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6話 初めての王都外へ

 私の要望であるルルーさんの旅の同行と、旅に出る前に演習としてのパーティーによる中規模程度の穢れの殲滅の旅。キリエさんから王国側に要望が出され、すぐに了承されました。ただ、旅に出るとなるとパーティーメンバーの準備も必要となるため、準備期間が必要とも伝えられました。もちろんそのことは想定内。私としては石馬や森の探索などに早く慣れたいという思いもあり、王都近くの森へ探索に出たいとキリエさんに相談してみました。キリエさんはルルーさんと3人で王都の近場の森に行くのは問題ないとのことです。ただ、王都近くは冒険者も王国軍も人が潤沢にそろっているので、穢れが存在するかは微妙とのことです。まぁ、国王陛下のお膝元で穢れがバンバン出てきたら、王国のピンチですものね。


 私はキリエさんとルルーさんについても旅の支度は必要ないのか聞いてみると、装備や武器、物資については王国が準備をしてくれるとのことです。そもそも今回の旅は王国軍でも手を焼く強力な穢れや邪獣を討伐する旅。個人が所有していたり、普通の武器屋や装備屋で手に入るようなものでは、とても太刀打ちできないみたい。王国が所有する国宝級の装備が特別に貸し与えられるとのことで、皆さんにはとても栄誉なことのようです。ルルーさんにも白魔法士の装備が貸し与えられるそうで、破格の待遇みたいです。


 王都近辺を出歩くことに問題がないようなので、私は明日から早速お願いしますとお2人にお伝えします。メイドさんたちが朝の早い時間に出発するための準備を始めてくれたり、昼食の手配をしてくれたりと心強い限りです。


 夕食をいただきお風呂にはいると、私はもうベッドに向かうことにしました。キリエさんとルルーさんにも明朝に備えてほしいものね。ベッドに寝転んでも早い時間なので眠気はまったくありません。こんなときはエリアスにおしゃべりに付き合ってもらいましょう!



『エリアス、今までの聖女様たちは、旅に出ている間の食料調達はどうしていたの?』


『討伐目的のパーティーの旅と言っても、毎日戦ってばかりいるのではないの。そもそも街も村もないようなところがほとんどなので、食料の確保のために動物を狩ったり果物を探したりもとても重要な行為。だから、食料が確保できそうな場所に差し掛かれば、旅は中断して食料を集めるの』


『聖女様たちが残してくれた箱の中に、食料も潤沢にあったわよね。あれを提供したりしなくていいの?箱の中の食料や料理は腐ったりしないのよね?提供すれば喜ばれるのでは?』


『もちろん喜ばれるわよ。でも、それは最後の手段として残していたの。考えてもみて、聖女様は万能で困った人をどんどん助けてしまったとするでしょ。それは王国にとって国王陛下より聖女様の方が頼りになるなんて思う人が増えることになる。そうなると、聖女様に国王になってもらいましょうなんて声が出てきてしまうから、王国としても聖女様に頼りきりになることはしないの。聖女様を国賓にしているのはそのため。旅が終わればお客様にはお帰りいただく。ただ、召喚されて帰る場所がない聖女様はどうしたものかって結果になるの。だから領地を拝領することが帰る場所を得ることにもなる。ただ、学者や研究者として王都に住んだり、結婚して旦那様のところで暮らしたり、そもそも居場所を持たず旅に出たいなんて希望は叶えてくれる。穢れを払ってくれた恩に、1度だけ希望を叶えてくれるって感じなの』


『なるほど。それで多くの聖女様が旅の間に今後のことをしっかり考えなさいって書き残してくれているのね』


『アリスもしっかり考えておいてね。アドバイスはしてあげられるけど、最終的に決めるのはアリスだから』


『うん、ありがとうエリアス。さて、明日に備えてそろそろ眠るね、おやすみエリアス』




 翌朝は早めに目が覚めます。近くに人の気配があったので、おはようございますと挨拶してみました。近くにいたのはメイドさんだったようで、もう起きますかと聞かれて、起きますと返事をしました。メイドさんは天幕を上げてくれて、私が起きるための支度を始めてくれます。


 今朝は忙しいのだけど、お風呂には入らせてもらいました。旅に出ればお風呂も思うようには入れないかもしれないから。お風呂の後の着替えは、歴代の聖女様が残してくれた旅衣装。ゆったりとしてワンピースのような服にローブを着る。この旅装はとにかく動きやすくてとても気にっています。もちろんただの服ではないようで、いろいろな効果が付与される聖女様専用の旅装です。


 支度が終わり食卓に向かうと、キリエさんとルルーさんもすでに旅装姿で食卓に座っていました。私が朝の挨拶をして席に着くと、お2人も挨拶を返してくれます。私が席に座るとメイドさんたちが給仕を始めてくれました。


 3人で食事をしていると、キリエさんが今日の行動予定を教えてくれました。今日は初めての王都外なので近くの森を散策する程度で、夕方には王都に戻るとのことです。キリエさんとルルーさんは馬での旅も学生時代に教育を受けているそうなので、初めての旅は私だけみたい。旅慣れたお2人にお任せしましょう。明日も日帰りの森の散策をして、明後日からパーティー全員で旅に出るとのことです。少なくとも片道3日はかかり、穢れを探して討伐をする日数がプラスされる旅のようです。旅に慣れるにはちょうどいい感じですね。


