始めました。王妃様の謝罪の内容は。私が聖女として召喚されてきたにもかかわらず、私に対する王国の対応が冷たいことにでした。でも、王妃様はご自分が信用されていたキリエさんを私の護衛にしてくれたり、ルルーさんを私のお世話係りにしてくれたり、お部屋のメイドさんはお貴族のご令嬢に担当させたりと、かなりの厚遇だと思っていたのですけど……


 王妃様のお話しでは、前回の聖女様が亡くなられて200年ほど経った後、ここセビジール王国は隣国と戦争になったみたいです。セビジール王国は隣国よりも大きな国のようで戦争には楽観的だったようです。しかし、いざ戦ってみるとかなり苦戦を強いられ、それでも数に勝るセビジール王国は何とか勝利した形で講和条約を結びます。ただ、この講和条約はほぼ戦争は終わりにしましょう程度の条約で、賠償金も領地割譲もなかったそうです。その話しを始めると戦争を再開することになるからでした。両国は何も得ることもなく、ただ多大な戦費を使い、多大な犠牲者を出し、無駄な時間を費やしただけでした。それからのセビジール王国は強い王国を目指すことが第1優先となり、男性の意見が尊重され、女性の意見が後回しにされる世の中になっていったそうです。そんなこともあり聖女に頼って穢れを払うことが、強国を目指してきた王国にはふがいない結果に思っているのでしょう。


 王妃様は包み隠さずお話しくださった。そして王妃様からも旅の間に旅の後の身の振り方を考えておいてほしいとお願いされました。王妃様にもどこかの領地を拝領しその領地で平穏に暮らすことをお勧めされます。王妃様は本心から私のことを心配してくれているようです。ありがたいことです。


 王妃様と壮行会までご一緒させていただきました。このお部屋は王宮のお部屋が見渡せてとても心地いい部屋だったのです。私もいつかこんなお部屋のあるお家が欲しいな。もちろん無理でしょうけどね(笑)




 壮行会の時間となり、王妃様に連れられてパーティー会場へ。ただ、私たちが今日の主役なので、私たちは最後に入場のようです。もうハーデンさんたちも来られていて、皆さんと合流です。お王妃様に会釈でお別れして、王妃様は会場内に入場されていかれました。


 係りの人に入場してくださいと声をかけられて、ハーデンさんを先頭にぞろぞろとパーティー会場へ。国王陛下の御前でご挨拶をした後にくるりと後ろを向きます。大きな会場にたくさんの人がテーブルに座って私たちに注目。ただ、今日の私はとっても気楽。リーダーのハーデンさんが全部しゃべってくれるからです。ハーデンさんのご挨拶が終わると、大歓声が巻き起こりました。私たちはその歓声の中、用意されていた席に案内されてご挨拶は終了です。私の右隣にルルーさん、左隣にキリエさんが座っているから心配なことは何もありません。おいしい料理を楽しんでいればそれでいいのですもの。


 ハーデンさんたちのところには、大勢の人が激励に来られていました。きっと王国軍とか王国魔法士団とかの人よね。キリエさんのところにも何人か来られていましたから。私とルルーさんのところにはほとんど誰も来なかったです。まぁ、知っている人はいないですからね。私とルルーさんはおしゃべりしながらおいしい料理を順調にご馳走になっていました。




 ただし、平和な壮行会はここまで。王宮の庭にドラゴンが現れたの!もう皆がびっくり。ただ、護衛の兵の皆さんは国王陛下や王妃様を守ろうとする様子もないのです。襲われないことが分かっているようです。ルルーさんに聞いてみると、王国とお付き合いをしている月のドラゴンと教えてくれました。体には白い半透明なうろこに覆われた、巨大なドラゴンはパーティーの会場に方向を変えてこちらに数歩歩み寄ってきました。そして、大きな声を上げて吠えました。


