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4話 箱の中身は何でしょう?

 私たちが宝物庫から出てくると、騎士様たちは来たときと同様に警戒態勢のまま私たちの居場所を開けてくれる。キリエさんが顔見知りの騎士様に声をかけてくれて、ルルーさんが持ってくれていた箱を代わりに持ってもらった。ルルーさんがこの箱は先代の聖女様がアリス様に残された貴重な箱ですと伝えてくれた。箱を預かってくれた騎士様は特に変わった様子はなかったけど、周りにいた騎士様は箱についても守る態勢をとってくれたの。


 管理者様が宝物庫のすべての鍵を閉めて、ようやく場の雰囲気が少し和らぐ。それでも多くの騎士様はこの場からすべての人がいなくなるまで警戒を続けるようで、私の箱の護衛についてくれた5人の騎士様を除いて、宝物庫の警戒に戻られました。私たちと管理者様はここでお別れることになり、私はお礼を伝えて部屋に向かいました。王宮の廊下を歩いていると、聖女様がお連れの人を伴い、また護衛騎士に恭しく箱を持たせて歩いている姿を見せすることになってしまいました。偉そうに見えるので、早くお部屋に戻りたいです(涙)


 お部屋の前まで戻ってくると、ルルーさんが騎士様から箱を預かってくれました。どうも聖女様のお部屋には許可がないと入ってはいけないみたいです。私は騎士様たちにお礼を言ってようやくお部屋に戻ってこれました。




 ルルーさんが箱をベッドの横の机の上に置いてくれました。この一画は部屋の中を仕切るカーテンを引いてしまうと、私が声をかけない限りは誰も入ってこないようなので、聖女の秘密を守ろうと配慮してくれたのかな?私は念のためエリアスに見られて困るものはありそうか確認してみると、エリアスは見られて困るようなものは見られても理解できないようになっているから大丈夫と教えてくれた。確かに先代の聖女様のお手紙も皆さんが読めない文字で書かれていたものね。念のため皆さんにもお伝えしておきましょう。



「お部屋の皆さん、先代の聖女様が残してくださったものは、皆さんに見られて困るようなものはありません。それほど神経質になられなくても大丈夫ですよ」



 私がニコッと笑顔でそう話すと、お部屋の皆さんも少々ホッとした表情で、かしこまりましたと返事をしてくれました。これで一安心ね。


 私はさっそく机に向かい、杖を机の横に立てかけると、すぐに箱の扉を開いてみる。もちろん白い靄によって中身は見えないです。私は恐る恐るゆっくり手を霧の中に入れてみました。すると驚いたことに、手が霧に触れた瞬間、すっと霧が晴れてしまったの!私はおおって驚きの声をあげてしまいました。私のその声を聞きつけて、キリエさんが私のそばに駆け寄ってきました。



「アリス様、何事かありましたか?」



 するとエリアスが私の耳元でささやいてくれたの。



『キリエには霧が張ったままに見えるから、ごまかしておいた方がいいかもしれませんよ』


『分かったわ、エリアス。適当に言い訳してみる』



 私はエリアスのアドバイスに従い、苦しい言い訳をしました。



「ごめんなさい、キリエさん。霧に手が触れたら思ったより冷たく感じて、驚きの声を出してしまったの」



 キリエさんが自分のテーブルに戻られてから、私は改めて箱の中を覗き見ます。そう、この箱は中を覗き見るって感じなの。まるで小さな窓から広い外を眺めているように、箱の中には膨大な空間が存在していて、その中に膨大な量の物が置かれているのですもの。ただ、不思議なことに物がどこに置かれているかは探さずとも何となく分かってしまいます。例えば宝物庫で私が入れた先代聖女様の革のお手紙は右手の手前の方に置かれているのがはっきり分かるのです。また、他の聖女様たちが書かれた書き物も読みたいと思ったら、メモやら日記やらが置かれている場所が分かってしまうの。ただ、手を箱から抜いてしまうと、この感覚は消えてしまい、私にとっても元の霧に包まれた箱に戻ってしまいます。この箱は魔法の道具のようですね。



『エリアス、この箱は聖属性の魔法士が使える魔道具の箱ってことなの?』


『そうですよ、アリスはすでに感じたと思うのですが、箱の中には膨大な量の物が置かれているでしょ。この箱の中は聖魔法によって別の次元の空間になっているの。だから物はいくらでも入れることができる。それに聖魔法によって大きな物を小さくして、小さくなった物をこの箱に入れてあったりもするの。例えば歴代の聖女たちが使ってきて部屋がこの箱の中に入っている。箱の中の部屋を取り出して、実際の大きさに復元したら、きっとこのお部屋よりも広い部屋になるわよ。でも、あまり大きな家をどんと出すのは現実的じゃないから、聖女たちは聖魔法で自分を小さくして部屋を使っていたの』


『自分を小さく!自分自身に聖魔法をかけて、自分を小さくするってことよね、ちょっと信じられないな』


『そうよね、どの聖女も最初は半信半疑。でも、魔法の万能さを知ると、いかに魔法を便利に使うかに興味が移ってしまう。今までの聖女が編み出した魔法や魔道具、便利な知識は山のようにこの箱の中に残されているから、まずは聖女の書き残したものを読むことをお勧めするわ』


『ありがとう、エリアス。では、先代の聖女様が書き残してくれたものから順に読み始めてみるわね』



 私が再び箱に手を入れて、先代の聖女様が書かれたものが読みたいの~なんて思い浮かべると、この辺に置かれているのねってすぐに分かってしまう。便利すぎる検索機能よね。私はいくつかの候補の中で紙の束を入れてあると思われる布の袋を取り出すことにしました。箱の中から取り出すまでは重さなんてほとんど感じなかったの。だって手の平に乗るほど小さな袋だったのですもの。でも、元の大きさに戻ってなんて願うと、ずっしり重たい紙の束が詰まった布袋に戻ってしまう。これをすべて読むには何日かかるのやら……(涙)でも、先代の聖女様が、わざわざ私のために書き残してくれたもの。すべてしっかり読ませていただきます!