 今回は必要な物資はすべて運ぶらしいのですけど、私は着の身着のままでいいと言われました。ただ、本当の旅に出るとなると、私も荷物は持ち運ぶことになるみたい。お試し旅の間に王宮がすべて準備をしてくれるので、準備については心配はないみたいだけどね。




 私たち3人で王宮の庭に出ます。辺りを見回すと立派なお城も見えれば、私が召喚されたコロシアムのような建物も見えます。私たちのいた部屋は2階建ての部屋が庭を取り巻くように丸く建てられている建物で、どうもこの丸い建物の向かい側は公務で使われているみたいです。


 私たちが庭に姿を現すと、何人かの兵士の人たちが2頭の馬の手綱を引いて、私たちのところに歩み寄ってきました。キリエさんが兵士の人たちと挨拶を交わした後、馬の手綱と荷物を受け取っていました。兵士の人たちは私とルルーさんには挨拶もすることなく、回れ右して向かいの建物の方へ歩いて戻っていきました。



「私とルルーさんは無視されてしまいましたね」


「はい、聖女様ですから気軽に話しかけるのは恐れ多いことなのですよ。ただ、その辺の身分的なものが徹底されているのは、王都や各地の領主の住む街だけだと思います。後は庶民が普通に生活する村や町ばかりですから」



 確かに王宮の中でも私に接する人はごくわずかの人。ただ、私と接してくれる人はとても親切だし、心穏やかな優しい人たちばかり。しっかりした人たちを私のそばに仕えさせてくれているのは分かるのです。でも、どうも王国は私と一線は引いておきたい感じなのよね。この辺のことが過去の聖女様たちが書き残してくれていたお手紙には書かれていなかったような……この600年ほどで変わったってことかしら?


 私が何でだろうと考えている間に、キリエさんとルルーさんはどんどん自分たちの準備を整えていました。いよいよ馬にまたがり出発準備完了となったところで、私に声をかけてくれたます。私も慌ててベルトの小箱から石馬を取り出し魔法でいつもの大きさに戻します。私も石馬の座席に座って取っ手を握ります。先頭のキリエさんの馬が歩きだし、私はその後ろ。ルルーさんが私の後ろをついてきてくれます。


 王宮の建物の通路を抜けて城壁の中に用意されている大きな門へ向かいます。この門は王城や王宮の関係者しか使えない門なので、人の往来はほとんどありません。私たちが門を通り過ぎようとすると、守衛の兵士の皆さんに敬礼で見送られました。いよいよ初めての王都の外です!




 王都の外は最初はとても快適だったのよ。でも、しばらく進み続けると私はすぐにぐったりしてきました。理由は簡単。石畳の道が整備されているのは王都を出てすぐのところまで。後はごつごつとわだちのある土の道。石馬に不慣れなためか、左右に揺らされたり正面の凸凹に上下に揺らされたりと、気分はじゃじゃ馬に乗っている感じです。これはすぐに私は閉口。思わずエリアスに相談してみました。



『エリアス、助けて!石馬が揺れまくって乗り心地がとても悪いの』


『あはは、確かに苦戦しているようね。でも、答えは単純。アリスがそんなに地面すれすれに石馬を浮かせているからよ。もう少し石馬を高い位置に浮かせて進めば、石馬は揺れない快適な乗り心地よ』



 エリアスの言っていることはもっともね。練兵場では地面が平だったから石馬はとても快適だったもの。凸凹に影響されない高さで飛ばしていれば問題がないってことね。私は面倒なので膝くらいの高さまで飛び箱を高く浮かせました。するとルルーさんが後ろから声をかけてくれます。



「アリス様、高く飛ばせたとたん、揺れが収まりましたね」


「はい、何事も経験ですね」



 石馬が安定すると、私の気持ちにも余裕が出てきて、ようやく景色を眺める余裕も出てきました。王都の門を出てからもしばらくは人の住む民家が見えていました。そこを過ぎると次は広大な麦畑が続いていました。麦畑を過ぎると大きな川が流れています。この川にはしっかりした石の橋がかけられていたので、馬から降りることなく進み続けました。ただ、川を渡り切れば、対岸の土地はもう一面の草原。草原の先に森が見えてきたけど、距離はまだまだ先のようです。さらに森のずっと先には大きな山脈が見えます。あの山を越えて行くとなるとかなり大変そう。



「キリエさん、旅ではあの山を越えて行くのですか?」


「さすがにあの山を登ることはありません。山のふもとの道を山を縫うように歩いていきます。道が整備されているとは言えませんが、人や荷車が通るので踏み固められて道になっている感じです」


「今日明日はあそこまでは行かないのですよね?」


「はい、今回は森の中までです。森の中を進む練習だと考えてください」



 森の中を進む練習?森の中を歩くのは練習が必要なの?うーん、今のところは想像できませんね。


 道を進んでいるのが私たちだけのようなので、3人は横に並んでのんびりおしゃべりをしながら進みました。3人で並んで進むのが難しそうになると、キリエさんが少し先を進んでくれて、私とルルーさんは常に2人で並んで歩けるように配慮もしてくれました。


 そうこうしている間に森の手前まで無事に到着。森の手前には少々開けた土地になっていて、木製のベンチなんかも作られていました。森に入る前の休憩場所として整備されているのかもしれないです。それにちょうど王都からくるとお昼ご飯を食べるにはいい時間。私たちもここで昼食をいただいてから森へ入ることにしました。


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