 何と私にはこのドラゴンの吠えた声が何を言っているのか理解できたの。



『聖女はいるか?』



 だそうです。


 私も負けずにドラゴン後で話しかけた。他の人にはもちろん吠えているようにしか見えないでしょうけど。



『私が聖女のアリスです』



 ただ、私はドラゴン語で話した後、激しくむせてしまいます。こんなだみ声の遠吠えは、15歳の女の子には荷が重いです。だがドラゴンは私の姿を見ようとパーティー会場のガラス窓から私をのぞき込んできたのです。周りの皆さんにも、私がドラゴンと話しているのは伝わっているようです。私は咳が落ち着いたところで窓越しにドラゴンの前に立ちました。今度はドラゴンは吠えてはいないのに、私の頭の中にはドラゴンの声が聞こえてきます。



『聖女、無理に声で伝えなくともよい。お主が持つ杖によって儂とは話しができる』



 私が腰から杖を抜いて、いつもの大きさに戻して杖を握ります。ドラゴンは私の持っている杖をじっくり見ていました。



『確かに聖女のようだな。儂は月龍と呼ばれているドラゴン種の1柱だ。大昔の聖女に助けられた縁で、儂も聖女に協力している。以前の聖女にも頼まれていたため、王国とも多少は付き合いをしている』


『わざわざ会いに来てくれたのですね。ありがとうございます。明朝から穢れを払う旅に出ます』


『何か困ったことがあれば声をかけろ。助けに行ってやる。今回もエリアスがいるようだな、聖女をしっかり守ってやれ』


『あれ、月龍様にもエリアスが見えるのですか?』


『儂には見えん。だが気配は感じるし、声は聞こえる。付き合いも長い』



 私と月龍様が話しをしていると、エリアスが私の肩を叩く。



『アリス、月龍に再生の魔法をかけあげて。それも聖女のお役目の1つ。うーん、お役目と言うと大仰ね。知り合いを治療してあげて』



 私は近くにあった扉を開けて庭に出て、月龍様のところへ歩いていきます。そして杖に魔力を込めて月龍様に再生の魔法を発動。



『聖女よ助かった。今回は聖女の召喚に時間が開いていたから、かなりうろこが痛んでいた』


『私でお役に立てることがあれば、なんでも言ってください』


『ああ、そうさせてもらう。では、聖女よまた会おう』



 月龍様はそう言い残して大きな翼を大きく開いてバサバサと羽ばたき飛んでいかれた。この広い王宮のお庭で、翼を広げると手狭に思えるって、月龍様はどれだけ大きいのよ!




 私がパーティー会場に戻ると、皆さんがあっけにとられてパーティーどころではない雰囲気。何となーくお開きな雰囲気になって、国王陛下が帰って行かれました。王妃様は私の方を見てにっこり笑顔で会釈をしてくださった。私は申し訳ない気持ちでいっぱいで、王妃様に深々と謝罪のお辞儀です。


 参加者の皆さんもどうしたものかという雰囲気になっていたけど、宰相様がせっかくだから食事だけでも食べていってくれと言われて、半数くらいの人は会場に残られました。私たちも主役なのでこの場に残ることになりました。申し訳なさそうにしている私に、ハーデンさんが大笑いしながらフォローしてくれます。



「アリス様の責任ではないでしょ。会場の多くの方がドラゴンをまじかで見たことがない人たちです。その迫力に負けて、早く帰りたくなっただけでしょう」



 うーん、ハーデンさんのフォローはいまいちだったけど、素直に受け取ることにします。ルルーさんもキリエさんも慰めてくれましたし。ただ、ハーデンさんはパーティーの皆さんに向かっても発言されました。



「明日からしばらくはこんなにうまい飯にはありつけなくなる。がっつり食べておいてくれ」


「了解!」



 私を除く皆さんが了解していました。そんなに過酷な旅が始まるのですね……私も心置きなく食べさせてもらいましょう!


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