 私は席に座って紙の束を上から順に読み始めます。紙の1枚目は先代の聖女様から私へのメッセージのような内容でした。



『新しい聖女さん。これを読んでいるなら、召喚されて間もなくの頃でしょうね。私も召喚されてきて、この箱に残されていた過去の聖女様が書き残してくれたものを読むまでは、心が穏やかになれなかったもの。でもこれだけは言ってあげられる。聖女の力は人を救える尊い力。その力によって救われた人たちは笑顔を取り戻して、平穏な生活に戻っていけるの。その行為に感謝してくれる人もいれば、聖女なんだから当たり前でしょって人もいる。でも、そんなことは気にならなくなるの。だって人を助けるために聖女はこの世界に呼ばれてきたのですもの。だからあなたもきっと自分がこの世界で生きていく目的を見つけられると思う。ただ、聖女には1つだけ大きな問題があるの。聖女の役目を終えた後も、聖女はこの世界で生きていかなければいけないこと。私は幸いにして旅の中で恋をして、その人と家族になれたから、余生は普通の家族として幸せに暮らせた。過去には学者として重用された聖女様もいたみたい。ただ、私や学者になった聖女様は王国内で幸せに暮らせた少ない事例。多くの聖女様は役目を終えると1人で旅を続けたり、自分の領地でひっそりと暮らしたり、孤独になってしまう人が多いみたい。なので、これから始まる旅の間に、旅を終えた後の自分の行く末はしっかり考えておいてください。役目を終えたご褒美には、領地を拝領することをお勧めします。これが私が過去の聖女様のその後を知ったことと、自分の経験から得た新しい聖女様へのアドバイス。でも、今の聖女様は旅の後の話より、これから始まる旅の話に興味があるわよね。この箱の中に聖女が使い続けているベルトがあるの。そのベルトには小箱がいくつか付いていて、その小箱の中に旅で必要な物はすべて入っているの。この小箱の中身を1つ1つエリアスと確認すれば、旅の準備はもう十分。このベルトには杖も差せれば、万が一のための魔剣も差してある。聖女が旅で着る法衣とローブ、ブーツも箱に入っているから、それを着てください。自分で用意するのは下着くらいかしらね。下着も箱の中には入っているけど、下着は好みもあるから必要があれば自分でってことになっているのよね。最後にこの紙が入っていた布袋の中の紙だけを読んでくれれば、すべての聖女様の書き残しを網羅してあるの。聖女様が登場してから3000年経っていたから、さすがに魔道具の紙とインクと言えども古くなってしまっていたの。だから私がすべてを書き写して、1つの布袋にまとめておくことにした。新しい聖女さんも自分の人生を振り返って、次の聖女さんに書き残したいものがあれば、この布袋へ入れてあげてください。では、新しい聖女さんに幸多きことを』



 先代の聖女様は聖女の名に相応しい、素敵な女性だったのね。聖女の皆さんが残していってくれた知識も物もしっかり受け継いで、私も役目を果たします!そして、次代の聖女様にもしっかり引き継いでいきます。私はそう決心するのでした。




 先代聖女様の書かれていたように、ベルト、法衣、ローブ、ブーツと順に取り出してみます。ベルトは1つだけだったけど、その他の物は新品から使い古しまで100を超える数が残されているみたい。しばらくは箱に入っていた物を着させてもらいましょう。


 私は自分で着替えてしまおうかと思ったのだけど、いつもメイドさんに手伝ってもらっていたので、念のためルルーさんに声をかけました。



「ルルーさん、箱の中に聖女が着る服がしまわれていたの。これからは王宮にいる間も旅の間もこの服を着ることにしたいのです。どうすればいいですか?」


「まずは着てみましょうか。サイズのお直しも必要かもしれませんし。メイドの皆さんお着替えをお願いします」



 着替えを持ったルルーさんが私を着替えさせるために広い場所まで連れてきてくれました。メイドさんたちは仕切りのカーテンを引いて目隠しにしてくれた後は、ササっと今着ている服を脱がせてくれて、新しい服を着せてくれました。メイドさんたちが驚いたのは、サイズが私にピッタリだったことです。聖女様って皆体形が一緒?と思ったら、メイドさんの話では服が私に合わせてサイズ調整をしていたみたい。服も魔道具なのね。ベルトも腰にまけばスルスルと私の体形に合わせてサイズが調整されます。ブーツもぶかぶかだったのに、履くとシュッと縮こまって私の足の形に合ってくれました。


 着替えを手伝ってくれたメイドさんもルルーさんも、今までに見たことも触ったこともない生地の服だと、物珍しそうに法衣やローブを触ったりじっくり眺めたりしていました。皆さんプロ意識高いですね、気が済むまでじっくり観察してください(笑)


 着替えが終わる頃にはちょうど昼食の時間。そのままテーブルまで案内されてキリエさんとルルーさんと3人で食事をいただきます。私はお2人に午後は魔道具の確認をしたいので、お庭か広い場所に案内してほしいとお願いしました。キリエさんが王宮のお庭の隣に兵の訓練場があるので、そちらがよいでしょうと教えてくれました。兵が訓練で使う場所なので、多少のやらかしは大目にみてくれるので安心らしいです。確かにきれいなお庭に大きな穴なんて開けたら大問題ですよね(汗)


 エリアスにも午後から魔道具の確認をしたいと伝えて了解をもらいました。どんな魔道具がそろっているのか楽しみですね。


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